ふわふわのパニエにフリルにリボン……17歳の頃、そんなロリータファッションの虜になったという青木美沙子さん(40)。ロリータモデルとして活躍しながら、正看護師の仕事を続けています。
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ここでは、青木さんの著書『まっすぐロリータ道』(光文社)より一部を抜粋して紹介。マッチングアプリを使って婚活した際、ロリータに対する男性の「偏見」を感じたという青木さんの出した答えは–。(全2回の1回目/後編を読む)
『まっすぐロリータ道』より 撮影:中林香
◆◆◆
結婚したい……! 私は焦っていました。
32歳のころです。30歳前後で結婚して子供を産んで家庭を築く、または離婚してシングルマザーとして再出発するなど、周囲は人生の次のステップをどんどん踏み始めていました。独身の友達と集まっても、話題は恋愛か婚活が中心。私はといえば、ロリータモデルと看護師の仕事に没頭していて……あまりに没頭しすぎて、気づけばアラサーになっていたのです。
別に独身主義を貫くつもりはないけれど、ロリータを一生貫くことは決定、だとしたら、ロリータを続けながらの恋愛・結婚ってどうなんだろう? できれば35歳までには結婚したい。その前に2年くらいは交際したい。となると、逆算すれば、そろそろ出会っていなければならない時期なのです、運命の人と。でも、出会いがない。 モデルとして活動するロリータ界は、ほぼほぼ女性の園。ロリータを扱うメゾンのスタッフやイベント運営スタッフも女性ばかりです。看護師だって女性率激高で、同僚に男性が少ない。患者さんとの出会い? 私が今、訪問看護師として働く先の患者さんは、シニアかお子さんが中心。つまり、いないのです、私の活動範囲内に、恋に落ちそうな異性が。だからこそ、シングルのまま30代を迎えたともいえますが……。 これはマズい。どうしたら「出会い→交際→結婚」まで、あと3年でたどり着けるのか。悩んだ末に、最初の「出会い」をお膳立てしてもらうことにしました。マッチングアプリに登録してみたのです。同じようなアラサーの友達が何人か、マッチングアプリを使って本気で婚活していたので、私も思いきって身を投じてみる気になりました。 先輩である彼女たちのアドバイスで、プロフィールにロリータを全面的に打ち出すのは思い留まりました。ロリータの身としては悔しいけれど、それをアピールした時点で男性から避けられる可能性がある、と助言されて。それで「ロリータファッションが好きです」くらいに留め、写真もロリータ感を抑えめにしました(ヘアアクセをひかえめにしたバストアップ写真なら、そうそうわかりません)。 そうしてアプローチのあった方とつつがなくやりとりを重ね、いよいよ実際に会うことになり、待ち合わせ場所へと向かったのです、いつもの全身ロリータで。 ……ドン引きされました。ガッツリ態度に出されました。「オレ、そういう趣味じゃないんだよね」 あなたの趣味のために着ているわけじゃないんですけど……。「少し後ろ歩いてくれる? ちょっと、一緒には歩けないわ」 隣を歩くのも許せないほどはずかしいですか、私? 結果はもちろんこれきり、惨敗です。数人と会って、反応はだいたい同じ。私は悟りました。というか、再認識しました。――やっぱりロリータは、異性ウケが悪い!ロリータ、婚活を超える 次に、プロフィールから「ロリータ」を消し、代わりに「ナース」を投入しました。私のもうひとつの顔である看護師は、異性からはどう評価されるのか? 結果は笑っちゃうほどあからさまでした。男性からのアプローチが一気に増えたのです。ナースって社会的信用だけでなく、男性からの好感度も高いのですね。やりとりも盛り上がり、今度こそ!と思って待ち合わせ場所へ向かう私の姿は、もちろんロリータ。すると……以下略。私を頭からつま先まで眺めて「うわっ」という表情をし、なんとかカフェに移動できたとしても、誰も彼も同じことを聞いてくるのです。「こりん星から来たの?」 千葉県船橋市から来ました。「毎日マカロン食べてるの?」 食べていません。むしろ和菓子派です。「そういう格好が好きなんでちゅか?」 ??? こんな感じです。結果はやはり、推して知るべし。最終的に、マッチングアプリで十数人と出会ったでしょうか。結局、恋愛関係に発展した人はひとりもいませんでした。彼らが望むことはみな同じ。「ロリータ、やめたら?」 それ、私にとっては死刑宣告のようなものです。 会う前は普通に会話のやりとりができていても、実際に私を見た途端、高圧的になる男性は多かった。「32歳、ロリータ」って、最低限の礼儀すら不要!とばかりに邪険にしていい属性なんでしょうか? 