いきなり新社長が泣き出す、退任する社長はひたすら社員に責任転嫁、最大の戦犯と言われる“2代目”の副社長は欠席……。ツッコミどころ満載だったビッグモーターの記者会見を、社員たちはどう見ていたか。話を聞いてみると、新社長に白羽の矢が立った理由が見えてきた。驚きの“過去のウワサ”までも――。
***
【写真】和泉新社長と兼重親子のゴルフ写真 “まるで要塞”な「20億円」大豪邸と別荘写真も涙の理由 遅きに失したと言われたビッグモーターの記者会見。序盤で記者たちをどよめかせたのは、7月26日付で創業者である兼重宏行氏(71)の社長退任が発表された直後、後任として紹介された前専務で新社長の和泉伸二氏(54)が、いきなり見せた涙だった。和泉氏は再発防止に努めると抱負を述べた後、従業員たちへの思いを語る中で、

「その陰には……お客様と長年かけて信頼関係を構築してくれた……素晴らしい社員がいます……」兼重宏行・前社長(左)と和泉伸二・新社長(右) と言葉を詰まらせ、ハンカチを取り出した。この場面について、ある現役社員は「ガチだったと思います」と解説する。「彼は男気がある人で、慕っている社員も多い。普段は口数が少ないですが、たまに『わしらサラリーマンじゃけぇ辛いのぅ。いずれお前らのために屋台でも引いて、愚痴を聞いたるから』なんて任侠道にかぶれたようなことを言う人です。社員への思いが込み上げ、つい感極まったのでしょう」 一方で、退任する兼重氏に対する思いもあったはずとも指摘する。「ビッグモーターがまだ中国地方に数店舗くらいしかなかった時代からいる最古参の幹部で、心の底から兼重宏行という男に惚れ込んでいます。社長がまだバリバリ働いていて、ゴルフに手を出さなかったころ、『いつか兼重さんとゴルフをやるのがわしの夢』とも語っていた。兼重さんを守りきれなかった忸怩たる思いもあったはずです」暴走族のヘッドだった? 急に泣き出してしまったが、実は社内では強面で知られているという。「あの風貌ですからね。若い頃はヤンチャで知られ、地元・山口県で最強といわれた暴走族のヘッドだったと言われています。200人くらいを束ねていたなんて話も。古いお客さんで、『昔はあの人怖かったんだよ。随分、僕もいじめられたもんだよ』と言う人もいます」 その威圧感の凄さを物語るエピソードもある。「何年か前、普段はあまり表立って出てこない和泉さんが急に『現場を建て直す』と言い出したことがあった。その一言だけで、社内は2カ月くらいピリついた雰囲気になりました。高倉健みたいな佇まいなんですよね。ただそこにいるだけで、ちょっと緊張してしまうというか」 一方の兼重氏は、自身の経営責任を棚に上げ、不正行為をした社員について「刑事告訴を含む厳正な対処をしたい」と発言して大批判を食らった。これについては、「みんなブチギレていますよ。『アンタの息子のプレッシャーのせいで、やむなく不正をしてしまった社員がいるんだ』と。ただ、兼重さんらしいな、とも思った。急にスイッチが入ってしまうんですよ。『天地神明に誓って、(不正請求の実態を)知らなかった』と語っていましたが、ここ数年、社長業を息子に任せきりだったので本当に知らなかったと思う。だから、なんてことをしてくれたんだという思いで、つい本音が出てしまった」ゴルフ場の集合写真 ただ、今ごろ後悔しているはずだとも語る。「実際、会見の最後で『そこまでする必要はないなと考え直しました』と訂正していましたよね。あの人は、カーッとなってもすぐに『いけん、いけん』って反省できる人ではあるんです」 不用意発言の極め付けは、一部の社員がゴルフボールの入った靴下で車を叩いて傷をつけていた行為について、興奮しながら「ゴルフを愛する人への冒涜です!」と言い放った、あのセリフだった。「昔は“趣味は仕事”という人だったんですが、息子に社長業を任せるようになった5年くらい前からは、ゴルフ漬けの生活だった。だからつい、自身の“ゴルフ愛”が出てしまったのではないか」 デイリー新潮が入手した同社幹部らがゴルフ場で撮った集合写真でも、中心にいるのは、社員の間で「コナン君」とあだ名が付けられている息子で前副社長の宏一氏(35)だった。兼重氏は端のほうに立っていた。ちなみに、宏一氏の右側にはべるように立つのが和泉氏だ。 先の社員によれば、取締役たちはこうしてよくゴルフを満喫していたという。その最中、ノルマを課せられた社員たちは、やむなく不正に走ってしまったのだ。 “戦犯”と言われる息子が会見に欠席したことについてはどう考えているのか。「出せなかったんだと思います。フルボッコにされるのは間違いなかったですから。息子さんは人を追い込む弁には長けていますが、守りには弱い。もっと醜態を晒すことになったと思います」最大の懸念は「院政」 はたして、和泉新体制で“沈没間際”の会社を建て直すことができるのだろうか。「うーん……。和泉さんは兼重さんへの忠誠心だけで専務に上り詰めたような人ですからね。昔はゴリゴリの営業マンで、九州進出は彼の手柄だなんて話を聞いたことはありますが、最近は実績を上げているとは聞きません。営業部門の人ではありますが、花形の販売ではなく、買い取り部門を担当してきました。ちなみに、いま街路樹の除草剤散布疑惑で問題になっている環境整備部門も彼の管轄です。ただ、人望はある人なので、期待する声は一部にはあります」 そして、最大の懸念についてこう語る。「はたして兼重親子が本当に経営から完全に手を引くものなのか。兼重さんがそう考えていなくても、和泉さんが兼重さんのところへお伺いに通いつめ、相談と称して指示を仰ぐんじゃないか。何せ“兼重命”な人ですから」 ビッグモーターにメールで和泉氏が暴走族に入っていたという話は事実か尋ねたが、期限までに回答はなかった。 若い頃のヤンチャ魂が蘇って、これ以上、暴走することがなければいいのだが……。デイリー新潮編集部
