福岡県飯塚地区消防本部の救急出動件数が今年上半期(1~6月)は5238件に上り、初めて年間で1万件を超えるペースで推移している。
新型コロナウイルスの流行初期には感染への懸念を背景に件数は大幅に減っていたが、感染対策の緩和などに伴い、不要不急とみられる通報が再び目立つようになった。重症化リスクの高い高齢者の搬送要請が増加傾向にあることも一因という。(鶴結城)
同本部によると、救急出動はコロナ禍前に年1万件弱で推移していたが、感染拡大を機に2020年は8456件、21年は8761件に落ち着いていた。
しかし、22年は過去最高の18年(9969件)に迫る9961件まで増加。さらに今年5月にはコロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行したこともあり、今年上半期の出動件数は、22年同期を663件上回っている。
この要因として、未就学児(生後1か月~6歳児)や、高齢者が入所する福祉施設からの搬送要請の増加が挙げられるという。
未就学児の搬送は20年が183件だったのに対し、今年は上半期だけで208件。高齢者福祉施設からの要請も20年769件、21年890件、22年1035件と右肩上がりに増え、今年上半期も499件と、22年並みの水準で推移している。
一方、今年に入り「子どもが虫に刺され、かゆがっている」「鼻づまりがひどい」「転んで下唇を切った」といった理由で搬送を要請するケースが出てきている。現場に到着した救急隊員が搬送を見送ろうとしても、保護者から「責任を取れるのか」と暴言を吐かれることもあるという。
同本部の救急出動件数は現状、病院への搬送が必要ない「軽症」が約3割を占める。出動件数が過去最高を更新した18年、6隊(1隊は3人)だった出動隊を7隊に増やしたが、それでも現状に対して「逼迫(ひっぱく)状態」だとする。
同本部は、19年に作成した「救急車 もう限界です……」と訴えるポスターも活用しながら、適正利用への理解を求める。その一環で、看護師らが救急車を呼ぶ必要性の有無や、受診できる医療機関を電話で案内してくれる「#7119」(15歳までの小児は「#8000」)の利用を呼びかけている。
同本部警防課の上尾雄一課長は「本当に救急搬送が必要な人への対応に支障が出ないよう、普段から救急車の適正利用に協力をお願いしたい」と話している。