恋愛関係になるかもしれない相手に初対面で赤ちゃん言葉で話しかけるなんて、しないでしょう“普通は。 そもそもロリータの私も、ナースの私も、どちらも私。どちらも同じ「青木美沙子」というひとりの人間です。なのに、ナースの私には飛びついても、ロリータの私には、まるでそのへんに落ちている小石みたいな扱いを平気でする。ロリータへの偏見の根深さを思い知りました。私はこの偏見を減らしたくて活動してきたのに。会った瞬間に豹変する男性の態度にも、ロリータへの偏見をぬぐい去れない自分の力不足にも、ダブルでショック……。 すっかり疲れはてました。このまま“私のまま”で婚活しようとしたら、きっと毎回ひどく傷つく。いちばん大好きなファッションを着ているだけなのに、ロリータを広めるために一生懸命活動してきたのに、こんなにも自分を否定されて、なんのために生きているんだろう?とすら思ってしまいました。じゃあ、婚活のために己を捨てて、ロリータを封印する……? その瞬間、答えは出ました。 ロリータを封印なんて、絶対にしない! 私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。 そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。 25歳を過ぎたらおばさん、30歳になったら焦らなきゃヤバい、35歳までには結婚して子供を産まなきゃマズい……女性の人生って、わりと5歳刻みで“人並みというプレッシャーをかけられる連続のような気がします。ロリータファッションは25歳まで、二の腕を出すのは30歳まで、35歳までに家庭を築いて、40歳までに……ってこのレール、いつまでどこまで続くのでしょう。「結婚したいなら●●しろ。●●をやめろ」という条件を当たり前のように社会から突きつけられて、それに従えば“正しい生き方なのでしょうか。 そこから外れたら、世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの? いちばん大切なものは何かと考えたとき、私はそこからイチ抜けすることにしました。婚活を終えて数年がたちますが、後悔はゼロ。結婚へのあこがれは、今もないわけではありません。でも、結婚を最終目標にしてしまうと、お相手によっては自分の軸がブレてしまいかねない。自分を否定してまで結婚を最上位に置きたくないのです。私はロリータな自分を、ロリータとともに生きる自分を肯定して生きていきたい! そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。 この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))
別に独身主義を貫くつもりはないけれど、ロリータを一生貫くことは決定、だとしたら、ロリータを続けながらの恋愛・結婚ってどうなんだろう? できれば35歳までには結婚したい。その前に2年くらいは交際したい。となると、逆算すれば、そろそろ出会っていなければならない時期なのです、運命の人と。でも、出会いがない。
モデルとして活動するロリータ界は、ほぼほぼ女性の園。ロリータを扱うメゾンのスタッフやイベント運営スタッフも女性ばかりです。看護師だって女性率激高で、同僚に男性が少ない。患者さんとの出会い? 私が今、訪問看護師として働く先の患者さんは、シニアかお子さんが中心。つまり、いないのです、私の活動範囲内に、恋に落ちそうな異性が。だからこそ、シングルのまま30代を迎えたともいえますが……。
これはマズい。どうしたら「出会い→交際→結婚」まで、あと3年でたどり着けるのか。悩んだ末に、最初の「出会い」をお膳立てしてもらうことにしました。マッチングアプリに登録してみたのです。同じようなアラサーの友達が何人か、マッチングアプリを使って本気で婚活していたので、私も思いきって身を投じてみる気になりました。
先輩である彼女たちのアドバイスで、プロフィールにロリータを全面的に打ち出すのは思い留まりました。ロリータの身としては悔しいけれど、それをアピールした時点で男性から避けられる可能性がある、と助言されて。それで「ロリータファッションが好きです」くらいに留め、写真もロリータ感を抑えめにしました(ヘアアクセをひかえめにしたバストアップ写真なら、そうそうわかりません)。
そうしてアプローチのあった方とつつがなくやりとりを重ね、いよいよ実際に会うことになり、待ち合わせ場所へと向かったのです、いつもの全身ロリータで。
