神戸市北区で平成22年10月、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、殺人罪に問われた当時17歳の男(30)の裁判員裁判の初公判が7日、神戸地裁(丸田顕裁判長)で開かれた。
男は「同年代の男性を複数回刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった」と起訴内容を一部否認。弁護側は、客観的事実は争わないとする一方、殺意は否定し「犯行時は責任能力はなく、心神耗弱状態だった」と主張した。
男は事件当時17歳のため、少年法に基づき、匿名扱いで審理される。今後、被告人質問などが行われ、23日に判決が言い渡される予定。
起訴状などによると、被告は平成22年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区の路上で、堤さんを折りたたみ式ナイフで多数回突き刺すなどし、失血死させたとされる。
堤さんは交際相手だった当時中学3年の女子生徒といるところを襲われた。男は逃走し、捜査は難航したが、兵庫県警は発生から約11年後の令和3年8月、愛知県豊山町でパート従業員をしていた男を殺人容疑で逮捕。男は事件当時、現場近くの祖母宅に住んでいたが、堤さんとは面識がなかった。
兵庫県警は、男が知人に事件への関与をほのめかしているとの情報を入手。堤さんの衣服から採取されたDNA型が男のものと一致したことなどから、逮捕に踏み切った。
男は逮捕当初、「(堤さんが)女子生徒と一緒にいるところを見て腹が立った」という趣旨の供述をし、容疑を認めていたとされる。神戸地検は鑑定留置の結果、刑事責任能力を問えると判断し、昨年1月に男を殺人罪で起訴。弁護側の求めで実施された精神鑑定でも責任能力があるとの結果が出ている。