「(自殺した)医師の業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えないし、他の専攻医と比較しても突出して多いと言うこともできない」
【音声入手】職員向け説明会で「業務量は多いと言えない」「手元に資料がない」と連呼した具英成委員長の素顔を見る「週刊文春」が入手した音声データに記録されていたのは、まるで「月に200時間超」という異常とも言える残業など無かったかのような院長の説明だった。甲南医療センターの外観 共同通信社 昨年5月に兵庫県神戸市の基幹病院「甲南医療センター」に勤務していた医師の高島晨伍(しんご)さん(当時26)が自殺し、西宮労働基準監督署が労災認定していた事件が明るみに出た。地元記者が解説する。

「8月17日、読売新聞の報道で、労基署が高島さんの自殺は長時間労働による精神疾患が原因だとして労災認定していたことが発覚しました。一般的な厚労省の労災認定の基準では、発症前1カ月間に残業100時間とありますが、高島さんのケースで労基署が認定したのは倍の200時間を超えていた。同日中に、記者会見した病院側は『タイムカードの打刻の時間で計算すると、長時間になるがこれには自己研鑽の時間も含まれている』と説明。高島さんが病院に自己申告していた残業時間は30時間ほどだということも明かしました」院長らによる職員向け説明会の音声データを入手 病院の記者会見などによると、高島さんは2020年に神戸大を卒業後、甲南医療センターで研修医となった。2022年4月からは消化器内科の専門を目指す専攻医として勤務。初めて主治医として患者を担当する立場となった。同時期には学会に向けた資料作りも並行して行っていたといい、3カ月ほど休みが無い状態で精神的に追い詰められて昨年5月17日に自宅で自殺したという。「報道が出て初めて残業時間が200時間を超えていたと知り、そこまで大変だったんだと衝撃を受けました。職員向けの説明会では、病院側は一切そんなことを言っていませんでしたから…」 匿名を条件にそう証言するのは、甲南医療センターの現役職員だ。「週刊文春」は、今年3月3日、高島さんの自殺に関連して、職員向けに具英成(ぐえいせい)院長らが行った説明会の音声データを入手した。一体、何が記録されていたのか。病院側は「具体的な時間はちょっと今はコメントしません」 具院長はまず、第三者委員会や労基署への対応などを説明。そして、第三者委員会から受け取った調査報告書について「要約して話します」としたうえで、以下のように述べていた。 具院長「業務上、時間外労働時間について。高島医師が自死をされた立場に立たれたのは2022年4月以降のことであり、これは専攻医になられてからという趣旨ですね、2022年4月以降の病院の勤務医としての高島医師の業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えないし、他の専攻医と比較しても突出して多いと言うこともできない」 つまり、高島さんの業務量は「多いと言えない」と語ったのだ。 これに対し、職員の一人が「他の先生方とは突出して変わりはないということを今、お聞きしたんですけれども、具体的に何時間働いていたのか、自己研鑽の定義について教えて頂けたらと思います」と質問すると、院長は重ねて次のように答えた。 具院長「自己研鑽の時間はどのくらいで、実際に打刻の時間はどれくらいで、本人の時間外勤務の申請がどのくらいで、それからコンピュータ上の仕事をしていたと推測される時間、4月5月労基署等々に含めて報告をしています。ここで具体的に申し上げる資料を今日は持ち合わせていません」 だが、実際には第三者委員会が調査報告書で認定した時間外労働は、労基署が認定した200時間超とほぼ同水準の197時間36分だった。にもかかわらず、具院長は「資料を持ち合わせていない」などとして、時間外労働についての言及を避けていたことになる。 さらに、病院側と職員のやり取りは以下のように続いた。 病院側「他の職員に比べて突出したものはなかったというのは、これは業務量、時間外勤務時間が、ということではなくて、例えば患者数が何人であるかとか、消化器内科ですから、内視鏡の患者が、要は課されていた業務量はそれほどではなかったと、そういうコメントですので」 職員「自己研鑽含めて、ということですか」 病院側「いや、つまり、課されていた業務量。具体的な時間に関しては、ちょっと今はコメントしませんけど、時間数の話をしているわけではない」職員は取材に「再び悲劇が起きかねません」 前出の甲南医療センター職員が証言する。「『手元に資料がない』とこの時は煙に巻かれましたが、その後も職員には一切残業時間は開示されませんでした。でも、実際には第三者委員会も労基署も、200時間前後の時間外労働をしていたと認定した。今思えば、病院にとって都合が悪い数字は隠蔽しようとしていたのではないか、という疑いが拭えません」 さらに、こう続ける。