千葉県内で「キョン」の被害が深刻化している。キョンは中国南東部・台湾に自然分布しているシカ科の哺乳類。そのキョンがどうして千葉県で “爆誕” したのだろうか。 千葉県の「第2次千葉県キョン防除実施計画」によると、勝浦市にあった私立観光施設(2001年に閉園した行川アイランド)で飼育されていたキョンが野生化したのだという。 許可を得た猟師が捕獲しているが、2012年には2万7900頭だったが、10年後の2022年にはその3倍となる7万1500頭が県内に生息していると推定されている。
「キョンは繁殖能力が高く、初産年齢が1歳で交尾・出産は通年でおこなわれます。さらに、出産後すぐ交尾が可能であることから、個体数が増加すると言われています」(勝浦市農林水産課) 雑食性で、農作物はもちろん、花壇の花でもなんでも食い荒らすキョン。昨年度の農業被害は421万円にのぼるという報道もある。 問題は、昨今、生息エリアを広げている点だ。「ほとんどは山林が多い県南地域に住み着いていますが、最近は群れを離れたオスなどが県北で目撃される事例もあります」と千葉県自然保護課。そうなると、やがては埼玉県や東京都にも……と心配してしまう。 そんなキョン被害に頭を抱える千葉県だが、その一方、本州で唯一「クマがいない県」でもある。それはいったいなぜなのか、千葉県立中央博物館の研究員が解説してくれた。「クマの犬歯を使った縄文期の装飾品が県内で出土した例はありますが、クマの全身の骨は確認されていません。装飾品は他の地域から入ってくることも考えられますので、それだけでクマが生息していたという証拠にはなりません。 江戸時代の文字情報でもクマがいたというものがありませんし、今のところ県内での目撃情報もありませんから、『千葉にはクマがいない』とされています」 隣接する茨城県や栃木県には生息しており、東京都でも目撃情報が増えているのに、なぜ千葉県にクマはいないのか。「千葉県は隣接県との境に広大な平野があり、多くの人が暮らしています。そこを通過することは人に見つかる危険があります。そのため、クマは千葉県に入ってこられないと思われます」 キョンもクマも困った存在だが、人間社会と野生動物との折り合いを見つけるヒントが千葉県にあるかもしれない。
千葉県内で「キョン」の被害が深刻化している。キョンは中国南東部・台湾に自然分布しているシカ科の哺乳類。そのキョンがどうして千葉県で “爆誕” したのだろうか。
千葉県の「第2次千葉県キョン防除実施計画」によると、勝浦市にあった私立観光施設(2001年に閉園した行川アイランド)で飼育されていたキョンが野生化したのだという。
許可を得た猟師が捕獲しているが、2012年には2万7900頭だったが、10年後の2022年にはその3倍となる7万1500頭が県内に生息していると推定されている。
「キョンは繁殖能力が高く、初産年齢が1歳で交尾・出産は通年でおこなわれます。さらに、出産後すぐ交尾が可能であることから、個体数が増加すると言われています」(勝浦市農林水産課)
雑食性で、農作物はもちろん、花壇の花でもなんでも食い荒らすキョン。昨年度の農業被害は421万円にのぼるという報道もある。
問題は、昨今、生息エリアを広げている点だ。
「ほとんどは山林が多い県南地域に住み着いていますが、最近は群れを離れたオスなどが県北で目撃される事例もあります」と千葉県自然保護課。そうなると、やがては埼玉県や東京都にも……と心配してしまう。
そんなキョン被害に頭を抱える千葉県だが、その一方、本州で唯一「クマがいない県」でもある。それはいったいなぜなのか、千葉県立中央博物館の研究員が解説してくれた。
「クマの犬歯を使った縄文期の装飾品が県内で出土した例はありますが、クマの全身の骨は確認されていません。装飾品は他の地域から入ってくることも考えられますので、それだけでクマが生息していたという証拠にはなりません。
江戸時代の文字情報でもクマがいたというものがありませんし、今のところ県内での目撃情報もありませんから、『千葉にはクマがいない』とされています」
隣接する茨城県や栃木県には生息しており、東京都でも目撃情報が増えているのに、なぜ千葉県にクマはいないのか。
「千葉県は隣接県との境に広大な平野があり、多くの人が暮らしています。そこを通過することは人に見つかる危険があります。そのため、クマは千葉県に入ってこられないと思われます」
キョンもクマも困った存在だが、人間社会と野生動物との折り合いを見つけるヒントが千葉県にあるかもしれない。