人生100年時代、医療の発達もあって平均寿命が伸びる一方で、60歳を過ぎれば『病気の壁』がやってきます。健康で元気に生きるためには、どのような生活を送ればよいのでしょうか。60代、70代、80代と『病気の壁』をらくらく乗り越える方法を指南するのは、高齢者専門の精神科医である和田秀樹先生。その和田先生「小太りの人がいちばん長生きする」と言っていて――。
【写真】「奥さんへの依存で夫婦関係は悪化する。本当に助け合わないといけなくなるまでは別行動すべし」と語る和田先生* * * * * * *

食生活でコレステロール値を下げるのは至難の業善玉であってもコレステロールである以上、基準値まで落としたほうがいいという医者もいるようですが、女性が長寿なのは男性に比べて善玉コレステロール値が高いからだという説もあり、わたしはとくに気にすることはないように思います。また、悪玉コレステロールに関しても、免疫細胞や男性ホルモンの材料になるのはむしろ悪玉とされているコレステロールなので、コレステロール値だけにピリピリしても意味がないと考えています。高齢者に特化していえば、若いころに比べて数値が増えてくるのは普通です。自分だけが異常だなどと考えて右往左往する人が目立ちますが、数値は高くなっていくのは自然現象。にもかかわらず、若いころの数値を闇雲に目指すと、それなりのリスクがともないます。ここはバランス調整が必要だといえるでしょう。あまりにも高い場合には警戒する必要がありますが、その場合も食生活でコレステロール値を下げるのは至難の業。なぜかといえば、体内のコレステロールのうち3分の2にあたる必要量は体内で自動的に合成されていて、外的要因でのコントロールはしづらいからです。ひと昔前はコレステロールそのものが悪者扱いされていて、「コレステロールが上がるから卵は一つまでにしましょう」などと盛んに推奨されていましたが、アメリカでの調査の結果、「コレステロールの摂取量を減らせばコレステロール値が下がるという根拠はない」という結論にいたり、食事によるコレステロールのコントロールは推奨されなくなりました。中性脂肪は簡単に改善できる中性脂肪は、体温を保ったり身体を動かすためのエネルギーが、消費量以上にカロリー摂取しあまってしまうことで出現して、血中に残っている量と考えられています。そのため時間帯によって数値はかなり変わります。『病気の壁』(著:和田秀樹/興陽館)中性脂肪は肝臓や血中に蓄積するため脂肪肝や動脈硬化の原因となってしまうとされています。自慢ではありませんが、わたしは中性脂肪値が600mg/dlくらいが通常だったのですが、最近の検査で2500mg/dlという値になっているのがわかりました。これはさすがにめちゃめちゃな数値です。1000mg/dlを超えると、数ある病のなかでもっとも激痛をともなうといわれる急性膵炎になる可能性が高いうえに、大好きなアルコールが飲めなくなってしまうため、薬の力を借りることにしました。でも通常、中性脂肪値はコレステロール値とは違い、食事制限で比較的簡単に改善することができます。1日の摂取エネルギーの目安は、成人女性1400~2000キロカロリー、成人男性は2400~3000キロカロリーといわれていますが、要は食べる量を控えることで摂取カロリーを減らし、運動をすればいいわけです。また節酒がいちばん有効といわれています。ただ、わたしはQOL重視なので、酒や美食をやめる気がないので薬を使うことにしたのです。痩せればいいというものではないただし、痩せればいいというものではありません。むしろ、ポッチャリ体型が理想的だというのが持論です。BMI(肥満の診断基準を示す数値)は、体重÷身長÷身長で割りだします。たとえば身長170センチ、体重65キロの人であれば、65÷1.70÷1.70=22.5ですので、BMIは22.5ということになります。肥満度は、BMI18.5未満→低体重BMI18.5以上25.0未満→普通体重BMI25.0以上30.0未満→肥満1度BMI30.0以上35.0未満→肥満2度BMI35.0以上40.0未満→肥満3度BMI40.0以上→肥満4度また厚生労働省が公表している「食事摂取基準」では、目安とするBMIの範疇を以下のようにしています。18歳~49歳→BMI18.5~24.950歳~64歳→BMI20.0~24.965歳以上→BMI21.5~24.9※一般社団法人日本肥満学会「肥満度診察ガイドライン2016」BMI(肥満の診断基準を示す数値)は、体重÷身長÷身長で割りだします(写真提供:Photo AC)普通体重、つまり理想的なBMI値は22とされていますが、実際には多くの調査や研究の結果からBMI値が25を超えた人のほうが長生きであるという結果が出ています。身長170センチの人であれば体重72キロ~86キロくらいの人がいちばん長生きできるということです。小太りの人がいちばん長生きする日本で独自におこなわれた長期にわたる調査でも、調査開始当時40歳だった人の平均余命がもっとも長かったのは、BMI値が25.0以上30.0未満の肥満1度、つまり小太りであるとされた人でした。逆にもっとも余命が短いのは、BMI18.5未満の低体重の人。痩せている人より小太りな人のほうが、男性で7年、女性では6年も寿命が長いことがわかったのです。ところが、医学界では未だにBMI値が25以上の人は肥満であると定義づけています。肥満といわれたら、痩せなくちゃと思うじゃないですか。でも実際にはBMI値が25.0以上30.0未満の人のほうが長生きしているわけで……。極端な話、医師の指導にしたがって体重を落としたら、短命になっちゃったということになりかねないのです。ここはしっかりと考えて、自己管理していく必要があるでしょう。※本稿は、『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。
