ペットショップ大手「Coo&RIKU(クーアンドリク)」東久留米店(東京都・東久留米市)で8月17日に購入された子犬が、犬パルボウイルス感染症が原因で4日後に死んでいたことがわかった。3日に「江の島店」(神奈川県・藤沢市)で購入された子犬も同じ病気で7日に死んでおり、8月だけで2件目となる。犬パルボウイルスは感染力が強く、免疫のない子犬の場合、致死率は8割にも及ぶ恐ろしいウイルスだ。同社の流通経路で動物が杜撰に管理されている可能性が強まってきた。
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【写真】クーアンドリク創業者の大久保浩之社長と亡くなる直前の衰弱しきった「メイ」亡くなったワンちゃんに似ていた「『メイ』をショーケースの狭い世界から出してあげてから、一日くらいしか普通の生活をさせてあげられなかった」全国に216店舗を展開する「Coo&RIKU」 女性(43)は、愛犬と過ごした短すぎる時間をこう振り返った。出会いは8月17日だった。「5月に15年連れ添ったスムースチワワを病気で亡くしてから、ずっとペットロス状態だったんです。新しくワンちゃんを迎えようといくつかペットショップを回っていた中で、クーリクで見つけた子が亡くなったワンちゃんにそっくりで……。即決でした」 17日というと、デイリー新潮が江の島店で購入されたばかりの子犬がパルボウイルスで死んだ件を報じた2日後のことだが、女性は記事を読んでいなかったという。「ネットでクーリクに悪いうわさが立っていたのは知ってはいたのですが、応対した店員は『元気で健康な子です』と言うので安心してしまった」接種証明書が1枚しかない ペットフードの定期購入プランや生命保証プランに加入し、総額約55万円の契約書にサイン。だが、書類の最終確認中に不審に思う出来事があった。「最初は『5種混合ワクチンを2回、狂犬病のワクチンも打ってある』と説明していたのに、ワクチンの接種証明書が1枚しかないんです。実は混合ワクチンは1回しか打っていなく、狂犬病ワクチンは打ってすらいないことが判明した」 メイは生後3カ月経っており、本当は2回目の混合ワクチンを打っていなければならない時期にあったが、「店員は『お客さんの方で打っておいてください』と軽く言う。不安を覚えましたが、もう契約は済んでしまったし、何よりもメイに強い愛着を抱いてしまっていたのでそのままお迎えすることになってしまい……」 だが、帰りの車中ですでに異変が始まっていた。「苦しそうに咳をし始めたのです。すぐに病院に連れて行こうと思ったんですが、もう遅い時間で開いていなかったので翌日連れて行くことにしました。帰ってから餌をあげたのですが、1食20グラム食べると説明を受けていたのに10グラムも食べないのでますます心配になりました」 翌日の午前中、動物病院に連れていくと「ケンネルコフ」という子犬がかかりやすい伝染性の気管支炎と診断された。その日は薬をもらって帰宅したが、夜になると今度は下痢が始まった。「次の日のお昼にも餌をあげたのですが5グラムほどしか食べず、しばらくして嘔吐。これはもっとひどい病気になっている可能性があると思って、再び病院に連れて行って詳しく診てもらったところ、パルボウイルスにも感染していると診断されました。すぐに入院させました」「うちの店ではパルボは発生していない」 だが、治療の甲斐なく、2日後の21日、メイは亡くなった。悲しみに暮れる中、女性の怒りに油を注いだのは、それからの店側の対応だった。「パルボウイルスの潜伏期間は1週間弱なので、診断された日から遡って考えると感染経路はクーリク以外に考えられません。けれど、何を言っても『うちの店ではパルボは発生していない』の一点張りなんです。『店にいる他のワンちゃんたちにも感染が広がっている可能性があるから気をつけて欲しい』と訴えても、『万全な管理をしているから違います』『徹底管理をしていて一人一人様子を見ているので大丈夫です』と」 メイが亡くなった翌日、店員が遺体の確認をするため、女性の自宅までやってきた。女性は亡くなった原因を一緒に考えてくれるのだろうと思っていたが、「一通りの謝罪の後、購入の際に加入した生命保障制度に則った返金手続きの話に移ってしまった。こっちは家族としてペットを迎えているのであって、何よりも心の整理を求めているのです。返金して終わりにしようとしている魂胆が見え見えで……」クーリクからの回答は…… パルボウイルスをめぐっては、現役社員からはこんな情報も寄せられている。「今年3月には掛川店(静岡県)、金沢店(石川件)、サンパークあじす(山口県)、京都店(京都府)で立て続けに発生しています」 クーアンドリクに女性の訴えについてどう考えているか質問状を送ったところ、下記の回答が届いた。〈ご指摘のような事実はございません。一方、当該お客様とのやりとりは進行中と認識しています。当該お客様へのご説明、ご理解、ご質問がこの質問には欠如しております。現在も協議進行中の案件となりますのでコメントは差し控えさせていただきます〉 各店舗でパルボウイルスが発生している状況については、〈パルボウイルス感染症については、疑陽性といわれる感染症に恐れがある早期段階のチェックを行い、根絶に努めておりますが、年間数件の発生がございます〉 トラブル続きのペットショップ業界最大手の内部でいったい何が起きているのかーー。8月31日発売の「週刊新潮」では、新たな取材で判明した複数の顧客トラブルと杜撰な動物管理の実態について、複数の元社員らの証言をもとに4ページにわたって詳報する。「週刊新潮」2023年9月7日号 掲載
