自然で子どもが授かれない夫婦の場合、体外受精などの不妊治療に進むケースも少なくありません。筆者自身も妊活で子どもが授かれず、40歳で不妊治療クリニックに本格的に踏み込んだうちの1人。
ただ不妊治療クリニックといっても千差万別で、クリニックによっては保険適用にならない特殊な検査や治療を多く行うところもしばしば。
そのようなクリニックは病院の治療成功率が高いものの費用が高額な傾向もあるため、見るからに“お金持ち”な夫婦を見かけることがたびたびありました。
今回の記事では、そんなクリニックに通院していた筆者が、富裕層たちの姿を見て驚いた実体験を赤裸々に紹介します。
◆不妊治療中にぶつかった40歳の壁
36歳で不妊治療をスタートさせた筆者は、タイミング、人工授精を繰り返してきたものの子どもが授かれず、気づけば40歳に。
通院先のクリニックで「体外受精をしたい」と伝えると、医師から「40歳だと妊娠率が低いから、うちではできない」ときっぱり断られてしまい、転院を決意しました。
ところが、どこの病院を調べても40歳での体外受精には消極的なところが多く、途方に暮れていました。
そんな中、「40代の患者が半数」というクリニックを発見したのです。
◆待合室には、エルメスのバーキンやCHANELがズラリ…
当時は、まだ不妊治療の保険適用制度がなかったころ。転院先のクリニックは「受精前の精子を検査して、染色体異常を少しでも減らす検査」など他にはない特殊な検査も多く取り扱っていることから、全体的に費用はやや高めの傾向でした。
そのせいもあってか、病院の患者は全体的に富裕層夫婦が多め。
なぜ、そう思ったかと言うと、待合室にはエルメスのバーキン、ボリード、エブリン、ガーデンパーティーをはじめ、CHANELのマトラッセ(現行にはないデザインが多かったので、祖母、母親のお下がりの可能性が高い)、ゴヤールのトートなどがズラリ。
実際、100万円超の高額なバッグ・エルメスのバーキンを持っていた美女を待合室で見かけたことがあるのですが、次にその方を見かけた時は同じくエルメスのボリード(こちらも100万円以上します)を、その次は最初に見たのとは別のバーキンを……と、毎回別のエルメスバッグで通院。
「一体、あの美女は、エルメスのバッグをいくつ所持しているのだろう」と、気づけば待合室の人間観察、ファッションチェックが密かな楽しみになりました。
◆アクセサリーやファッションもハイブランドだらけ…
高価なアイテムはバッグだけではなく、アクセサリーやファッションも。
アクセサリーは、一目でハイブランドとわかるカルティエのトリニティ、ヴァン クリーフ&アーペルのアルハンブラ、質の良さそうなカメオのネックレス、パールが多め。
キレイにメイクを施し、背筋をピンと伸ばし、髪型は吉川十和子さんのような巻き髪女子を見かけることもありました。
全身ユニクロに適当な綿素材のトートバッグで通院した私は、待合室の美しい女性たちに驚き。通院し始めたころは「なに、ここ……」と開いた口が塞がらなかったのを覚えています。
◆海外の富裕層向け通訳スタッフも…驚きのサービスに目を丸くする日々
また、クリニックには海外からの患者も通院。
特に“昔ながらのお嬢様”といった雰囲気の中華系の富裕層の方が多くいました。
驚いたのは、クリニックには、そういう方に向けた中国語の通訳を行うスタッフが在籍していたこと。
海外の患者向けの対策を取っているラグジュアリーっぷりに「ここは本当に、私の知っている日本?」と何度も疑ったほどです。

「費用が嵩む不妊治療を受けながら、タワーマンションを買える余裕もあるのか」と、羨ましくて仕方ありませんでした。
◆「採血した血が、高価なバッグについたら……」と緊張
体外受精では、薬で排卵をコントロールをする「ホルモン補充周期」と、自然な排卵後に移植を行う「自然周期」という方法があります。
筆者が通院していた不妊治療クリニックでは、自然な排卵後に移植を行う「自然周期」がメイン。
「自然周期」は薬をあまり使用しない分、こまめに採血をして採卵に適したタイミングを取る必要がありました。
そのため、多い時は週に2~3回採血することもあったのですが、その度に緊張したのも事実。
それは注射が怖いからではなく「もし私の血が誰かの高価なバッグについてしまって、弁償することになったら……」と緊張してしまったからでした。それゆえ、隅っこで大人しく座っていたのを記憶しています。
その後、私は無事1回の採卵、移植で妊娠し、すぐに不妊治療クリニックを卒業することに。
周りがお金持ちだらけの空間は気を使うこともありましたが、富裕層向けのクリニックゆえのホスピタリティ溢れる丁寧な検査をしてくれたと思うので、今となっては通院して本当に良かったと思っています。
<文/みくまゆたん>