保険金の不正請求問題で窮地のビッグモーター。取引銀行に借入金90億円の借り換えを要請したものの銀行団に拒否され、8月18日に借入金90億円を返済。前社長とその息子でもあった前副社長が辞任してもなお、パワハラや店舗前の街路樹に除草剤をまいていた件など次から次へと明るみに出る不祥事で顧客離れが加速している。8月23日にはFNNプライムオンラインによって、「店舗隣接の住宅に向かって用を足した」と前副社長のドン引き行動まで明らかになっている。
「報道によれば、7月から大手コンサルティング会社・デロイトトーマツグループの『ファイナンシャルアドバイザリー』が、事業の再生計画に携わっているそうです。事業の売却を視野に入れてのことでしょうが、果たして今の状況ですぐに買い手が現れるかどうか。仮にこのまま買い手が現れなければ、破産の可能性も出てくるかもしれません」(全国紙記者)
ビッグモーターの株は非公開で、同社の株は兼重宏行・宏一親子の資産管理会社『ビッグアセット社』が100%保有している。
「現在、長野県軽井沢の別荘地にビッグアセット社が持つ土地に兼重前社長は別荘を建設中だといいます。また、兼重前社長の自宅は都内の超高級住宅地にある大豪邸で、土地面積は470坪。報道では、土地と建物あわせて少なくとも60億円ほどではないかと予想されていますが、これも同社が保有しています。同社はこのほかにも全国に広大な土地を持っていて、同社の役員は兼重前社長と長男・宏行氏のみ。兼重親子の資産は相当なものでしょう」(前出の記者)
SNSでは《ビッグモーター倒産だろうなぁもうこれ》《個人資産に移した「創業家」の逃げ得 》《何一つ片付かないまま、倒産したら有耶無耶になりそうだ 》などの声が上がるが、実際はどうだろう。会社法などに詳しいアリシア銀座法律事務所代表の竹森現紗弁護士は次のように話す(以下、カッコ内は全て竹森弁護士の発言)。
「仮にビッグモーターが破産した場合、ビックアセット社が保有するビッグモーターの株には価値がなくなりますが、兼重前社長親子がビッグモーターの債務について連帯保証をしていなければ、個人の資産には影響はありません。株式会社が借金を返せなくて破産する場合、原則的には役員がそれを負担しなければいけないということにはならないからです」
しかし、前社長をはじめとした役員が不正を指示したり、不正を黙認したりといった事情がある場合は異なるという。
「ただ単に会社を破産させたというだけで代表者が損害賠償責任を負うことにはなりませんが、明らかに不法な行為または不適切な職務執行をして会社を破産させるに至ったというような場合には、会社や第三者に対して損害賠償責任を負うこともあります。
例えば、現場に不正を働くよう指示を出していたり、現場が不正を働いていることを認識できたにも関わらず見逃していたというような場合には責任を問われる可能性もあります。
会見では前社長が従業員だけに責任を押し付けるような発言があったためイメージは良くないかもしれないですが、本来、違法な行為に関しては違法行為をした人が悪いということになるので、従業員が不正をしたからといって、ただちにその会社の代表者個人が、従業員の不正によって生じた損害を、私財を投げ打って弁済しなければならないというようなことにはなりません」
さらに、ビッグアセット社が株式を100%保有していることも、兼重前社長親子に有利に働くという。
「通常、役員の任務懈怠によって会社が損害を受けたとき、会社が原告となって役員を訴えたり、株主が『株主代表訴訟』という形で役員に損害を賠償するよう求めることもできます。 しかし、ビッグモーターの場合、ビッグアセット社以外に株主がいないということであれば、その可能性は極めて少ないでしょう」
とはいえ、このまま”逃げ得”になってしまうかはまだわからないという。
「今後の捜査などによって、例えば、役員らが従業員に対して違法な行為の指示をしていたというような事実が出てくれば状況が変わる可能性もありますし、刑事責任が発生する可能性も考えられます。また、社内ではパワハラなども行われていたとのことなので、今後従業員らから民事的な請求が行われることも想定されます」
新証拠が出るなど新たな展開を迎えない限り、前社長親子の莫大な資産は手元に残り、今後も豪邸で暮らし続けられるということらしいが、果たして国民感情は納得するのだろうか。