岐阜市の陸上自衛隊射撃場で、自衛官候補生の男(18)が小銃を発砲し、3人が死傷した事件は14日で発生から1カ月。
男はこれまでに殺人と殺人未遂容疑の3件で送検された。逮捕後間もなく黙秘に転じたが、「銃弾を持ち出したかった」などと供述した動機に不可解な点は多い。陸自警務隊など捜査当局は動機の解明を進めつつ、男を鑑定留置して責任能力の有無も調べる方針だ。
事件は6月14日午前9時10分ごろ、実弾射撃訓練の開始直後に起きた。菊松安親1等陸曹(52)=陸曹長に特別昇任=と八代航佑3曹(25)=2曹に特別昇任=が死亡し、別の3曹が3カ月の重傷を負った。
関係者によると、銃撃の状況はこうだ。2番目に射撃する班だった男は、弾薬係の菊松さんらから約30発の銃弾を受け取った。小銃を床に置き、決められた弾数に分けた上で、複数の弾倉に弾を込めた。
射撃位置の後方で待機していた男は突然、小銃に弾倉一つを装填(そうてん)した。「動くな」と叫んだ後、制止しようとした八代さんの脇腹に1発を発砲。その後、弾薬置き場に向いて菊松さんの頭部と3曹の左脚を撃ち、うつぶせに倒れた菊松さんの背中に1発を発射した。
男は菊松さんや3曹の名前すら認識していなかった。最初の逮捕当初、「伏せたり手を上げたりしない邪魔になる人を撃った」「銃弾を奪い外に出る目的だった。追い掛けられたら撃つつもりだった」と供述。菊松さんに関し「大柄なので反撃されると困る」と話し、3人への殺意を否定した。
使われたのは「89式5.56ミリ小銃」だ。隊員教育を通じ、銃の威力に十分な知識があったことや菊松さんを再び銃撃していたことなどから、警務隊は男に強固な殺意があったとみている。
小学校時代から自衛隊に憧れを抱いていた男。ある捜査幹部は「供述している論理に飛躍が多い」と指摘する。捜査当局は今月下旬にも鑑定留置を行う方針で、数カ月かけて事件当時の精神状態などを調べる見通しだ。