大学などへの進学を考えると金銭的な不安が……そこで味方になってくれるのが「奨学金」です。しかし、のちに返済しなければならない奨学金の場合、その後の人生に大きな影響を与えるケースも。みていきましょう。
結婚の挨拶のため、彼女の家に挨拶に行ったら「借金があるやつには娘はやれない!」と言われて「えっ!? しゃ、借金?」となった……そんなエピソードを自虐的に呟く、30代の男性。
――ギャンブル!? それともキャッシング!? 借金があるなら、彼女の親に言われて当然
と思うかもしれませんが、彼が「借金」と言われたのは「奨学金」。大学には奨学金を利用して進学。400万円ほどを15年かけて返済する予定で、返済が完了するのは40歳手前だといいます。確かに、給付型ではなく貸与型の奨学金であれば返済する必要はあり、奨学金を「借金」と表現するのも納得です。このように「奨学金」が結婚のネックになるケースは、意外と多いようです。
日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用し、現在返済中の人を対象とした、労働者福祉中央協議会による『奨学金や教育費負担に関するアンケート』(2022 年9月実施)によると、奨学金の平均借入額は310万円で、毎月の返済額は1.5万円、返済期間は14.5年でした。大学進学で奨学金を利用したのであれば、40歳手前まで「月1.5万円の返済を行う」ことになります。
【調査対象者のプロフィール】◆最終学歴「高卒」6.7%「高専、短大、専門学校卒」28.8%「大学卒」57.5%「大学院卒」7.0%【年齢】「24歳以下」14.5%「25~29歳」33.2%「30~34歳」34.0%「35~39歳」12.8%「40歳以上」5.5%【職業】「正規社員」52.5%「非正規社員」38.0%【配偶者】「いる/いた」42.0%「いない」58.0%【子ども】「いる」25.3%【住居】「持ち家」24.7%「民間賃貸」41.7%出所:労働者福祉中央協議会『奨学金や教育費負担に関するアンケート』(2022 年9月実施)より抜粋現在、日本の30代の有配偶者率は、男性30代前半で50%強、30代後半で60%強。女性30代前半で60%強、30代後半が70%強です。奨学金の返済者の婚姻率は低く、奨学金の返済が結婚等ライフスタイルに影響を与えていることがうかがえます。年収600万円でも「奨学金の返済に不安」…58.7%同調査で「奨学金返済の負担感」を尋ねたところ「苦しい(「かなり苦しい」「少し苦しい」の合計)」が4割。年収が少ないほど負担感は大きくなり、「年収300万円以下」で5割に達する一方で「400万円以上」でも4割程度が奨学金返済に負担感を覚えています。また「返済に関する今後の不安」について尋ねたところ、「不安(「かなり不安」「やや不安」の合計)」は69.7%。また正規社員に限定しても60.2%、さらに本人の年収が「600万円以上」であっても58.7%が「不安」と回答しています。厚生労働省によると、大卒会社員(平均年齢41.3歳)の平均給与は月収で36.2万円、年収で587.1万円。現在の結婚適齢期である30代だと、30代前半で月収30.4万円、年収504.6万円、30代後半で月収35.3万円、年収585.6万円。平均的な給与水準の大卒会社員であっても、貸与型奨学金を利用していれば、その6割程度が「奨学金返済に不安を覚えている」ということになります。これでは結婚に及び腰になるでしょうし、たとえ結婚に前向きになれても、相手やその親に「奨学金返済を抱えている人と結婚なんて不安だわ」と思われても仕方がありません。奨学金の返済を理由に結婚が遠のくという、なんとも残念な日本の現状。一方で、奨学金返済の負担から解放されれば、結婚に前のめりになる人も少なからずいるということです。国内の出生率の向上のためには、色々な課題を解決しなければなりませんが、奨学金の問題をクリアにすることは、その第一歩になるかもしれません。
【調査対象者のプロフィール】
◆最終学歴
「高卒」6.7%
「高専、短大、専門学校卒」28.8%
「大学卒」57.5%
「大学院卒」7.0%
【年齢】
「24歳以下」14.5%
「25~29歳」33.2%
「30~34歳」34.0%
「35~39歳」12.8%
「40歳以上」5.5%
【職業】
「正規社員」52.5%
「非正規社員」38.0%
【配偶者】
「いる/いた」42.0%
「いない」58.0%
【子ども】
「いる」25.3%
【住居】
「持ち家」24.7%
「民間賃貸」41.7%
出所:労働者福祉中央協議会『奨学金や教育費負担に関するアンケート』(2022 年9月実施)より抜粋
現在、日本の30代の有配偶者率は、男性30代前半で50%強、30代後半で60%強。女性30代前半で60%強、30代後半が70%強です。奨学金の返済者の婚姻率は低く、奨学金の返済が結婚等ライフスタイルに影響を与えていることがうかがえます。
同調査で「奨学金返済の負担感」を尋ねたところ「苦しい(「かなり苦しい」「少し苦しい」の合計)」が4割。年収が少ないほど負担感は大きくなり、「年収300万円以下」で5割に達する一方で「400万円以上」でも4割程度が奨学金返済に負担感を覚えています。
また「返済に関する今後の不安」について尋ねたところ、「不安(「かなり不安」「やや不安」の合計)」は69.7%。また正規社員に限定しても60.2%、さらに本人の年収が「600万円以上」であっても58.7%が「不安」と回答しています。
厚生労働省によると、大卒会社員(平均年齢41.3歳)の平均給与は月収で36.2万円、年収で587.1万円。現在の結婚適齢期である30代だと、30代前半で月収30.4万円、年収504.6万円、30代後半で月収35.3万円、年収585.6万円。平均的な給与水準の大卒会社員であっても、貸与型奨学金を利用していれば、その6割程度が「奨学金返済に不安を覚えている」ということになります。これでは結婚に及び腰になるでしょうし、たとえ結婚に前向きになれても、相手やその親に「奨学金返済を抱えている人と結婚なんて不安だわ」と思われても仕方がありません。
奨学金の返済を理由に結婚が遠のくという、なんとも残念な日本の現状。
一方で、奨学金返済の負担から解放されれば、結婚に前のめりになる人も少なからずいるということです。国内の出生率の向上のためには、色々な課題を解決しなければなりませんが、奨学金の問題をクリアにすることは、その第一歩になるかもしれません。