……ドン引きされました。ガッツリ態度に出されました。「オレ、そういう趣味じゃないんだよね」 あなたの趣味のために着ているわけじゃないんですけど……。「少し後ろ歩いてくれる? ちょっと、一緒には歩けないわ」 隣を歩くのも許せないほどはずかしいですか、私? 結果はもちろんこれきり、惨敗です。数人と会って、反応はだいたい同じ。私は悟りました。というか、再認識しました。――やっぱりロリータは、異性ウケが悪い!ロリータ、婚活を超える 次に、プロフィールから「ロリータ」を消し、代わりに「ナース」を投入しました。私のもうひとつの顔である看護師は、異性からはどう評価されるのか? 結果は笑っちゃうほどあからさまでした。男性からのアプローチが一気に増えたのです。ナースって社会的信用だけでなく、男性からの好感度も高いのですね。やりとりも盛り上がり、今度こそ!と思って待ち合わせ場所へ向かう私の姿は、もちろんロリータ。すると……以下略。私を頭からつま先まで眺めて「うわっ」という表情をし、なんとかカフェに移動できたとしても、誰も彼も同じことを聞いてくるのです。「こりん星から来たの?」 千葉県船橋市から来ました。「毎日マカロン食べてるの?」 食べていません。むしろ和菓子派です。「そういう格好が好きなんでちゅか?」 ??? こんな感じです。結果はやはり、推して知るべし。最終的に、マッチングアプリで十数人と出会ったでしょうか。結局、恋愛関係に発展した人はひとりもいませんでした。彼らが望むことはみな同じ。「ロリータ、やめたら?」 それ、私にとっては死刑宣告のようなものです。 会う前は普通に会話のやりとりができていても、実際に私を見た途端、高圧的になる男性は多かった。「32歳、ロリータ」って、最低限の礼儀すら不要!とばかりに邪険にしていい属性なんでしょうか? 恋愛関係になるかもしれない相手に初対面で赤ちゃん言葉で話しかけるなんて、しないでしょう“普通は。 そもそもロリータの私も、ナースの私も、どちらも私。どちらも同じ「青木美沙子」というひとりの人間です。なのに、ナースの私には飛びついても、ロリータの私には、まるでそのへんに落ちている小石みたいな扱いを平気でする。ロリータへの偏見の根深さを思い知りました。私はこの偏見を減らしたくて活動してきたのに。会った瞬間に豹変する男性の態度にも、ロリータへの偏見をぬぐい去れない自分の力不足にも、ダブルでショック……。 すっかり疲れはてました。このまま“私のまま”で婚活しようとしたら、きっと毎回ひどく傷つく。いちばん大好きなファッションを着ているだけなのに、ロリータを広めるために一生懸命活動してきたのに、こんなにも自分を否定されて、なんのために生きているんだろう?とすら思ってしまいました。じゃあ、婚活のために己を捨てて、ロリータを封印する……? その瞬間、答えは出ました。 ロリータを封印なんて、絶対にしない! 私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。 そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。 25歳を過ぎたらおばさん、30歳になったら焦らなきゃヤバい、35歳までには結婚して子供を産まなきゃマズい……女性の人生って、わりと5歳刻みで“人並みというプレッシャーをかけられる連続のような気がします。ロリータファッションは25歳まで、二の腕を出すのは30歳まで、35歳までに家庭を築いて、40歳までに……ってこのレール、いつまでどこまで続くのでしょう。「結婚したいなら●●しろ。●●をやめろ」という条件を当たり前のように社会から突きつけられて、それに従えば“正しい生き方なのでしょうか。 そこから外れたら、世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの? いちばん大切なものは何かと考えたとき、私はそこからイチ抜けすることにしました。婚活を終えて数年がたちますが、後悔はゼロ。結婚へのあこがれは、今もないわけではありません。でも、結婚を最終目標にしてしまうと、お相手によっては自分の軸がブレてしまいかねない。自分を否定してまで結婚を最上位に置きたくないのです。私はロリータな自分を、ロリータとともに生きる自分を肯定して生きていきたい! そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。 この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))
……ドン引きされました。ガッツリ態度に出されました。
「オレ、そういう趣味じゃないんだよね」
あなたの趣味のために着ているわけじゃないんですけど……。
「少し後ろ歩いてくれる? ちょっと、一緒には歩けないわ」
隣を歩くのも許せないほどはずかしいですか、私?
