和歌山県串本町と同県那智勝浦町を結ぶ県発注のトンネル工事で施工不良があったとして、県は27日、工事を請け負った共同企業体代表の浅川組(和歌山市)と、堀組(同県田辺市)の2社を26日付で6カ月の入札参加資格停止にしたと発表した。
トンネル壁面のコンクリートの厚さが調査範囲の約7割で規定を下回り、多数の空洞も確認。県の担当者は「トンネル工事で、これだけ大規模な施工不良は全国的にも異例」とした。
県によると、施工不良が判明したのは県道の「八郎山トンネル」(全長約710メートル、幅6・5メートル)。令和2年9月に着工し、4年9月に工事が完了した。県に引き渡された同年12月、別の事業者が照明設置工事で天井に穴をあけたところ、コンクリートの厚さが足りず穴が貫通して、空洞の存在が発覚した。
県がトンネル天井部分(幅8メートル)を全長にわたってレーダー調査したところ、多数の施工不良が判明。コンクリート壁は厚さ30センチ以上が必要だが、調査範囲の約7割で基準を満たさず、最も薄いところは10分の1の約3センチしかなかった。壁内部の約50カ所で空洞も確認された。
事業者側が工事完成時に県へ提出した書類では、規定通りの厚さが確保されていると記載。県の調査では、事業者側は工事の不備を把握していたにも関わらず、虚偽の報告をしていたとみられるという。
県はコンクリート壁がはがれたり、大規模地震などで崩落したりする可能性も否定できないとしている。今後、事業者負担で補修工事を行い、経緯を確認する。トンネルの使用開始は今年12月を予定していたが、「未定」とした。
一方、県側も本来は規定で現地調査を68回実施すべきだったが、事業者側からの要請がなかったため、3回しか行っていなかった。
県土整備部の福本仁志部長は記者会見で「このようなことが起きたのは非常に残念。検査不足など県の落ち度もあり、使用開始が遅れることに深くおわびしたい」と述べた。
浅川組は産経新聞の取材に「二度とこのようなことが起こらないよう再発防止に努めたい」とし、社員に緊急のコンプライアンス教育を実施するとしている。