大きくなって帰っておいで――。こんな書き出しで盛んに新聞記事にされた、子どもたちによる日中の「ウミガメ放流会」への疑問が、関係者の間で高まっている。「日中に放流してもほぼ死ぬ運命。やめた方がいい」。奄美海洋生物研究会の興克樹会長(52)は、5月25日にあった鹿児島県とウミガメが産卵する沿岸の32市町村の県ウミガメ保護対策連絡協議会で訴えた。ふ化したカメの生き延びる可能性が大きく低下するためという。
【写真】「自然保護の象徴」ウミガメ ぐったりした姿で発見された事例も 興会長によると、卵からふ化したウミガメは24時間以内に沖まで出ないと、体力を失って生き残れない。自然状態では真夜中などに浜から一目散に泳ぎ出す。それが、日中まで待って放流すると、その段階で何時間もロスしているうえ、日中は魚や鳥の活動時間帯に当たり、大半が餌食になるという。 卵が波にさらわれないように移設することにも慎重論が出ている。ふ化率が著しく下がるためといい、日本ウミガメ協議会の「保護ハンドブック」には「移設は他に保護する手立てがない場合にのみ選択されるべきだ」と書かれている。 放流会への疑問の高まりにつれ、実施する自治体も減っているとみられるが、それでも5月25日の連絡協議会では3市1町が放流会を予定すると報告。報告しなかったものの実施予定の市もあった。 奄美市は2023年度から取りやめた。担当者は「代わりにウミガメ観察会を開き、なぜ放流会が望ましくないか伝えることで、子どもたちにより考えを深めてもらえるようにしたい」と話した。 「実施する」と報告した自治体も、毎日新聞の取材に対し、「日中がだめな理由は納得できた」「よかれと思っていたが、初めて問題点を知った」などと回答。改善を検討する考えを示した。 興会長は「相談を受ければ、やめるように伝え、それが難しければせめて夜間に放流するようお願いしてきた。真に保護につながるかどうかを考えて判断してほしい」と話している。【梅山崇】
興会長によると、卵からふ化したウミガメは24時間以内に沖まで出ないと、体力を失って生き残れない。自然状態では真夜中などに浜から一目散に泳ぎ出す。それが、日中まで待って放流すると、その段階で何時間もロスしているうえ、日中は魚や鳥の活動時間帯に当たり、大半が餌食になるという。
卵が波にさらわれないように移設することにも慎重論が出ている。ふ化率が著しく下がるためといい、日本ウミガメ協議会の「保護ハンドブック」には「移設は他に保護する手立てがない場合にのみ選択されるべきだ」と書かれている。
放流会への疑問の高まりにつれ、実施する自治体も減っているとみられるが、それでも5月25日の連絡協議会では3市1町が放流会を予定すると報告。報告しなかったものの実施予定の市もあった。
奄美市は2023年度から取りやめた。担当者は「代わりにウミガメ観察会を開き、なぜ放流会が望ましくないか伝えることで、子どもたちにより考えを深めてもらえるようにしたい」と話した。
「実施する」と報告した自治体も、毎日新聞の取材に対し、「日中がだめな理由は納得できた」「よかれと思っていたが、初めて問題点を知った」などと回答。改善を検討する考えを示した。
興会長は「相談を受ければ、やめるように伝え、それが難しければせめて夜間に放流するようお願いしてきた。真に保護につながるかどうかを考えて判断してほしい」と話している。【梅山崇】