「『メイ』をショーケースの狭い世界から出してあげてから、一日くらいしか普通の生活をさせてあげられなかった」
女性(43)は、愛犬と過ごした短すぎる時間をこう振り返った。出会いは8月17日だった。
「5月に15年連れ添ったスムースチワワを病気で亡くしてから、ずっとペットロス状態だったんです。新しくワンちゃんを迎えようといくつかペットショップを回っていた中で、クーリクで見つけた子が亡くなったワンちゃんにそっくりで……。即決でした」
17日というと、デイリー新潮が江の島店で購入されたばかりの子犬がパルボウイルスで死んだ件を報じた2日後のことだが、女性は記事を読んでいなかったという。
「ネットでクーリクに悪いうわさが立っていたのは知ってはいたのですが、応対した店員は『元気で健康な子です』と言うので安心してしまった」
ペットフードの定期購入プランや生命保証プランに加入し、総額約55万円の契約書にサイン。だが、書類の最終確認中に不審に思う出来事があった。
「最初は『5種混合ワクチンを2回、狂犬病のワクチンも打ってある』と説明していたのに、ワクチンの接種証明書が1枚しかないんです。実は混合ワクチンは1回しか打っていなく、狂犬病ワクチンは打ってすらいないことが判明した」
メイは生後3カ月経っており、本当は2回目の混合ワクチンを打っていなければならない時期にあったが、
「店員は『お客さんの方で打っておいてください』と軽く言う。不安を覚えましたが、もう契約は済んでしまったし、何よりもメイに強い愛着を抱いてしまっていたのでそのままお迎えすることになってしまい……」
だが、帰りの車中ですでに異変が始まっていた。
「苦しそうに咳をし始めたのです。すぐに病院に連れて行こうと思ったんですが、もう遅い時間で開いていなかったので翌日連れて行くことにしました。帰ってから餌をあげたのですが、1食20グラム食べると説明を受けていたのに10グラムも食べないのでますます心配になりました」
翌日の午前中、動物病院に連れていくと「ケンネルコフ」という子犬がかかりやすい伝染性の気管支炎と診断された。その日は薬をもらって帰宅したが、夜になると今度は下痢が始まった。
「次の日のお昼にも餌をあげたのですが5グラムほどしか食べず、しばらくして嘔吐。これはもっとひどい病気になっている可能性があると思って、再び病院に連れて行って詳しく診てもらったところ、パルボウイルスにも感染していると診断されました。すぐに入院させました」
だが、治療の甲斐なく、2日後の21日、メイは亡くなった。悲しみに暮れる中、女性の怒りに油を注いだのは、それからの店側の対応だった。
「パルボウイルスの潜伏期間は1週間弱なので、診断された日から遡って考えると感染経路はクーリク以外に考えられません。けれど、何を言っても『うちの店ではパルボは発生していない』の一点張りなんです。『店にいる他のワンちゃんたちにも感染が広がっている可能性があるから気をつけて欲しい』と訴えても、『万全な管理をしているから違います』『徹底管理をしていて一人一人様子を見ているので大丈夫です』と」
メイが亡くなった翌日、店員が遺体の確認をするため、女性の自宅までやってきた。女性は亡くなった原因を一緒に考えてくれるのだろうと思っていたが、
「一通りの謝罪の後、購入の際に加入した生命保障制度に則った返金手続きの話に移ってしまった。こっちは家族としてペットを迎えているのであって、何よりも心の整理を求めているのです。返金して終わりにしようとしている魂胆が見え見えで……」
パルボウイルスをめぐっては、現役社員からはこんな情報も寄せられている。
「今年3月には掛川店(静岡県)、金沢店(石川件)、サンパークあじす(山口県)、京都店(京都府)で立て続けに発生しています」
クーアンドリクに女性の訴えについてどう考えているか質問状を送ったところ、下記の回答が届いた。
〈ご指摘のような事実はございません。一方、当該お客様とのやりとりは進行中と認識しています。当該お客様へのご説明、ご理解、ご質問がこの質問には欠如しております。現在も協議進行中の案件となりますのでコメントは差し控えさせていただきます〉
各店舗でパルボウイルスが発生している状況については、
〈パルボウイルス感染症については、疑陽性といわれる感染症に恐れがある早期段階のチェックを行い、根絶に努めておりますが、年間数件の発生がございます〉
トラブル続きのペットショップ業界最大手の内部でいったい何が起きているのかーー。8月31日発売の「週刊新潮」では、新たな取材で判明した複数の顧客トラブルと杜撰な動物管理の実態について、複数の元社員らの証言をもとに4ページにわたって詳報する。
「週刊新潮」2023年9月7日号 掲載