例年、春から夏にかけて増え、寒くなるとその数を減らしていく「トー横キッズ」たちだが、今年は暖冬傾向でまだまだ彼らのオンシーズンは続きそうだ。
「彼女はトー横に通い始めてから変わってしまいました。何か犯罪に巻き込まれないか心配で眠れません……」
そう話すのは都内近郊に住むゴロウ(仮名・40)。『ツイキャス』のライブ配信を通して知り合い、連絡を取り合ううちに交際に発展したマイ(仮名)は現在18歳だという。マイの両親と3歳しか歳の変わらないゴロウは、トー横キッズとなった彼女に、恋心と親心が入り交じった複雑な心境を抱いているという。
「半年ほど前、同じく『ツイキャス』で知り合ったリンカ(仮名・14)という女の子に誘われて歌舞伎町に入り浸るように。マイは、比較的物静かで積極的な子ではないのですが、交際当初から実家に居たがらなかったり、OD(オーバードーズ)したり、どこか居心地の良いたまり場を求めていました。僕がその居場所になれたらと思っていたのですが……」
ゴロウ曰(いわ)く、『ツイキャス』で配信をしている若者の中には「地元にトー横がないから、ここ(ツイキャス)にいるしかない」と漏らす者もいたという。リンカには同級生の彼氏がいて、彼は「トー横に行くのをやめてほしい」と説得しようとしたが、煙たがられるだけだったそう。その話を聞いたゴロウは、マイがトー横に行くことを強く引き留められなかった。
「友達とか、自分が好きな場所を否定されたら反発しちゃうじゃないですか。僕自身、若い頃はヤンチャしていたので、仲間同士のたまり場が楽しい気持ちはわかる。マイと接する時は、その時の気持ちを忘れないようにしています」
ゴロウはマイを連れ戻そうと歌舞伎町に行くことも考えたという。しかし、彼がキッズたちのテリトリーに土足で踏み込んで保護者のように振る舞えば、マイは心を閉ざし、トー横以外の逃げ場を失うのではと危惧し、踏みとどまった。
「彼女がいるトー横がどんなところなのか、ネットで調べれば調べるほど心配です。9月末になってマイから『別れたい』って言われました。最初は年上の女性を姉のように慕い、彼女の家で寝泊まりしていたようですが、トー横で出会った20歳くらいの男の子と仲良くなって、そのまま交際を始めたみたいです」
ゴロウは自宅に、マイの服や日用品を残してあり、実家に帰らないマイの安否をマイの親に伝えることもあるという。
「お金に困ったら連絡が来ます。断ったらマイが援交や売春に走ってしまうんじゃないかと心配で、定期的に会っていくらか渡しています」
トー横ではSNS上でハッシュタグをつけて投稿する「自撮り界隈」が交流のベースになっている。トー横へ時折遊びに行くリョウ(仮名・18)が言うには、SNSで知り合った友人同士がリアルで交流したり、路上で知り合った友人とアカウントを交換することでネットワークが広がっていくという。
「キッズの誰かとSNSでつながってトー横に誘われたり、自分から会いたくなって来る子が多いです。来る者拒まずでオープンに思われがちだけど、ネットでのつながりが強いから大人が入り込みにくい。キッズの親玉を逮捕しても、一斉検挙しても、完全に解体するのは難しいと思います」
学校や家庭で居場所を失ったキッズたちはトー横に、友人や恋人などすべての人間関係を得られる桃源郷を夢見ている。
『FRIDAY』2023年11月3日号より