結果はもちろんこれきり、惨敗です。数人と会って、反応はだいたい同じ。私は悟りました。というか、再認識しました。――やっぱりロリータは、異性ウケが悪い!
次に、プロフィールから「ロリータ」を消し、代わりに「ナース」を投入しました。私のもうひとつの顔である看護師は、異性からはどう評価されるのか?
結果は笑っちゃうほどあからさまでした。男性からのアプローチが一気に増えたのです。ナースって社会的信用だけでなく、男性からの好感度も高いのですね。やりとりも盛り上がり、今度こそ!と思って待ち合わせ場所へ向かう私の姿は、もちろんロリータ。すると……以下略。私を頭からつま先まで眺めて「うわっ」という表情をし、なんとかカフェに移動できたとしても、誰も彼も同じことを聞いてくるのです。「こりん星から来たの?」 千葉県船橋市から来ました。「毎日マカロン食べてるの?」 食べていません。むしろ和菓子派です。「そういう格好が好きなんでちゅか?」 ??? こんな感じです。結果はやはり、推して知るべし。最終的に、マッチングアプリで十数人と出会ったでしょうか。結局、恋愛関係に発展した人はひとりもいませんでした。彼らが望むことはみな同じ。「ロリータ、やめたら?」 それ、私にとっては死刑宣告のようなものです。 会う前は普通に会話のやりとりができていても、実際に私を見た途端、高圧的になる男性は多かった。「32歳、ロリータ」って、最低限の礼儀すら不要!とばかりに邪険にしていい属性なんでしょうか? 恋愛関係になるかもしれない相手に初対面で赤ちゃん言葉で話しかけるなんて、しないでしょう“普通は。 そもそもロリータの私も、ナースの私も、どちらも私。どちらも同じ「青木美沙子」というひとりの人間です。なのに、ナースの私には飛びついても、ロリータの私には、まるでそのへんに落ちている小石みたいな扱いを平気でする。ロリータへの偏見の根深さを思い知りました。私はこの偏見を減らしたくて活動してきたのに。会った瞬間に豹変する男性の態度にも、ロリータへの偏見をぬぐい去れない自分の力不足にも、ダブルでショック……。 すっかり疲れはてました。このまま“私のまま”で婚活しようとしたら、きっと毎回ひどく傷つく。いちばん大好きなファッションを着ているだけなのに、ロリータを広めるために一生懸命活動してきたのに、こんなにも自分を否定されて、なんのために生きているんだろう?とすら思ってしまいました。じゃあ、婚活のために己を捨てて、ロリータを封印する……? その瞬間、答えは出ました。 ロリータを封印なんて、絶対にしない! 私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。 そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。 25歳を過ぎたらおばさん、30歳になったら焦らなきゃヤバい、35歳までには結婚して子供を産まなきゃマズい……女性の人生って、わりと5歳刻みで“人並みというプレッシャーをかけられる連続のような気がします。ロリータファッションは25歳まで、二の腕を出すのは30歳まで、35歳までに家庭を築いて、40歳までに……ってこのレール、いつまでどこまで続くのでしょう。「結婚したいなら●●しろ。●●をやめろ」という条件を当たり前のように社会から突きつけられて、それに従えば“正しい生き方なのでしょうか。 そこから外れたら、世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの? いちばん大切なものは何かと考えたとき、私はそこからイチ抜けすることにしました。婚活を終えて数年がたちますが、後悔はゼロ。結婚へのあこがれは、今もないわけではありません。でも、結婚を最終目標にしてしまうと、お相手によっては自分の軸がブレてしまいかねない。自分を否定してまで結婚を最上位に置きたくないのです。私はロリータな自分を、ロリータとともに生きる自分を肯定して生きていきたい! そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。 この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))