「学会での資料作りにしても、若手の場合、上司の頼みを断ることができずにやらされるケースが大半。彼に業務量を調整することは出来なかったのではないでしょうか。また、病院側は『自己研鑽の時間は業務に含まれない』と強調していましたが、手術の準備、新薬の勉強…どれも患者さんのためにやっていて、立派な『仕事』です。にもかかわらず、残業時間については多くの職員が過少に申告しています。この現実に病院が真剣に向き合わなければ、再び悲劇が起きかねません」 甲南医療センターに事実確認を求めると、書面で以下のように回答した。――3月3日に行われた病院職員を対象にした説明会で、生前の高島医師の勤務について「業務量は担当患者数等の点で極めて多いとはいえない」「(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない」と、病院側が説明したと聞きましたが事実でしょうか。「報告書にあった記載をそのまま職員に伝えたものです。当院の見解としても、生前の高島医師の『業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えない』『(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない』とは考えております」――職員から具体的な高島医師の勤務時間について質問が出た際、病院側は「資料を持ち合わせていない」などと明かさなかったと聞きましたが事実でしょうか。「現段階では確認できません。ただ、3月3日、当日の説明会は、上に述べたように、第三者委員会の調査報告書の内容に関する説明会でした。ですから、説明する側が調査報告書以外の資料を手元にもっていなかったということは事実ではあります」――「週刊文春」の取材では、職員から「病院は『学会発表の準備は自己研鑽であり、時間外労働には該当しない』と説明しているが、若手医師にとっての学会発表の多くは上司からの指示、指導で行われており、自己研鑽も時間外労働に該当するものと考えるのが妥当だ」「前日の手術の予習や、最新の治療薬・治療法の勉強も自己研鑽に分類されることが多いが、日常診療を行う上で必要不可欠なことなので、本来ならば時間外労働に分類すべきだ」などの指摘が出ています。これらについて、貴院の見解を教えて下さい。「当院における医師の自己研鑽の取り扱いは、平成31年3月28日に公表された厚生労働省『医師の働き方改革に関する検討会報告書』に依拠しております。したがって、当院の自己研鑽に関して独自の見解があるわけではありません。ご質問にある職員からの指摘が仮に事実であれば、当該職員は上報告書と違う意見にたつものです。当院としては、医師の自己研鑽の自由を確保するためには、上意見書にしたがいつつ、具体的な案件が生じたときには対応を致したいと考えております」 自殺した高島さんの遺族は甲南医療センターを運営する法人に対し、すでに労働基準法違反の疑いで刑事告訴しているほか、民事訴訟も起こす予定だという。◆◆◆「週刊文春」では、今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月31日号)
「週刊文春」が入手した音声データに記録されていたのは、まるで「月に200時間超」という異常とも言える残業など無かったかのような院長の説明だった。
甲南医療センターの外観 共同通信社
昨年5月に兵庫県神戸市の基幹病院「甲南医療センター」に勤務していた医師の高島晨伍(しんご)さん(当時26)が自殺し、西宮労働基準監督署が労災認定していた事件が明るみに出た。地元記者が解説する。
「8月17日、読売新聞の報道で、労基署が高島さんの自殺は長時間労働による精神疾患が原因だとして労災認定していたことが発覚しました。一般的な厚労省の労災認定の基準では、発症前1カ月間に残業100時間とありますが、高島さんのケースで労基署が認定したのは倍の200時間を超えていた。同日中に、記者会見した病院側は『タイムカードの打刻の時間で計算すると、長時間になるがこれには自己研鑽の時間も含まれている』と説明。高島さんが病院に自己申告していた残業時間は30時間ほどだということも明かしました」
病院の記者会見などによると、高島さんは2020年に神戸大を卒業後、甲南医療センターで研修医となった。2022年4月からは消化器内科の専門を目指す専攻医として勤務。初めて主治医として患者を担当する立場となった。同時期には学会に向けた資料作りも並行して行っていたといい、3カ月ほど休みが無い状態で精神的に追い詰められて昨年5月17日に自宅で自殺したという。
