「現金などはありますか」
特殊詐欺事件の窃盗罪で懲役3年の実刑判決を受けている女は、こうターゲットに電話をかけ資産状況などを聞き出す「かけ子」だったとみられる。
8月22日、警視庁捜査1課は強盗予備や窃盗未遂などの疑いで、指示役として「ルフィ」を名乗っていた今村磨人容疑者ら4人を再逮捕した。今年1月に東京都足立区の住宅へ窓ガラスを割って押し入り、金品を盗もうとしたとされる。逮捕された4人の中には「かけ子」だった女も。山田李沙容疑者(27)である。
「すでに山田容疑者は実刑判決を受けていますが、公判中には指示役らの『恐怖支配』について語っていました。『殺すと言われ逃げ出す勇気が出なかった』と。特殊詐欺を働く闇バイト強盗グループからは、山田容疑者だけでなく複数の女性が逮捕されました。中には『ミスキャンパス』に出場した元女子大生など、犯罪とは無関係に思われる女性もいるんです」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は今年3月21日配信の記事で、詐欺事件に手を染めた女性容疑者について詳しく報じている。再録して、彼女たちの意外な素顔や役割について振り返りたい(内容は一部修正しています)ーー。
飛行機から警察車両に乗り込む際、女は報道陣へ向かって軽く頭を下げた。
3月17日にフィリピンから強制送還されたのは、闇バイト強盗グループの「かけ子」だったとみられる山田容疑者だ。警視庁捜査2課は、移送中の機内で山田容疑者を窃盗の疑いで逮捕。日本に到着後は警視庁渋谷署で取り調べを受けた。
「山田容疑者は’19年11月、都内に住む60代の女性からキャッシュカード5枚を騙しとった特殊詐欺事件に関与しているとみられます。警察官や金融庁の職員を名乗り、電話をかけていたようです。
フィリピン当局は同月、首都マニラ市内にある犯行グループの拠点となっていた廃ホテルを摘発。36人の身柄を確保しますが、山田容疑者は摘発を逃れ逃亡していました。拘束されたのは今年1月になってからです」(全国紙社会部記者)
山田容疑者以外にも女性容疑者は複数いる。警視庁捜査2課が6月14日に、財務省職員などを名乗り高齢者からキャッシュカードや現金を騙しとったなどとして逮捕した、長野県出身の寺島春奈容疑者もその一人だ。
「高校を出てからは、都内の高級キャバクラ店で働いていたという話もあります。大人っぽい雰囲気で、男性からはかなりモテたようです。実際にネット上では『かわいい』と話題になっています。繁華街での仕事をするうちに『闇バイト強盗』へ関与するようになったのかもしれません」(同前)
異例の経歴を持つのが、山田容疑者と同じく「かけ子」だったとみられる熊井ひとみ容疑者だ。『週刊現代』(3月25日号)によると、父親は政治家で祖父は勲章をもらった名士。自身も多摩美術大学で「ミスキャンパス」に参加した、元女子大生だったという。
「『週刊現代』は、日本一かわいい新入生を決める『フレッシュキャンパスコンテスト』に出場していたと報じています。高校時代は陸上部に所属しスポーツ少女の印象だったが、以来、大胆な服を着て夜の街に出かけるようになったとか。生活が派手になる一方、常におカネに困っていたそうです。高額の報酬目当てに、闇バイト強盗に手を染めてしまったのでしょう」(同前)
闇バイト強盗では、SNSを通じ「報酬1000万円」「日当100万円」という好条件を提示し実行犯を募集していたとされる。「ルフィ」や「キム」などと名乗る指示役は、応募者に身分証や実家の住所などを提示するよう要求。こうした手続きを経て、初めて仕事内容が「特殊詐欺」や「強盗」だと明かしていたという。
「一定の時間が経つと情報が消去される機能のある通信アプリ『テレグラム』を使い、実行犯に顔写真や運転免許証などの画像を送るよう求めていたようです。一旦画像を送ると、『逃げたらヒドい目に遭うぞ』という趣旨のメッセージが。
家族構成まで伝えていたため、親族にまで危害が加えられるのを恐れ簡単には抜けられません。実際『いきなり自宅に見知らぬ男が訪ねてきた』『監視されていると思った』と、供述している実行犯もいます。『恐ろしい組織に入ってしまった』と。高額報酬に目がくらみ一旦応募すると、犯罪に手を染め続けるしかなくなってしまうのです」(同前)
華やかな経歴を持ちながら、闇バイト強盗に加担してしまった女性容疑者たち。一度犯罪に手を染めるとなかなか抜けられない、泥沼にハマっていたようだ。