グレーの上着に黒いズボンを履いた男が、周囲を気にしながら店内に入る。店にいたのは高齢の女性従業員1人だけだ。男は刃物で脅し「レジを開けろ。カネを出せ!」と現金約5万円を強奪。去り際に女性に向かい、こうクギをさし自転車で逃走したという。
「おい、警察に通報するなよ!」
警視庁蒲田署は3月28日、強盗の疑いで住所不詳・無職の稲見康博容疑者(41)を逮捕した。大田区蒲田のクリーニング店から現金を奪ったとされる。警察の調べに対し、稲見容疑者は「カネをとって自転車で逃げた」と犯行を認めているという。
「事件が起きたのは、前日27日の午後4時過ぎです。クリーニング店にいたのは70代の女性従業員1人。防犯カメラには『キャー!』という女性の悲鳴や、自転車に乗って逃げる稲見容疑者の様子が記録されていました。
事態が動いたのは翌日28日の午後3時頃です。防犯カメラの映像が各メディアで報じられ逃げ切れないと思ったのか、稲見容疑者は現場から約17km離れた上野署へ単身で出頭。犯行動機について『カネがなくなってきたので強盗に入った』と話していると聞いています」(全国紙社会部記者)
現場はJR蒲田駅から500mほど離れた住宅街。記者が話を聞いた近隣住民は不安そうに語る。
「近くには小学校もあるため、このあたりには防犯カメラが多数設置されているんです。トラブルなんてほとんど起きない、のんびりした街だったのに物騒になった……。最近いろいろな場所で強盗事件が起きているから、とても不安になります」
近隣では高齢者を狙った強盗事件が相次いでいる。
3月20日には、品川区内の60代男性が経営する青果店から現金17万円や通帳が盗まれる被害が発生。同23日には青果店から300mほどしか離れていない寿司店に男が押し入り、81歳の店主をナタのような刃物で殴り頭蓋骨骨折など全治1ヵ月の重傷を負わせる強盗傷害事件が起きた。いずれの件にも関与したとして、50歳の男の容疑者が逮捕されている。
「各地で多発する闇バイト強盗により、類似したトラブルが続発しています。『ルフィ』や『キム』を名乗る指示役がSNSを通じ実行犯を募り、高齢者を襲い金品を奪う事件です。実行犯は容赦なく高齢者に暴行を加え、東京都狛江市では90歳の女性住民が亡くなっています。
模倣犯は、安易な気持ちで事件を起こしているのでしょう。広島県呉市では1月、男2人がハンマーで60代の店主を襲い宝石店から30万円相当のネックレスなどを奪い逃走。強盗致傷の容疑で逮捕されたのは14歳の少年たちでした。警察の調べに対し、少年たちは『友だちと宝石を盗もうと思った』と語っている。深い考えもなく犯行に手を染めたようです」(同前)
頻発する高齢者をキズつけての強盗事件。軽い気持ちによる犯行の結果、重い刑罰が下ることを加害者は肝に銘じるべきだろう。