遺体の腐敗防止を目的に使われるドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んで中毒死したとみられる事故が、2018年以降の5年間に少なくとも4件発生していることが分かった。
いずれもひつぎに納められた遺体に寄り添うなどしていた。全日本葬祭業協同組合連合会(東京、全葬連)は遺体の安置時は換気に注意するよう呼びかけている。
全葬連と消費者庁によると、遺体保存用のドライアイスが原因で二酸化炭素中毒となり死亡したとみられる事故は、18年に青森県の住宅で1件、20年に沖縄県の住宅で1件、21年に宮城、宮崎両県の葬祭施設で1件ずつの計4件あった。
亡くなったのは40~70歳代の親族ら。ドライアイスで冷やされた遺体を納めたひつぎにもたれかかったり、近くで横たわったりした状態で見つかった。故人の顔を見ようとしてひつぎに近寄った際、ドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んだとみられる。
ドライアイスは、二酸化炭素を冷却して固体にしたもの。常温常圧では、気体になる。二酸化炭素は無色無臭で、空気中に約0・03%の濃度で存在している。濃度が、3~4%を超えると頭痛やめまいを引き起こす。10%になると、視覚障害や耳鳴りを引き起こし、1分程度で死に至る。
臨床中毒に詳しい、元筑波大教授で茨城県西部医療機構理事長の水谷太郎さんは「二酸化炭素は空気より重く、低い方に滞留する性質がある。ひつぎのような閉鎖環境では、ふたが開いていてもたまりやすく、ドライアイスの量などによって、近づいた際に二酸化炭素中毒になる危険性は十分にある」と指摘する。
全葬連によると、故人の体格や火葬するまでの時間などによって使用する量は異なるが、遺体の保管にドライアイスは欠かせない。このため、今年8月に会員企業に同種事故の有無などを確認するとともに、遺体安置時は換気に十分配慮することや遺族らに注意喚起を行うことなどを求めた。
水谷さんは「注意すれば防げる事故。ひつぎに納められた遺体との対面は、換気の行き届いた場所で、複数人で手短に行うことが大事だ」と話している。