「クビ切り殺人」を計画した一家3人は、どれだけの罪に問われるのか――。
札幌ラブホ・頭部持ち去り殺人「両親は認知症、子ども2人は病気がち」被害男性を取り巻く過酷な家庭環境 札幌・ススキノのラブホテルの一室で男性会社員(62)のクビなし遺体が見つかり、職業不詳の田村瑠奈(29)、父親で精神科医の修(59)、母親でパート勤務の浩子(60)ら3容疑者が逮捕された事件。調べに対し、浩子容疑者は「娘が男性から暴行され、トラブルになった。それを知り、(夫が)娘と一緒に事件を起こした」と供述している。

瑠奈容疑者と修容疑者は事件の数日前、自宅近くのディスカウントストアで、切断に使ったとみられるのこぎりと、遺体を運ぶスーツケースを購入。浩子容疑者も事前に殺害計画を知っていたとみられ、事件から約3週間、被害者の生首を一家が暮らす自宅に隠していたことから、3人は同じ死体損壊・領得・遺棄容疑で逮捕された。 瑠奈容疑者は幼少期から精神疾患を抱え、逮捕された際、「自分の中には別の何人もの人格がある。その中の一人がやった」と話している。29年間、溺愛し、父として、また医師として寄り添ってきた精神科医の父親が、公判で愛娘を守ることも考えられる。山口宏弁護士がこう言う。「娘のことを一番よく知っているとはいえ、裁判所は学会の中でも中立な立場で、専門家の間でも信頼のおける鑑定人を独自で選任します。ですから父親の証言が有利に働くことはありません。ただ、鑑定人も初めて診察するわけですから、父親の過去の診断書を参考にすることは考えられる。責任能力がないと判断されれば、罪に問われない可能性もあります」 令和3年(2021年)版の「犯罪白書」によると、20年に心神喪失を理由に無罪判決が言い渡されたのは5件で、うち3件が殺人だった。精神科医の父親が裁判に与える影響は? 修容疑者は精神保健福祉士の国家試験対策教材に、講師として出演。社会活動にも熱心に取り組み、地元メディアでも度々、取り上げられ、「彼が医師免許を失うことになれば、社会の損失だ」と取材に答えた同僚もいたほど。仲間から同情論が巻き起こってもおかしくない。 死体損壊罪は3年以下の懲役で、執行猶予が付く可能性もある。「母親は直接事件に関わったわけではなく、『話は聞いていたが、怖くて家にいました』と言ったら、不起訴もあり得ます。父親に関しては、供述次第でしょう。娘と一緒にのこぎりを購入したとはいえ、『精神科医として無理やり行動を制限すると、症状が悪化する』『治療の一環として購入を手伝い、現場まで連れていった』『まさか実行するとは思わなかった』『父親としてではなく、医師として患者と相対した』と主張するかもしれません。男性に暴行されたのが事実だとすれば、被害者にも落ち度があったということになります。減刑を求める声が上がり、執行猶予が付くかもしれません」(山口弁護士) 瑠奈容疑者の祖父はテレビ局の取材に「(孫は)自分の意思に合わなかったら拒否する方だ。医者である修容疑者も、なるべくできるように『これはどうだ?』って働きかけはするんだけども、娘が『行かん』って言ったら、それは行かんでしょう。息子も奥さんも(孫を)頭から怒ることは一切ない」と語っていた。 両親は娘のために、人生を棒に振るつもりだったのか。
札幌・ススキノのラブホテルの一室で男性会社員(62)のクビなし遺体が見つかり、職業不詳の田村瑠奈(29)、父親で精神科医の修(59)、母親でパート勤務の浩子(60)ら3容疑者が逮捕された事件。調べに対し、浩子容疑者は「娘が男性から暴行され、トラブルになった。それを知り、(夫が)娘と一緒に事件を起こした」と供述している。
瑠奈容疑者と修容疑者は事件の数日前、自宅近くのディスカウントストアで、切断に使ったとみられるのこぎりと、遺体を運ぶスーツケースを購入。浩子容疑者も事前に殺害計画を知っていたとみられ、事件から約3週間、被害者の生首を一家が暮らす自宅に隠していたことから、3人は同じ死体損壊・領得・遺棄容疑で逮捕された。
瑠奈容疑者は幼少期から精神疾患を抱え、逮捕された際、「自分の中には別の何人もの人格がある。その中の一人がやった」と話している。29年間、溺愛し、父として、また医師として寄り添ってきた精神科医の父親が、公判で愛娘を守ることも考えられる。山口宏弁護士がこう言う。
「娘のことを一番よく知っているとはいえ、裁判所は学会の中でも中立な立場で、専門家の間でも信頼のおける鑑定人を独自で選任します。ですから父親の証言が有利に働くことはありません。ただ、鑑定人も初めて診察するわけですから、父親の過去の診断書を参考にすることは考えられる。責任能力がないと判断されれば、罪に問われない可能性もあります」
令和3年(2021年)版の「犯罪白書」によると、20年に心神喪失を理由に無罪判決が言い渡されたのは5件で、うち3件が殺人だった。
修容疑者は精神保健福祉士の国家試験対策教材に、講師として出演。社会活動にも熱心に取り組み、地元メディアでも度々、取り上げられ、「彼が医師免許を失うことになれば、社会の損失だ」と取材に答えた同僚もいたほど。仲間から同情論が巻き起こってもおかしくない。
死体損壊罪は3年以下の懲役で、執行猶予が付く可能性もある。
「母親は直接事件に関わったわけではなく、『話は聞いていたが、怖くて家にいました』と言ったら、不起訴もあり得ます。父親に関しては、供述次第でしょう。娘と一緒にのこぎりを購入したとはいえ、『精神科医として無理やり行動を制限すると、症状が悪化する』『治療の一環として購入を手伝い、現場まで連れていった』『まさか実行するとは思わなかった』『父親としてではなく、医師として患者と相対した』と主張するかもしれません。男性に暴行されたのが事実だとすれば、被害者にも落ち度があったということになります。減刑を求める声が上がり、執行猶予が付くかもしれません」(山口弁護士)
瑠奈容疑者の祖父はテレビ局の取材に「(孫は)自分の意思に合わなかったら拒否する方だ。医者である修容疑者も、なるべくできるように『これはどうだ?』って働きかけはするんだけども、娘が『行かん』って言ったら、それは行かんでしょう。息子も奥さんも(孫を)頭から怒ることは一切ない」と語っていた。
両親は娘のために、人生を棒に振るつもりだったのか。