国内最多のゾウ10頭を飼育する千葉県市原市の動物園「市原ぞうの国」は、絶滅の恐れがあるアジアゾウを繁殖させるため、クラウドファンディング(CF)を行っている。
前例のない日本生まれの個体による繁殖に向け、雄の専用飼育舎などを整備する計画で、3000万円を目標に寄付を呼びかけている。(石本大河)
アジアゾウは絶滅危惧種に指定されており、海外から日本に連れてくることが年々難しくなっているという。数十年後には国内の動物園でゾウが見られなくなる懸念もあり、今後もゾウの飼育を続けるには、日本生まれのゾウ同士の繁殖が不可欠となっている。
市原ぞうの国には現在、園生まれのアジアゾウが5頭いる。このうち、唯一の雄である結希(8歳)は、繁殖適齢期を迎え、ゆめ花(16歳)や、りり香(9歳)との繁殖が期待されている。
ただ、ゾウの繁殖は難しく、国内の成功事例は少ない。園によると、日本でゾウが飼育されるようになってから130年以上の歴史があるが、アジアゾウの出産は15例程度しかないという。出産したのはいずれも海外生まれのゾウで、日本生まれのゾウによる出産例はない。
成獣の雄は、野生では単独で生活しながら、気に入った雌と定期的に暮らし、繁殖するという。園は、こうした習性を踏まえ、CFで集めた資金で結希専用の飼育舎や運動場、水浴び場を新たに建設する。結希に自然界に近い環境を与え、繁殖につなげたい考えだ。
CFは専用サイト「レディーフォー」で実施し、7月12日まで寄付を受け付ける。返礼品は、入園チケットや、結希が鼻で描いた絵をプリントしたTシャツなどを用意している。佐々木麻衣副園長(44)は「日本の動物園にいるゾウの現状を知ってもらったうえで、結希が親になれるよう応援してほしい」と話している。