スマホが普及したことで、誰もが簡単に写真を撮って思い出を残せる時代になった。だが、いいことばかりではなく、犯罪の“道具”として活用されている現実もある。
【写真5枚】山田養蜂場が公式サイトに掲載した謝罪コメント。逮捕された山田満生容疑者の顔写真なども 警視庁は8月10日、ハチミツなどを製造・販売する「山田養蜂場」の専務取締役、山田満生容疑者を東京都迷惑防止条例違反(盗撮)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の両容疑で逮捕した。 山田容疑者は現社長の次男であり、有名企業の創業一族が起こしたスキャンダルに衝撃が走った。この事件を受け、山田英生社長は14日付で満生専務を解任したが、同社のイメージが大きく毀損されたのは間違いない。
同社に問い合わせたところ、満生容疑者の仕事ぶりは「特に問題ございませんでした」、盗撮などの“性癖”についても、「そのような話が社内で出ることはございませんでした」(広報部)と文書で回答した。 今回の事件の概要は、あまりに異様だ。山田容疑者は、パパ活で知り合った東京・日野市の27歳女性と共謀し、2022年12月、八王子市の入浴施設の女性脱衣室内で盗撮をした疑いが持たれている。また、2021年2~7月にかけて、別の17歳(当時)の女性にも計10回にわたってわいせつな動画を送らせた容疑がかけられている。 もともと27歳の女性は自身の裸の画像を送って金銭を得ていたが、山田容疑者から「あなたの裸に興味はなくなった。若くてきれいな人を撮ってまわってください」と要求されたという。 そこで女性は、入浴施設で首からスマホを下げて盗撮を実行。怪しい行動に気付いた女性客が店に相談したことで事態が発覚した。 パパ活相手に「お前の裸は飽きた」と盗撮を指示した事例は珍しいが、女風呂や女性トイレで、女性が“代理盗撮”をしたケースは、過去にもたびたび起きている。盗撮動画の世界に詳しい40代男性が言う。「数年前まで新宿にはそうした動画を専門に扱う店がありました。明らかに堂々と女湯や更衣室で撮られていて、女性以外に撮る術のない動画があった。自身の妻や彼女などと共謀して動画や写真を撮影し、売っていたのでしょう。その後、そうした店は消えたが、最近はスマホの普及によって、SNSを活用した動画売買に移行しています」モデルさんなのでしょうか 特に近年は、盗撮動画がブームになっているという。一昨年から、遠方から超望遠レンズで露天風呂を盗撮していた「プロ盗撮グループ」が相次いで逮捕される騒動もあった。 犯罪ジャーナリストの諸岡宏樹氏は、こうした盗撮動画の売買がSNSで活発化していると言う。「街の動画買取屋が消えた後は、組織や個人による“売り子”のような人物がSNSで売るようになった。アカウントをフォローして、ダイレクトメッセージを送り、『ペイペイ』など電子マネーで支払いをする。顔を合わせる必要がないので売る側も買う側もハードルが低く、個人間売買だと足がつきにくいと考えるのか、どんどん増えています」 実際にX(旧ツイッター)上では、売り子と思しきアカウントが直接的に盗撮動画であることは謳わず、〈きれいなお姉さんが出てくれちゃってますよ~〉〈モデルさんなのでしょうか〉などと書き、「#女湯」というハッシュタグをつけ、見本動画へ誘導しようとする投稿が見られた。 こうした「女性だけが入れる場所」を狙った盗撮の担い手は運営者の身内女性だけにとどまらない。世を賑わせるSNS上の“闇バイト”にも、「盗撮カメラの置き仕事」や「代理盗撮」などの募集があるという。「バイトを募集するといっても、警察にすぐ目を付けられるような『盗撮女性募集』などと大っぴらに書いたりはしません。実はその“胴元”は、〈余命3か月だが預貯金数億円〉とか〈脱サラ起業で数億円稼ぎに成功〉などと謳ったアカウントで〈いいねした人に全員20万円あげます〉などとポストしている“お金配り”のアカウントが多い。楽してお金がほしい男女がターゲットですが、女性には〈実働3分で3万円〉などの言葉で誘い、トイレや脱衣所にカメラを置く犯罪に加担させられるケースもあるようです」(諸岡氏) Xには“お金配り”をしている(実際には配らない)謎のアカウントが多数あるが、欲にかられて安易に「いいね」やフォローをすると、そこから犯罪の世界へ足を踏み込むこともあるのだ。諸岡氏はこうした闇バイトに加担する女性が増える問題点をこう語る。「男性が望遠カメラで森の茂みから撮影するのと違い、女性が脱衣所でスマホを操作していても違和感はないので発覚しにくい。その点においてより悪質な犯罪といえます」 今回は有名企業の専務の逮捕によって注目を集めたが、闇バイトによる盗撮被害は水面下で広がっているはずだ。※週刊ポスト2023年9月1日号