「報道が出て初めて残業時間が200時間を超えていたと知り、そこまで大変だったんだと衝撃を受けました。職員向けの説明会では、病院側は一切そんなことを言っていませんでしたから…」 匿名を条件にそう証言するのは、甲南医療センターの現役職員だ。「週刊文春」は、今年3月3日、高島さんの自殺に関連して、職員向けに具英成(ぐえいせい)院長らが行った説明会の音声データを入手した。一体、何が記録されていたのか。病院側は「具体的な時間はちょっと今はコメントしません」 具院長はまず、第三者委員会や労基署への対応などを説明。そして、第三者委員会から受け取った調査報告書について「要約して話します」としたうえで、以下のように述べていた。 具院長「業務上、時間外労働時間について。高島医師が自死をされた立場に立たれたのは2022年4月以降のことであり、これは専攻医になられてからという趣旨ですね、2022年4月以降の病院の勤務医としての高島医師の業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えないし、他の専攻医と比較しても突出して多いと言うこともできない」 つまり、高島さんの業務量は「多いと言えない」と語ったのだ。 これに対し、職員の一人が「他の先生方とは突出して変わりはないということを今、お聞きしたんですけれども、具体的に何時間働いていたのか、自己研鑽の定義について教えて頂けたらと思います」と質問すると、院長は重ねて次のように答えた。 具院長「自己研鑽の時間はどのくらいで、実際に打刻の時間はどれくらいで、本人の時間外勤務の申請がどのくらいで、それからコンピュータ上の仕事をしていたと推測される時間、4月5月労基署等々に含めて報告をしています。ここで具体的に申し上げる資料を今日は持ち合わせていません」 だが、実際には第三者委員会が調査報告書で認定した時間外労働は、労基署が認定した200時間超とほぼ同水準の197時間36分だった。にもかかわらず、具院長は「資料を持ち合わせていない」などとして、時間外労働についての言及を避けていたことになる。 さらに、病院側と職員のやり取りは以下のように続いた。 病院側「他の職員に比べて突出したものはなかったというのは、これは業務量、時間外勤務時間が、ということではなくて、例えば患者数が何人であるかとか、消化器内科ですから、内視鏡の患者が、要は課されていた業務量はそれほどではなかったと、そういうコメントですので」 職員「自己研鑽含めて、ということですか」 病院側「いや、つまり、課されていた業務量。具体的な時間に関しては、ちょっと今はコメントしませんけど、時間数の話をしているわけではない」職員は取材に「再び悲劇が起きかねません」 前出の甲南医療センター職員が証言する。「『手元に資料がない』とこの時は煙に巻かれましたが、その後も職員には一切残業時間は開示されませんでした。でも、実際には第三者委員会も労基署も、200時間前後の時間外労働をしていたと認定した。今思えば、病院にとって都合が悪い数字は隠蔽しようとしていたのではないか、という疑いが拭えません」 さらに、こう続ける。「学会での資料作りにしても、若手の場合、上司の頼みを断ることができずにやらされるケースが大半。彼に業務量を調整することは出来なかったのではないでしょうか。また、病院側は『自己研鑽の時間は業務に含まれない』と強調していましたが、手術の準備、新薬の勉強…どれも患者さんのためにやっていて、立派な『仕事』です。にもかかわらず、残業時間については多くの職員が過少に申告しています。この現実に病院が真剣に向き合わなければ、再び悲劇が起きかねません」 甲南医療センターに事実確認を求めると、書面で以下のように回答した。――3月3日に行われた病院職員を対象にした説明会で、生前の高島医師の勤務について「業務量は担当患者数等の点で極めて多いとはいえない」「(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない」と、病院側が説明したと聞きましたが事実でしょうか。「報告書にあった記載をそのまま職員に伝えたものです。当院の見解としても、生前の高島医師の『業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えない』『(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない』とは考えております」――職員から具体的な高島医師の勤務時間について質問が出た際、病院側は「資料を持ち合わせていない」などと明かさなかったと聞きましたが事実でしょうか。「現段階では確認できません。ただ、3月3日、当日の説明会は、上に述べたように、第三者委員会の調査報告書の内容に関する説明会でした。ですから、説明する側が調査報告書以外の資料を手元にもっていなかったということは事実ではあります」――「週刊文春」の取材では、職員から「病院は『学会発表の準備は自己研鑽であり、時間外労働には該当しない』と説明しているが、若手医師にとっての学会発表の多くは上司からの指示、指導で行われており、自己研鑽も時間外労働に該当するものと考えるのが妥当だ」「前日の手術の予習や、最新の治療薬・治療法の勉強も自己研鑽に分類されることが多いが、日常診療を行う上で必要不可欠なことなので、本来ならば時間外労働に分類すべきだ」などの指摘が出ています。