結果は笑っちゃうほどあからさまでした。男性からのアプローチが一気に増えたのです。ナースって社会的信用だけでなく、男性からの好感度も高いのですね。やりとりも盛り上がり、今度こそ!と思って待ち合わせ場所へ向かう私の姿は、もちろんロリータ。すると……以下略。私を頭からつま先まで眺めて「うわっ」という表情をし、なんとかカフェに移動できたとしても、誰も彼も同じことを聞いてくるのです。
「こりん星から来たの?」
千葉県船橋市から来ました。
「毎日マカロン食べてるの?」
食べていません。むしろ和菓子派です。
「そういう格好が好きなんでちゅか?」
???
こんな感じです。結果はやはり、推して知るべし。最終的に、マッチングアプリで十数人と出会ったでしょうか。結局、恋愛関係に発展した人はひとりもいませんでした。彼らが望むことはみな同じ。
「ロリータ、やめたら?」
それ、私にとっては死刑宣告のようなものです。
会う前は普通に会話のやりとりができていても、実際に私を見た途端、高圧的になる男性は多かった。「32歳、ロリータ」って、最低限の礼儀すら不要!とばかりに邪険にしていい属性なんでしょうか? 恋愛関係になるかもしれない相手に初対面で赤ちゃん言葉で話しかけるなんて、しないでしょう“普通は。
そもそもロリータの私も、ナースの私も、どちらも私。どちらも同じ「青木美沙子」というひとりの人間です。なのに、ナースの私には飛びついても、ロリータの私には、まるでそのへんに落ちている小石みたいな扱いを平気でする。ロリータへの偏見の根深さを思い知りました。私はこの偏見を減らしたくて活動してきたのに。会った瞬間に豹変する男性の態度にも、ロリータへの偏見をぬぐい去れない自分の力不足にも、ダブルでショック……。
すっかり疲れはてました。このまま“私のまま”で婚活しようとしたら、きっと毎回ひどく傷つく。いちばん大好きなファッションを着ているだけなのに、ロリータを広めるために一生懸命活動してきたのに、こんなにも自分を否定されて、なんのために生きているんだろう?とすら思ってしまいました。じゃあ、婚活のために己を捨てて、ロリータを封印する……? その瞬間、答えは出ました。 ロリータを封印なんて、絶対にしない! 私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。 そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。 25歳を過ぎたらおばさん、30歳になったら焦らなきゃヤバい、35歳までには結婚して子供を産まなきゃマズい……女性の人生って、わりと5歳刻みで“人並みというプレッシャーをかけられる連続のような気がします。ロリータファッションは25歳まで、二の腕を出すのは30歳まで、35歳までに家庭を築いて、40歳までに……ってこのレール、いつまでどこまで続くのでしょう。「結婚したいなら●●しろ。●●をやめろ」という条件を当たり前のように社会から突きつけられて、それに従えば“正しい生き方なのでしょうか。 そこから外れたら、世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの? いちばん大切なものは何かと考えたとき、私はそこからイチ抜けすることにしました。婚活を終えて数年がたちますが、後悔はゼロ。結婚へのあこがれは、今もないわけではありません。でも、結婚を最終目標にしてしまうと、お相手によっては自分の軸がブレてしまいかねない。自分を否定してまで結婚を最上位に置きたくないのです。私はロリータな自分を、ロリータとともに生きる自分を肯定して生きていきたい! そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。 この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))
すっかり疲れはてました。このまま“私のまま”で婚活しようとしたら、きっと毎回ひどく傷つく。いちばん大好きなファッションを着ているだけなのに、ロリータを広めるために一生懸命活動してきたのに、こんなにも自分を否定されて、なんのために生きているんだろう?とすら思ってしまいました。じゃあ、婚活のために己を捨てて、ロリータを封印する……?
