寂しさからか、単なる加齢の影響か。恋する中年の暴走が止まらない。そんな恋愛中年を徹底取材! 彼らの心の内とは?◆歯止めが利かなくなる?令和の中年恋愛事情
5月上旬、六本木の雑居ビルのワンフロアは、異様な熱気に包まれていた。
♪炎のように 燃えてDESIRE~♪
――(合いの手)燃えたらしつこい50代!
ここは1980年代に一世を風靡したディスコ「マハラジャ六本木」。きらびやかなフロアには、着飾った男女が40人ほど、中森明菜の「DESIRE」に合わせて踊り狂い、時に合いの手を入れる。その様子は若々しくエネルギッシュだが、ミラーボールに照らされた顔にはしっかりとシワが刻まれている――。
これは同店で開催されたディスコイベントでの一幕だ。客の男女比はおおよそ半々。年齢層は確かに、「燃えたらしつこそうな」50代がメインで、踏みしめるステップはどこかおぼつかない。
◆「この年になっても女の尻を追っかけてるなんて(笑)」
「Yeah、楽しんでるぅ?」
常連だという50代の男性に話しかけられた。ピンク色のストライプのシャツが印象的なナイスミドルが白い歯を見せながら語る。
「客のメイン層はバブルを謳歌した人たちさ。昔を思い出して踊りを楽しみ、フィーリングが合ったら“お持ち帰り”だってある。若い頃は想像もしなかったなあ、この年になっても女の尻を追っかけてるなんて(笑)」
アップテンポのユーロビートに変わると、何組かの男女が即席カップルとなり、男性が女性の腰に手を回す。目を凝らすと柱の陰で濃厚なキスを交わす男女の姿が。
この晩、六本木には恋する中年たちが確かにいたのだ。
◆生涯最後の恋に賭ける47歳
「僕も数年後に50代。あと何回本気の恋ができるんだろうって思うと、やれることはやれるうちに全部やらなきゃって“恋活”を始めたんです。そしたら、奇跡的に30代の彼女ができたんですよ」
そう興奮気味に語るのは、IT企業に勤める中田洋一さん(仮名・47歳)。妻子ある身ながらどうしても恋をしたいと一念発起。全身脱毛で肌はすべすべ。眉にはアートメイクを施し、2か月に一度の歯石取りも欠かさなかった。
「僕の女神ちゃん(※彼女のこと)は31歳の女盛り。かなりの酒豪で、バーで一人、テキーラをあおってる姿を見て一目惚れしました。酒に関しては僕もかなりのザルなので、認めてもらえたのでしょうね。会ったその日にカラダを重ね、付き合うように。
妻がいることですか? もちろん伝えてあります。ずいぶんと嫉妬されて、泣かれた日もありましたが、そんな姿が愛おしくて。『俺に嫉妬してくれる女性がいるなんて』って幸せを噛みしめています」
◆まさに暴走…嫉妬に苛まれて彼女のLINEを覗き見
ここから、中田さんの暴走が始まる。彼女の関心がほかを向かないよう、あらゆる手段を講じるようになったのだ。
「正直に言いましょう。行為前には一応合法と聞いている液体大麻を吸ってからコトに及びます。あと、違法とわかってましたがMDMAをネットで買って2人で試したことも。女神ちゃんとは『覚醒剤だけはやらないようにしようね』と約束してますが、死ぬまでに一度は試してみたい気持ちはある。ああもう、こんな話をしてたら会いたくなっちゃった」
中田さんのお相手は一人暮らし。11万円の家賃は全額負担し、合鍵ももらったと得意げだ。だが、燃え盛る恋心は同時に強烈な副作用をもたらした。
「嫉妬に苛まれて、よせばいいのに彼女のLINEを覗き見てしまいます。誰かに取られないかで気が気じゃなくて。彼女は彼女で『奥さんがいるベビたん(※中田さんのこと)に私を束縛する権利ないよ』と正論をかましてきます。二人でいっぱい泣いた夜は数え切れません。そのあとの行為が格別なんですよね」
離婚する日も遠くないですね。そう語る中田さんは、まんざらでもなさそうだった。
取材・文・撮影/SPA!中年の暴走恋愛調査隊 写真/PIXTA