神戸市北区の路上で2010年10月、男に刺殺された同区の私立高2年・堤将太さん(当時16歳)が身に着けていた衣服などの遺品が、13年ぶりに遺族のもとに返された。
衣服には大量の血が付着し、黒っぽく変色していた。父親の敏(さとし)さん(64)は「どれだけ怖い思いをしたのだろうか」と、改めて無念の思いを募らせている。(上田裕子)
将太さんは10年10月4日夜、同区の路上で、当時17歳だった男(30)に、頭や首をナイフで刺されて亡くなった。11年後の2021年8月、兵庫県警は男を殺人容疑で逮捕。神戸地裁は今年6月、懲役18年を言い渡した。男側は判決を不服として大阪高裁に控訴した。
遺品は、神戸地検が証拠品として保管していた。敏さんが返却を希望し、1審判決から約3週間後の7月中旬に引き渡された。重ね着したTシャツ2枚、ズボン、下着、靴下、サンダルの計6点が段ボール箱の中に納められていた。
衣服は血まみれで、Tシャツには刃物で切られた跡が生々しく残っていた。「こんなひどい目に遭わされたなんて……」と、改めて男への怒りを覚えた。遺品を目にするとつらい気持ちがこみ上げるが、「これも将太の一部。大事にしてやらなあかん」と語る。
神戸地裁での1審では、被害者参加制度を利用して意見陳述を行い、「遺族の11年間の重みが分かりますか」と男を問いただした。だが、男の公判での言動から「人を殺したことを何とも思っていない」とやるせなさを感じたという。控訴審でも法廷に立つつもりで、「被害者の思いを少しでも分かってほしいと訴えたい」と話している。