これらについて、貴院の見解を教えて下さい。「当院における医師の自己研鑽の取り扱いは、平成31年3月28日に公表された厚生労働省『医師の働き方改革に関する検討会報告書』に依拠しております。したがって、当院の自己研鑽に関して独自の見解があるわけではありません。ご質問にある職員からの指摘が仮に事実であれば、当該職員は上報告書と違う意見にたつものです。当院としては、医師の自己研鑽の自由を確保するためには、上意見書にしたがいつつ、具体的な案件が生じたときには対応を致したいと考えております」 自殺した高島さんの遺族は甲南医療センターを運営する法人に対し、すでに労働基準法違反の疑いで刑事告訴しているほか、民事訴訟も起こす予定だという。◆◆◆「週刊文春」では、今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月31日号)
「報道が出て初めて残業時間が200時間を超えていたと知り、そこまで大変だったんだと衝撃を受けました。職員向けの説明会では、病院側は一切そんなことを言っていませんでしたから…」
匿名を条件にそう証言するのは、甲南医療センターの現役職員だ。
「週刊文春」は、今年3月3日、高島さんの自殺に関連して、職員向けに具英成(ぐえいせい)院長らが行った説明会の音声データを入手した。一体、何が記録されていたのか。
具院長はまず、第三者委員会や労基署への対応などを説明。そして、第三者委員会から受け取った調査報告書について「要約して話します」としたうえで、以下のように述べていた。
具院長「業務上、時間外労働時間について。高島医師が自死をされた立場に立たれたのは2022年4月以降のことであり、これは専攻医になられてからという趣旨ですね、2022年4月以降の病院の勤務医としての高島医師の業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えないし、他の専攻医と比較しても突出して多いと言うこともできない」
つまり、高島さんの業務量は「多いと言えない」と語ったのだ。
これに対し、職員の一人が「他の先生方とは突出して変わりはないということを今、お聞きしたんですけれども、具体的に何時間働いていたのか、自己研鑽の定義について教えて頂けたらと思います」と質問すると、院長は重ねて次のように答えた。
具院長「自己研鑽の時間はどのくらいで、実際に打刻の時間はどれくらいで、本人の時間外勤務の申請がどのくらいで、それからコンピュータ上の仕事をしていたと推測される時間、4月5月労基署等々に含めて報告をしています。ここで具体的に申し上げる資料を今日は持ち合わせていません」
だが、実際には第三者委員会が調査報告書で認定した時間外労働は、労基署が認定した200時間超とほぼ同水準の197時間36分だった。にもかかわらず、具院長は「資料を持ち合わせていない」などとして、時間外労働についての言及を避けていたことになる。
さらに、病院側と職員のやり取りは以下のように続いた。
病院側「他の職員に比べて突出したものはなかったというのは、これは業務量、時間外勤務時間が、ということではなくて、例えば患者数が何人であるかとか、消化器内科ですから、内視鏡の患者が、要は課されていた業務量はそれほどではなかったと、そういうコメントですので」
職員「自己研鑽含めて、ということですか」
病院側「いや、つまり、課されていた業務量。具体的な時間に関しては、ちょっと今はコメントしませんけど、時間数の話をしているわけではない」
前出の甲南医療センター職員が証言する。
「『手元に資料がない』とこの時は煙に巻かれましたが、その後も職員には一切残業時間は開示されませんでした。でも、実際には第三者委員会も労基署も、200時間前後の時間外労働をしていたと認定した。今思えば、病院にとって都合が悪い数字は隠蔽しようとしていたのではないか、という疑いが拭えません」
さらに、こう続ける。
「学会での資料作りにしても、若手の場合、上司の頼みを断ることができずにやらされるケースが大半。彼に業務量を調整することは出来なかったのではないでしょうか。また、病院側は『自己研鑽の時間は業務に含まれない』と強調していましたが、手術の準備、新薬の勉強…どれも患者さんのためにやっていて、立派な『仕事』です。にもかかわらず、残業時間については多くの職員が過少に申告しています。この現実に病院が真剣に向き合わなければ、再び悲劇が起きかねません」