遅きに失したと言われたビッグモーターの記者会見。序盤で記者たちをどよめかせたのは、7月26日付で創業者である兼重宏行氏(71)の社長退任が発表された直後、後任として紹介された前専務で新社長の和泉伸二氏(54)が、いきなり見せた涙だった。和泉氏は再発防止に努めると抱負を述べた後、従業員たちへの思いを語る中で、
「その陰には……お客様と長年かけて信頼関係を構築してくれた……素晴らしい社員がいます……」
と言葉を詰まらせ、ハンカチを取り出した。この場面について、ある現役社員は「ガチだったと思います」と解説する。
「彼は男気がある人で、慕っている社員も多い。普段は口数が少ないですが、たまに『わしらサラリーマンじゃけぇ辛いのぅ。いずれお前らのために屋台でも引いて、愚痴を聞いたるから』なんて任侠道にかぶれたようなことを言う人です。社員への思いが込み上げ、つい感極まったのでしょう」
一方で、退任する兼重氏に対する思いもあったはずとも指摘する。
「ビッグモーターがまだ中国地方に数店舗くらいしかなかった時代からいる最古参の幹部で、心の底から兼重宏行という男に惚れ込んでいます。社長がまだバリバリ働いていて、ゴルフに手を出さなかったころ、『いつか兼重さんとゴルフをやるのがわしの夢』とも語っていた。兼重さんを守りきれなかった忸怩たる思いもあったはずです」
急に泣き出してしまったが、実は社内では強面で知られているという。
「あの風貌ですからね。若い頃はヤンチャで知られ、地元・山口県で最強といわれた暴走族のヘッドだったと言われています。200人くらいを束ねていたなんて話も。古いお客さんで、『昔はあの人怖かったんだよ。随分、僕もいじめられたもんだよ』と言う人もいます」
その威圧感の凄さを物語るエピソードもある。
「何年か前、普段はあまり表立って出てこない和泉さんが急に『現場を建て直す』と言い出したことがあった。その一言だけで、社内は2カ月くらいピリついた雰囲気になりました。高倉健みたいな佇まいなんですよね。ただそこにいるだけで、ちょっと緊張してしまうというか」
一方の兼重氏は、自身の経営責任を棚に上げ、不正行為をした社員について「刑事告訴を含む厳正な対処をしたい」と発言して大批判を食らった。これについては、
「みんなブチギレていますよ。『アンタの息子のプレッシャーのせいで、やむなく不正をしてしまった社員がいるんだ』と。ただ、兼重さんらしいな、とも思った。急にスイッチが入ってしまうんですよ。『天地神明に誓って、(不正請求の実態を)知らなかった』と語っていましたが、ここ数年、社長業を息子に任せきりだったので本当に知らなかったと思う。だから、なんてことをしてくれたんだという思いで、つい本音が出てしまった」
ただ、今ごろ後悔しているはずだとも語る。
「実際、会見の最後で『そこまでする必要はないなと考え直しました』と訂正していましたよね。あの人は、カーッとなってもすぐに『いけん、いけん』って反省できる人ではあるんです」
不用意発言の極め付けは、一部の社員がゴルフボールの入った靴下で車を叩いて傷をつけていた行為について、興奮しながら「ゴルフを愛する人への冒涜です!」と言い放った、あのセリフだった。
「昔は“趣味は仕事”という人だったんですが、息子に社長業を任せるようになった5年くらい前からは、ゴルフ漬けの生活だった。だからつい、自身の“ゴルフ愛”が出てしまったのではないか」
デイリー新潮が入手した同社幹部らがゴルフ場で撮った集合写真でも、中心にいるのは、社員の間で「コナン君」とあだ名が付けられている息子で前副社長の宏一氏(35)だった。兼重氏は端のほうに立っていた。ちなみに、宏一氏の右側にはべるように立つのが和泉氏だ。
先の社員によれば、取締役たちはこうしてよくゴルフを満喫していたという。その最中、ノルマを課せられた社員たちは、やむなく不正に走ってしまったのだ。
“戦犯”と言われる息子が会見に欠席したことについてはどう考えているのか。
「出せなかったんだと思います。フルボッコにされるのは間違いなかったですから。息子さんは人を追い込む弁には長けていますが、守りには弱い。もっと醜態を晒すことになったと思います」
はたして、和泉新体制で“沈没間際”の会社を建て直すことができるのだろうか。
「うーん……。和泉さんは兼重さんへの忠誠心だけで専務に上り詰めたような人ですからね。昔はゴリゴリの営業マンで、九州進出は彼の手柄だなんて話を聞いたことはありますが、最近は実績を上げているとは聞きません。営業部門の人ではありますが、花形の販売ではなく、買い取り部門を担当してきました。ちなみに、いま街路樹の除草剤散布疑惑で問題になっている環境整備部門も彼の管轄です。ただ、人望はある人なので、期待する声は一部にはあります」
そして、最大の懸念についてこう語る。
「はたして兼重親子が本当に経営から完全に手を引くものなのか。兼重さんがそう考えていなくても、和泉さんが兼重さんのところへお伺いに通いつめ、相談と称して指示を仰ぐんじゃないか。何せ“兼重命”な人ですから」
ビッグモーターにメールで和泉氏が暴走族に入っていたという話は事実か尋ねたが、期限までに回答はなかった。
若い頃のヤンチャ魂が蘇って、これ以上、暴走することがなければいいのだが……。
デイリー新潮編集部