木原誠二官房副長官の妻が2006年の元夫の死亡を巡って、警視庁から事情聴取されていたとの週刊文春の報道で、18年に再捜査に当たっていた警視庁捜査1課の元刑事が28日、都内で記者会見し、「事件性はある」と自殺としたまま捜査が終了したことに異議を唱えた。
会見したのは週刊文春で、当時の捜査を証言した佐藤誠氏(64)。事件は安田種雄さんが遺体で発見され、体内から覚せい剤が検出されたことで自殺として扱われていたが、12年後に再捜査の対象となり、木原氏の妻の関与が疑われたものだ。
佐藤氏は昨年、警視庁を退職しているとはいえ、元刑事が捜査情報に言及するのは異例で、地方公務員法の守秘義務違反に問われかねない。それでも告発に踏み切ったのは警察庁の露木康浩長官の発言だという。
「(露木氏が)この事件は事件性がない、自殺とか言っていてカチンと来た。頭に来たわけではなく、被害者がかわいそうだなと。正義感とかではない。自殺だったという証拠品は存在しない。事件性がないという警察官はいない」
文春報道を巡っては木原氏が捜査当局に圧力をかけた疑惑も取りざたされている。佐藤氏は「やりにくかったことは確か」としながらも木原氏がタクシー内で妻に対して、「俺が手を回しておいたから」と発言したとされることには「励ましているだけかもしれない。妻を勇気づけるためのハッタリかもしれない」とその発言一つをもって、政治圧力があったかの判断はできないとした。
ただ、再捜査が打ち切りとなったことには「殺し(の捜査)は100件近くやっているが、こんな終わり方はない。異常だったんです」と納得していないという。
木原氏の妻の代理人弁護士はこの日、「深刻な人権侵害が生じている」として、21日に引き続き、日弁連に人権救済を申し立てた。また木原氏は文春報道に対し、「捜査に圧力を加えたとの指摘は事実無根」と松野博一官房長官に報告した。
一方、警視庁捜査1課の国府田剛課長は佐藤氏の会見を受け「証拠上、事件性は認められない。関係者のプライバシーにわたる内容が明らかにされ遺憾」とコメントしている。