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善玉であってもコレステロールである以上、基準値まで落としたほうがいいという医者もいるようですが、女性が長寿なのは男性に比べて善玉コレステロール値が高いからだという説もあり、わたしはとくに気にすることはないように思います。
また、悪玉コレステロールに関しても、免疫細胞や男性ホルモンの材料になるのはむしろ悪玉とされているコレステロールなので、コレステロール値だけにピリピリしても意味がないと考えています。
高齢者に特化していえば、若いころに比べて数値が増えてくるのは普通です。自分だけが異常だなどと考えて右往左往する人が目立ちますが、数値は高くなっていくのは自然現象。
にもかかわらず、若いころの数値を闇雲に目指すと、それなりのリスクがともないます。ここはバランス調整が必要だといえるでしょう。
あまりにも高い場合には警戒する必要がありますが、その場合も食生活でコレステロール値を下げるのは至難の業。
なぜかといえば、体内のコレステロールのうち3分の2にあたる必要量は体内で自動的に合成されていて、外的要因でのコントロールはしづらいからです。
ひと昔前はコレステロールそのものが悪者扱いされていて、「コレステロールが上がるから卵は一つまでにしましょう」などと盛んに推奨されていましたが、アメリカでの調査の結果、「コレステロールの摂取量を減らせばコレステロール値が下がるという根拠はない」という結論にいたり、食事によるコレステロールのコントロールは推奨されなくなりました。
中性脂肪は、体温を保ったり身体を動かすためのエネルギーが、消費量以上にカロリー摂取しあまってしまうことで出現して、血中に残っている量と考えられています。
そのため時間帯によって数値はかなり変わります。
『病気の壁』(著:和田秀樹/興陽館)
中性脂肪は肝臓や血中に蓄積するため脂肪肝や動脈硬化の原因となってしまうとされています。
自慢ではありませんが、わたしは中性脂肪値が600mg/dlくらいが通常だったのですが、最近の検査で2500mg/dlという値になっているのがわかりました。これはさすがにめちゃめちゃな数値です。
1000mg/dlを超えると、数ある病のなかでもっとも激痛をともなうといわれる急性膵炎になる可能性が高いうえに、大好きなアルコールが飲めなくなってしまうため、薬の力を借りることにしました。
でも通常、中性脂肪値はコレステロール値とは違い、食事制限で比較的簡単に改善することができます。
1日の摂取エネルギーの目安は、成人女性1400~2000キロカロリー、成人男性は2400~3000キロカロリーといわれていますが、要は食べる量を控えることで摂取カロリーを減らし、運動をすればいいわけです。
また節酒がいちばん有効といわれています。ただ、わたしはQOL重視なので、酒や美食をやめる気がないので薬を使うことにしたのです。
ただし、痩せればいいというものではありません。むしろ、ポッチャリ体型が理想的だというのが持論です。
BMI(肥満の診断基準を示す数値)は、体重÷身長÷身長で割りだします。
たとえば身長170センチ、体重65キロの人であれば、65÷1.70÷1.70=22.5ですので、BMIは22.5ということになります。
肥満度は、BMI18.5未満→低体重BMI18.5以上25.0未満→普通体重BMI25.0以上30.0未満→肥満1度BMI30.0以上35.0未満→肥満2度BMI35.0以上40.0未満→肥満3度BMI40.0以上→肥満4度
また厚生労働省が公表している「食事摂取基準」では、目安とするBMIの範疇を以下のようにしています。
18歳~49歳→BMI18.5~24.950歳~64歳→BMI20.0~24.965歳以上→BMI21.5~24.9※一般社団法人日本肥満学会「肥満度診察ガイドライン2016」
BMI(肥満の診断基準を示す数値)は、体重÷身長÷身長で割りだします(写真提供:Photo AC)
普通体重、つまり理想的なBMI値は22とされていますが、実際には多くの調査や研究の結果からBMI値が25を超えた人のほうが長生きであるという結果が出ています。
身長170センチの人であれば体重72キロ~86キロくらいの人がいちばん長生きできるということです。
日本で独自におこなわれた長期にわたる調査でも、調査開始当時40歳だった人の平均余命がもっとも長かったのは、BMI値が25.0以上30.0未満の肥満1度、つまり小太りであるとされた人でした。
逆にもっとも余命が短いのは、BMI18.5未満の低体重の人。痩せている人より小太りな人のほうが、男性で7年、女性では6年も寿命が長いことがわかったのです。
ところが、医学界では未だにBMI値が25以上の人は肥満であると定義づけています。肥満といわれたら、痩せなくちゃと思うじゃないですか。でも実際にはBMI値が25.0以上30.0未満の人のほうが長生きしているわけで……。
極端な話、医師の指導にしたがって体重を落としたら、短命になっちゃったということになりかねないのです。
ここはしっかりと考えて、自己管理していく必要があるでしょう。
※本稿は、『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。