次期衆院選で小選挙区が1減となる山口県で、「新3区」(下関市など)を巡る自民党の候補者調整が最終盤を迎えている。
安倍晋三・元首相の後継の新人議員と、岸田派ナンバー2の林外相が争う構図だ。派閥の「代理戦争」の様相も呈しており、双方は一歩も譲らない構えだ。
「志半ばで命を絶たれた安倍晋三先生の無念さを晴らしていくためにも、皆様には続きましてのご指導をお願いしたい」
安倍氏の死去に伴う4月の現4区補欠選挙で初当選した吉田真次衆院議員は4日、山口市内で開かれた自民県連大会でこう強調した。
山口県では、衆院小選挙区の「10増10減」に伴い、選挙区数が4から3に減り、4区は新3区に編入される。現1区現職の高村正大氏は新1区(山口市など)を、現2区現職の岸信千世氏は新2区(岩国市など)をそれぞれ希望している。
新3区での「1枠」獲得に向けて、吉田氏を援護射撃するのが、補選でも全面支援した安倍昭恵夫人だ。昭恵氏は5月31日、自民党本部で茂木幹事長と面会し、吉田氏の後援会長就任を報告し、「ぜひ、吉田さんを小選挙区で」と要望したという。
現4区に含まれる下関市は、中選挙区時代に安倍、林両氏の父親が地盤を争った因縁の地でもある。安倍派内では、安倍氏の地盤を林氏に明け渡すことへの抵抗感が根強い。吉田氏が所属する安倍派の塩谷立、下村博文両会長代理も昭恵氏の面会に同行し、新3区での擁立を求めた。
下関を出身地とする林氏は、農相や文部科学相などを歴任した。2021年衆院選で参院から現3区にくら替えし、岸田派座長も務める。
6月2日には、日本外国特派員協会(東京)で記者会見し、候補者調整について、「注意深く見守っていきたい」と述べるにとどめた。4日の県連大会は、外相として北朝鮮の「軍事偵察衛星」発射に備えるため欠席した。総裁派閥である岸田派内では、「林氏は新3区からの出馬にこだわりがある」との見方が出ている。
林氏の衆院くら替えには、首相を目指したいという本人の意向もあっただけに、周辺は「トップを狙う人間が比例選というわけにはいかない」とけん制する。岸田派の幹部も「新3区は林氏で決まりだ」と強気の姿勢だ。地元には「閣僚経験が豊富な林氏が有利ではないか」との声もある。
自民は現在、山口県内の衆院4選挙区を独占する。調整の結果、選挙区を失った現職は、次期衆院選で比例選に回る公算が大きいとみられている。県連は近く、新1、2区を含めて、候補者擁立に関する考えを党本部に伝える見通しだ。