中古車業界大手「ガリバー」を展開する株式会社IDOM(イドム)は、来年創業30年を迎える。自動車流通業界の変革に「挑む」という思いを込めて、2016年にガリバーインターナショナルからIDOMに社名変更された。東証プライムの上場企業であり、買取・販売を中心に全国約460店舗を展開。創業からの累計販売台数は約120万台を誇る。
そのIDOMは、ビッグモーターの騒動を受け、今年8月25日、〈整備・板金のトレーサビリティ確保の取組〉と題したリリースを出した。このリリースのなかでIDOMは、社内の自主調査を実施したことも発表しているが、調査結果の内容は次のように記されている。
株式会社IDOMのHPより
〈独自に自社板金工場を対象とした社内調査を実施しましたが、保険金の不正請求に該当する不正な案件は確認されませんでした〉
〈同様に問題となっている車検不正についても定期的な監査により不正な案件は確認されておりません〉
つまりIDOMは、ビッグモーターで次々と発覚したような「保険金の不正請求」や「車検不正」は一切なかったと発表したのである。
しかしどうやら、IDOMの自主調査は甘かったようだ。
今年9月上旬、筆者のもとに情報提供があった。それによると、すでに複数の大手損保会社がIDOMによる保険金不正請求の調査を始めており、IDOM側はその対応に追われているというのである。
内情をよく知る情報提供者は「IDOMの保険金不正請求に対して大手損保の調査はかなり進んでいる。当初予想していたよりも、不正の件数はかなり多い」と語った。
大手損保とは、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社だ。損保会社から委託を受けて調査を行う自動車事故損害鑑定人(アジャスター)の男性が証言する。
「調査はそれぞれ独自に行われていますが、両社の間で情報共有はされているようです。ガリバーとの取り引きにおける不正件数はまだ明らかになっていませんが、かなりの数になるとも言われています。
損保の担当者とガリバー側の担当者との面談などもすでに何度か行われていると聞いています。これから大問題に発展するかもしれません」
東京海上および三井住友から、不正請求に関して問い合わせを受けているのは事実か。IDOMに取材したところ、次のように回答。こちらの質問を強く否定することはなかった。
「当社では、整備・板金事業における作業実態の調査及び監査を定期的に実施しており、仮に不備や不正が発覚した場合には速やかに関係する保険会社や運輸支局に報告し、適宜必要な対応を進める体制となっております。ご質問いただきました保険会社とも連携して作業実態の調査を進めております」
ビッグモーター問題以降、ネクステージやグッドスピードでも不正は発覚しているが、共通しているのは不正の“内容”が似ている点だ。
その理由は、中古車業界にはビッグモーターから“転職組”が多くいるためだと言われている。営業部門だけでなく、整備部門でもビッグモーターからの転職者は多い。
よく知られるところでは、9月に退任したネクステージ前社長の浜脇浩次氏がビッグモーターの出身。実はIDOMの板金部門の幹部にも、ビッグモーターからの転職組がいる。
次々と発覚する不正は、ビッグモーターから受け継がれたものなのか……。
不正の内容や規模について損保各社が発表する日は近いとみられる。