２９日午前１０時１５分ごろ、横浜市鶴見区のマンション敷地内で、このマンションに住む大学１年生、冨永紗菜さん（１８）が倒れていると母親が１１０番し、その後搬送先の病院で死亡が確認された。県警鶴見署は、通報の１０分後に自首した自称会社員、伊藤龍稀容疑者（２２）を殺人容疑で逮捕した。冨永さんと交際トラブルがあったとみて調べる。知人男性によると、伊藤容疑者は暴力を振るう束縛男で、冨永さんのＳＮＳを“全監視”していたという。
逮捕容疑は２９日午前１０時１５分ごろ、刃物で複数回刺すなどして殺害した疑い。伊藤容疑者は「彼女を刺してしまった」と容疑を認めている。捜査関係者によると、冨永さんは上半身を複数回刺された。
神奈川県警によると、２０２１年１０月～２３年６月、冨永さんが「彼氏とけんかになった」と通報するなどし、県警が仲裁に入った事案が計４回あった。このうち６月のケースでは、２人は交際について「親を入れて話し合う」とし、冨永さんは「今は別れていないので避難しない」と説明。ストーカーなどの相談はなかったとしている。
冨永さんの遺族は２９日「やっと１週間前に別れることができたところでした。それでも相手からの連絡が途切れず、犯行に遭ってしまいました。今は気持ちの整理がつきません」とのコメントを公表した。
県警によると、伊藤容疑者は２９日午前１０時２５分ごろ、包丁を持って１人で鶴見署を訪れ、刺したことを認めた。
現場に駆け付けた友人は「優しくて友達思い。ショックが大きい。昨日まで連絡を取っていたので実感が湧かない」と悲しんだ。
冨永さんは以前、芸能事務所に所属していた。同じマンションに住む女性が「とにかくきれいなのよ。こんなかわいい子が（同じマンションに）いるんだと思った」と話せば、ある男性も「明るくフレンドリー。かなりモテていた」と振り返った。
そんな冨永さんは伊藤容疑者とアルバイト先で知り合い、その後交際に発展した。
ただ、伊藤容疑者は普段から暴力的だったという。けんかとなると馬乗りになり、何度も冨永さんの顔を殴ったようだ。約２年間交際したものの、伊藤容疑者の暴力が原因で、事件の１週間前に別れている。
ところが、この別れが事件の引き金となった。別れを切り出すと「俺と別れたらどうなっても知らないぞ」というような脅迫文がＳＮＳに何度も送りつけられるようになり、冨永さんを悩ませた。
さらに、事件前日の２８日の夜には、伊藤容疑者が冨永さんのアルバイト先を訪問。２人は口論となり、父親が駆けつけるという事態にも発展していた。
伊藤容疑者にとって納得のいく別れではなかったことは明らかだが、なぜこのような凶行に走ったのか。
冨永さんを知る知人男性によると、その異常な束縛癖が明らかになった。
「冨永さんが男友達とラインするのもだめ。インスタグラムも誰と何を話しているのか全部見られるようになっているんです」（知人男性）
冨永さんの個人のインスタグラムは、伊藤容疑者のスマートフォンでもログインができるようになっており、友人とのメッセージやその一言一句まで監視されている状態にあったという。しかも伊藤容疑者は冨永さん宅の合鍵も持っていたというから驚くほかない。
「異常ですよ。冨永さんの恐怖はすさまじかったと思います」（同）
伊藤容疑者の凶行を止めるすべはなかったのだろうか。