警視庁は8月10日、ハチミツなどを製造・販売する「山田養蜂場」の専務取締役、山田満生容疑者を東京都迷惑防止条例違反(盗撮)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の両容疑で逮捕した。
山田容疑者は現社長の次男であり、有名企業の創業一族が起こしたスキャンダルに衝撃が走った。この事件を受け、山田英生社長は14日付で満生専務を解任したが、同社のイメージが大きく毀損されたのは間違いない。
同社に問い合わせたところ、満生容疑者の仕事ぶりは「特に問題ございませんでした」、盗撮などの“性癖”についても、「そのような話が社内で出ることはございませんでした」(広報部)と文書で回答した。
今回の事件の概要は、あまりに異様だ。山田容疑者は、パパ活で知り合った東京・日野市の27歳女性と共謀し、2022年12月、八王子市の入浴施設の女性脱衣室内で盗撮をした疑いが持たれている。また、2021年2~7月にかけて、別の17歳(当時)の女性にも計10回にわたってわいせつな動画を送らせた容疑がかけられている。
もともと27歳の女性は自身の裸の画像を送って金銭を得ていたが、山田容疑者から「あなたの裸に興味はなくなった。若くてきれいな人を撮ってまわってください」と要求されたという。
そこで女性は、入浴施設で首からスマホを下げて盗撮を実行。怪しい行動に気付いた女性客が店に相談したことで事態が発覚した。
パパ活相手に「お前の裸は飽きた」と盗撮を指示した事例は珍しいが、女風呂や女性トイレで、女性が“代理盗撮”をしたケースは、過去にもたびたび起きている。盗撮動画の世界に詳しい40代男性が言う。
「数年前まで新宿にはそうした動画を専門に扱う店がありました。明らかに堂々と女湯や更衣室で撮られていて、女性以外に撮る術のない動画があった。自身の妻や彼女などと共謀して動画や写真を撮影し、売っていたのでしょう。その後、そうした店は消えたが、最近はスマホの普及によって、SNSを活用した動画売買に移行しています」
特に近年は、盗撮動画がブームになっているという。一昨年から、遠方から超望遠レンズで露天風呂を盗撮していた「プロ盗撮グループ」が相次いで逮捕される騒動もあった。
犯罪ジャーナリストの諸岡宏樹氏は、こうした盗撮動画の売買がSNSで活発化していると言う。
「街の動画買取屋が消えた後は、組織や個人による“売り子”のような人物がSNSで売るようになった。アカウントをフォローして、ダイレクトメッセージを送り、『ペイペイ』など電子マネーで支払いをする。顔を合わせる必要がないので売る側も買う側もハードルが低く、個人間売買だと足がつきにくいと考えるのか、どんどん増えています」
実際にX(旧ツイッター)上では、売り子と思しきアカウントが直接的に盗撮動画であることは謳わず、〈きれいなお姉さんが出てくれちゃってますよ~〉〈モデルさんなのでしょうか〉などと書き、「#女湯」というハッシュタグをつけ、見本動画へ誘導しようとする投稿が見られた。
こうした「女性だけが入れる場所」を狙った盗撮の担い手は運営者の身内女性だけにとどまらない。世を賑わせるSNS上の“闇バイト”にも、「盗撮カメラの置き仕事」や「代理盗撮」などの募集があるという。
「バイトを募集するといっても、警察にすぐ目を付けられるような『盗撮女性募集』などと大っぴらに書いたりはしません。実はその“胴元”は、〈余命3か月だが預貯金数億円〉とか〈脱サラ起業で数億円稼ぎに成功〉などと謳ったアカウントで〈いいねした人に全員20万円あげます〉などとポストしている“お金配り”のアカウントが多い。楽してお金がほしい男女がターゲットですが、女性には〈実働3分で3万円〉などの言葉で誘い、トイレや脱衣所にカメラを置く犯罪に加担させられるケースもあるようです」(諸岡氏)
Xには“お金配り”をしている(実際には配らない)謎のアカウントが多数あるが、欲にかられて安易に「いいね」やフォローをすると、そこから犯罪の世界へ足を踏み込むこともあるのだ。諸岡氏はこうした闇バイトに加担する女性が増える問題点をこう語る。
「男性が望遠カメラで森の茂みから撮影するのと違い、女性が脱衣所でスマホを操作していても違和感はないので発覚しにくい。その点においてより悪質な犯罪といえます」
今回は有名企業の専務の逮捕によって注目を集めたが、闇バイトによる盗撮被害は水面下で広がっているはずだ。
※週刊ポスト2023年9月1日号