その瞬間、答えは出ました。
ロリータを封印なんて、絶対にしない!
私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。 そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。 25歳を過ぎたらおばさん、30歳になったら焦らなきゃヤバい、35歳までには結婚して子供を産まなきゃマズい……女性の人生って、わりと5歳刻みで“人並みというプレッシャーをかけられる連続のような気がします。ロリータファッションは25歳まで、二の腕を出すのは30歳まで、35歳までに家庭を築いて、40歳までに……ってこのレール、いつまでどこまで続くのでしょう。「結婚したいなら●●しろ。●●をやめろ」という条件を当たり前のように社会から突きつけられて、それに従えば“正しい生き方なのでしょうか。 そこから外れたら、世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの? いちばん大切なものは何かと考えたとき、私はそこからイチ抜けすることにしました。婚活を終えて数年がたちますが、後悔はゼロ。結婚へのあこがれは、今もないわけではありません。でも、結婚を最終目標にしてしまうと、お相手によっては自分の軸がブレてしまいかねない。自分を否定してまで結婚を最上位に置きたくないのです。私はロリータな自分を、ロリータとともに生きる自分を肯定して生きていきたい! そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。 この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))
私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。
そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。
25歳を過ぎたらおばさん、30歳になったら焦らなきゃヤバい、35歳までには結婚して子供を産まなきゃマズい……女性の人生って、わりと5歳刻みで“人並みというプレッシャーをかけられる連続のような気がします。ロリータファッションは25歳まで、二の腕を出すのは30歳まで、35歳までに家庭を築いて、40歳までに……ってこのレール、いつまでどこまで続くのでしょう。「結婚したいなら●●しろ。●●をやめろ」という条件を当たり前のように社会から突きつけられて、それに従えば“正しい生き方なのでしょうか。
そこから外れたら、世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの?
いちばん大切なものは何かと考えたとき、私はそこからイチ抜けすることにしました。婚活を終えて数年がたちますが、後悔はゼロ。結婚へのあこがれは、今もないわけではありません。でも、結婚を最終目標にしてしまうと、お相手によっては自分の軸がブレてしまいかねない。自分を否定してまで結婚を最上位に置きたくないのです。私はロリータな自分を、ロリータとともに生きる自分を肯定して生きていきたい!
そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。 この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))
そしてそれは、結婚を選ぶ人たちだって同じはずです。結婚して子供を産み育てていく人の人生も、同じように大事に考えたい。さらにいえば、恋愛にあまり興味がなく、仕事や趣味に恋している人の生き方だって。つまりは恋愛しようがしまいが、結婚しようがしまいが、どの道を選んでも、自分らしくあることを肯定して生きていける。それが幸せな社会ということなんじゃないでしょうか。40歳を前にして、その思いはますます強くなる一方なのです。
この婚活体験については、のちに取材でお話しすると大きな反響があり、一部からは「あなた個人がモテないだけでしょ?」「ロリータを言いわけにしないで」といった批判もいただきました。でも、私のパーソナリティに迫るほど親しくない、なんなら初対面で、ロリータとわかった瞬間に露骨に態度を変える男性は大勢います。同じ経験をしたロリータちゃんたちからも話を聞きます。それって、ロリータが男性目線で偏見をもたれているということだし、そういう無理解をどうにかして減らしていきたい。今も変わらずそう思っています。
〈「おばさんのくせにロリータ」と言われ、劣等感を抱いていたが…ロリータモデル・青木美沙子(40)が年齢を公表して“気づいたこと”〉へ続く
(青木 美沙子/Webオリジナル(外部転載))