瀬戸内の特産イイダコが激減しているとして、香川県は釣り人に対し、イイダコ釣りの期間を9月1日~10月15日の午前中に限り、それ以外は控えるよう呼びかけている。
県内の漁獲量は20年間で100分の1まで減少。「資源保護のために協力してほしい」としている。(尾崎達哉)
■複数の要因
イイダコは小型のタコで、煮付けやおでん、天ぷらなどで楽しまれている。漁業者は底引き網漁やたこつぼ漁で取っている。一方、テンヤと呼ばれる仕掛けで手軽に釣れるため、船釣りの人気が高く、例年8月中旬から10月中旬にかけて県内外の釣り人が訪れる。
県水産課によると、県内の主要6漁協での漁獲量は、2002年には199トンあったが、09年には前年から約8割減の38トンになり、22年には1・6トンまで落ち込んだ。
大幅な減少について、県水産試験場の沢田晋吾主任研究員は、複数の要因が影響していると指摘する。漁業や遊漁で取り過ぎていることに加え、餌とされる二枚貝の減少や、海水温の上昇でイイダコを捕食するマダイやハモの増加などが考えられるという。
深刻な状況を受け、県は釣り人に小さなイイダコは釣っても放流するよう求めてきたが、今年はさらに踏み込んで、釣りの期間を限定し、期間中は正午までに竿(さお)を納めてもらうことにした。だが、要請のため拘束力はない。
県では、期間を周知するためチラシを作成し、7月から県内の遊漁船業者や釣具店に配布し、協力を依頼している。瀬戸内海を挟んだ岡山県でも配っている。
イイダコ釣りの客も乗せるという高松市の遊漁船業者の男性(55)は、これまで午前と午後の1日2回の営業をしてきたが、要請を受け、午後のイイダコ釣りは行わない。「5、6年前は5時間で1人約100匹釣れていたが、今は20匹程度しかない。期間の制限は、今年だけで終わらせず、長く続けたほうがいい」と話した。
また、県は釣り人に対して、「正確な資源量を把握するため」として、釣った量などを県電子申請システムから報告することも求めている。
■漁業者と協力
資源回復に向けては、県内の漁業者が、夏場以降の成長期は網にかかったイイダコを海に戻す取り組みを行っているほか、県は漁業者と協力し、今年7月には稚ダコ約1000匹を放流した。同市庵治町の男性漁師(55)は「漁師や漁協などが協力して、資源回復に努めなければいけない」と話す。
県水産課は「釣り人と漁業者の両方での取り組みが重要」としたうえで、釣り人向けのルールについては、「今年の状況を見て、今後の対応を検討していきたい」としている。