甲南医療センターに事実確認を求めると、書面で以下のように回答した。――3月3日に行われた病院職員を対象にした説明会で、生前の高島医師の勤務について「業務量は担当患者数等の点で極めて多いとはいえない」「(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない」と、病院側が説明したと聞きましたが事実でしょうか。「報告書にあった記載をそのまま職員に伝えたものです。当院の見解としても、生前の高島医師の『業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えない』『(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない』とは考えております」――職員から具体的な高島医師の勤務時間について質問が出た際、病院側は「資料を持ち合わせていない」などと明かさなかったと聞きましたが事実でしょうか。「現段階では確認できません。ただ、3月3日、当日の説明会は、上に述べたように、第三者委員会の調査報告書の内容に関する説明会でした。ですから、説明する側が調査報告書以外の資料を手元にもっていなかったということは事実ではあります」――「週刊文春」の取材では、職員から「病院は『学会発表の準備は自己研鑽であり、時間外労働には該当しない』と説明しているが、若手医師にとっての学会発表の多くは上司からの指示、指導で行われており、自己研鑽も時間外労働に該当するものと考えるのが妥当だ」「前日の手術の予習や、最新の治療薬・治療法の勉強も自己研鑽に分類されることが多いが、日常診療を行う上で必要不可欠なことなので、本来ならば時間外労働に分類すべきだ」などの指摘が出ています。これらについて、貴院の見解を教えて下さい。「当院における医師の自己研鑽の取り扱いは、平成31年3月28日に公表された厚生労働省『医師の働き方改革に関する検討会報告書』に依拠しております。したがって、当院の自己研鑽に関して独自の見解があるわけではありません。ご質問にある職員からの指摘が仮に事実であれば、当該職員は上報告書と違う意見にたつものです。当院としては、医師の自己研鑽の自由を確保するためには、上意見書にしたがいつつ、具体的な案件が生じたときには対応を致したいと考えております」 自殺した高島さんの遺族は甲南医療センターを運営する法人に対し、すでに労働基準法違反の疑いで刑事告訴しているほか、民事訴訟も起こす予定だという。◆◆◆「週刊文春」では、今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月31日号)
甲南医療センターに事実確認を求めると、書面で以下のように回答した。
――3月3日に行われた病院職員を対象にした説明会で、生前の高島医師の勤務について「業務量は担当患者数等の点で極めて多いとはいえない」「(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない」と、病院側が説明したと聞きましたが事実でしょうか。
「報告書にあった記載をそのまま職員に伝えたものです。当院の見解としても、生前の高島医師の『業務量は担当患者数等の点で極めて多いとは言えない』『(業務量は)他の医師と比較して突出して多いとは言えない』とは考えております」
――職員から具体的な高島医師の勤務時間について質問が出た際、病院側は「資料を持ち合わせていない」などと明かさなかったと聞きましたが事実でしょうか。
「現段階では確認できません。ただ、3月3日、当日の説明会は、上に述べたように、第三者委員会の調査報告書の内容に関する説明会でした。ですから、説明する側が調査報告書以外の資料を手元にもっていなかったということは事実ではあります」
――「週刊文春」の取材では、職員から「病院は『学会発表の準備は自己研鑽であり、時間外労働には該当しない』と説明しているが、若手医師にとっての学会発表の多くは上司からの指示、指導で行われており、自己研鑽も時間外労働に該当するものと考えるのが妥当だ」「前日の手術の予習や、最新の治療薬・治療法の勉強も自己研鑽に分類されることが多いが、日常診療を行う上で必要不可欠なことなので、本来ならば時間外労働に分類すべきだ」などの指摘が出ています。これらについて、貴院の見解を教えて下さい。
「当院における医師の自己研鑽の取り扱いは、平成31年3月28日に公表された厚生労働省『医師の働き方改革に関する検討会報告書』に依拠しております。したがって、当院の自己研鑽に関して独自の見解があるわけではありません。ご質問にある職員からの指摘が仮に事実であれば、当該職員は上報告書と違う意見にたつものです。当院としては、医師の自己研鑽の自由を確保するためには、上意見書にしたがいつつ、具体的な案件が生じたときには対応を致したいと考えております」
自殺した高島さんの遺族は甲南医療センターを運営する法人に対し、すでに労働基準法違反の疑いで刑事告訴しているほか、民事訴訟も起こす予定だという。
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「週刊文春」では、今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。
文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月31日号)