「寄付を私的に使うなんてありえない」「善意を踏みにじった許しがたい行為だ」-。
日本テレビ系のチャリティー番組「24時間テレビ」に寄せられた募金を着服し私的に流用したとして、元経営戦略局長の男性(53)を懲戒解雇=27日付=にした日本海テレビ(鳥取市)。発表から一夜明けた29日、同社には視聴者からの抗議が相次いで寄せられ、幹部社員が対応に追われた。
8年間で264万円
「社会福祉のために使われると思っての募金。大学生のころ、番組に感動して小遣いをためて寄付した。純粋な気持ちでお金を寄せる若い人は今も多い。その気持ちを踏みにじる行為で、断じて許せない」
24時間テレビのキャンペーン中には募金会場となる同市の大型ショッピングモールを訪れた、同市の公務員の女性(60)は、こう怒りをあらわにした。
日本海テレビの発表によると、元局長は平成26年から令和2年までと今年の計8年間、募金終了後、同社に保管されていた寄付金を1年に約18万~50万円ずつ持ち出し、自分の銀行口座に入れていた。着服総額は264万6020円になるという。このほか、同社の売上金も計8回、853万6555円を着服。不正の総額は計1118万2575円にのぼっている。
「後輩連れて飲み歩く」
元局長は平成6年に日本海テレビに入社。主に経理畑を歩み、経理部次長、同部長を経て、昨年には総務局長兼経営計画部長に出世。今年4月の部局の改称によって経営戦略局長に就任した。
税務調査による発覚を恐れ、11月初めになって元局長自ら申告し、事態が発覚した。
同社の調べに対し、元局長は「最初の不正の26年当時、親族のために金を用立てる必要があったが、そのころ、会社に着服しても発覚しにくい入金があり、着服を思いついた」と動機を話したという。
着服した金の使い道について同社は「後輩らを連れてよく飲み歩き、スロットも好きだったようで、こうしたことに使ったとみている」とし、鳥取県警への告発も検討しているとしている。
会長辞任、社長は報酬返上
日本海テレビは28日午後、鳥取市内で緊急の記者会見を開いて元局長の不正を明らかにした。会見には田口晃也会長と西嶌一泰(にしじまかずひろ)社長の2人が「浄財を寄付してくださったみなさま、ボランティアで活動にご協力いただいたみなさま、番組にかかわるみなさま、ご関係のみなさまに深くおわびを申し上げます」と陳謝。10年間にわたって不正を見落としてきた経営トップの責任は重大として、田口会長の年内の辞任と西嶌社長の3カ月間の報酬返上を発表した。
24時間テレビは46年の歴史を有する日本テレビ系列の看板チャリティー番組。同チャリティー委員会のホームページによると、今年(6月1日~9月30日)は約8億2100万円が寄せられ、これまでの寄付金総額は約433億円にのぼっている。
歴史があり知名度が高い番組だけに一夜明けた29日には、日本海テレビに視聴者からの苦情の電話やメールなどが相次ぎ、幹部社員が5人態勢で対応にあたった。同社視聴者センターによると、午後4時現在で電話約150件、メールなど約100件にのぼり、「24時間テレビの趣旨を踏みにじった行為で残念」「お金の管理がずさんすぎる」「なぜこうなったのか」といった内容のものが含まれていた。
元局長はこれまでに448万4200円を同社に返還し、残金も弁済すると話しているという。同社は元局長が着服した寄付金全額について「責任をもって24時間テレビチャリティー委員会にお届けいたします」とコメントした。