台風シーズンが到来する。近年、豪雨被害が目立つように、日本の自然災害の発生件数は上昇傾向にある。災害時、女性は「弱者」といわれるが、中高年男性には意外なリスクが潜んでいた。地震、台風、洪水……想定外のリスクを回避する術を伝授!◆災害時、性交渉ナシでも性感染症が大流行する!?
世界有数の公衆衛生先進国である日本でも、災害時には性感染症が広がるリスクがある。銀座ヒカリクリニック院長の剣木憲文氏が解説する。
「集中豪雨などで上下水道が機能せず、衛生環境が悪化すれば、トリコモナスや淋病、毛じらみなどの性感染症が広がる恐れがある。実際、衛生状態が芳しくなかった終戦直後、山形の公衆浴場で少女84人が淋病に集団感染し、うち1人は失明してしまった。この少女たちは性交渉の経験はなかったが、性感染症はそれでもうつることがあるのです。衛生状態が悪化する災害時には、感染リスクが高まっても何らおかしくない」
近年、豪雨や洪水が頻発し、排水能力を超えた水が逆流し、マンホールから噴き出す様子がしばしば見られる。
「逆流した水には汚水が含まれていることがあり、糞口感染する恐れがあります。かつては、入浴時に椅子をお湯で流し、体を上から洗い、タオルを共有しない……昔の人は日頃から感染対策を励行していました。ところが、衛生的な環境に慣れきった現代人はこうしたことを怠りがちです。そもそも、災害時は免疫力が低下する場合が多く、自ずと感染リスクは高まります。現在、流行中の梅毒や淋病が、災害をきっかけに爆発的に感染拡大する可能性も否定できません」
災害時、性的行動は減るが、性交渉ナシでも性感染症のリスクはあるのだ。
対処法……入浴時は椅子を流してから座るなど、先人に倣え!
◆災害で感染リスクが高まる性感染症
・トリコモナス排尿時に不快感をもたらすが、男性は症状が出にくい。災害時、不衛生になったタオルや下着を介して感染する可能性がある。普段、性交渉がない中高年男性にも感染リスク
・淋病排尿時に痛みと膿が出る。特に、男性は淋菌起因の尿道炎として発症することが多い。災害時は不衛生なトイレが感染経路になる。抗生物質が効かない薬剤耐性菌も生まれている
・クラミジア排尿痛やかゆみ、違和感などの症状が起きるが、自覚症状がまったくない場合も多い。災害時は下水が機能せず、糞尿まみれのトイレで寄生虫の侵入から感染するリスクがある
・梅毒性器や口に多数の斑点が現れるのが特徴。昨年、1999年以来最多となる約1万3000人と感染者が急増しており、災害時には不衛生になりやすい避難所での感染爆発の可能性も
【銀座ヒカリクリニック院長・剣木憲文氏】日本性感染症学会認定医。東京医科大学病院放射線科助教として性感染症の診療に携わった後、現職。YouTubeチャンネル「性病でっか!?TV」を運営
取材・文/週刊SPA!編集部※7月4日発売の週刊SPA!特集「中年男の[災害七大リスク]研究」より