多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、業務内容や職場環境など、人により理由はさまざまだが、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職をしてしまう人もいる。 たいてい「入社してみたら想像と違った」と感じるものだろうが、今回は2人のエピソードを紹介する。
◆「海外に関わる仕事がしたい」と思っていたのに… 大学生の頃から海外旅行に行くことが多かった長岡翔さん(仮名・20代)。“将来は海外に関わる仕事に就きたい”という思いがあった。だが、それはコロナ禍によって打ち砕かれる。 「海外出張が頻繁にある会社に就職しました。しかし入社した頃から、徐々に新型コロナウイルスが流行し始めたんです」 長岡さんの会社は、コロナ禍の影響をモロに受けた。 「営業のための海外出張は制限され、リモートでの営業や商談に。コロナ禍が長引くにつれて、そのスタイルが定着していきました」 ◆営業に出る機会が与えられず葛藤する日々 会社の製品や業務について徐々に覚えていった長岡さんだが、例年であれば海外営業に回り始める時期になっても、その機会は与えられなかった。 いつになったらコロナ禍が収束するのか分からない日々。長岡さんは、入社時に抱いていた仕事内容の魅力とのギャップに悩んでいた。 「期待していた仕事がまったくできないことにより、だんだんモチベーションが低下していきました」
◆“いまの会社に勤めている意味”がわからない 結局、“いまの会社に勤めている意味”が感じられず、1年未満で転職を決意した。 「短い期間で会社員を辞めたことで、周りからは『早すぎる』とか『この先どうするんだ』と言われました。もちろん、私も不安でしたが、コロナ禍でいろんな仕事のあり方が変わりつつある時期だったので。他のことにも挑戦してみようと思ったのです」 ◆“本気”を認めてもらうまで終わらない研修、初日は全員不合格 某人材派遣会社に新卒で入社した田中健二さん(仮名・30代)は、“ありえない研修内容”もさることながら、“求人募集とは異なる給料”だったため、すぐに退職を決意した。 入社した会社は非上場のオーナー企業。同期は約100人いたそうだ。 「研修が厳しいことは覚悟していましたが、想像を絶する内容でした。朝6時のラジオ体操から始まり、24時から26時に終了する。これが泊まり込みで1週間続きました。 “本気体験”をテーマに、将来会社で成し遂げたい目標を担当の先輩社員に“本気”で伝えることが課されました。ここでいう“本気”とは、目標にした内容を述べることではなく、ただただ“本気度”を認めてもらう、いわゆるメンタル的な内容です。研修初日は、“本気”を認めてもらうまで終わらず、結局26時の時点で全員が不合格でした」
◆目標を大声で叫び続けただけ 翌日以降、本気になる方法を学ぶというテーマで、街のゴミ拾い、同期全員の名前を覚えるまで終わらない学習、100Kmに及ぶヒッチハイクなどの課題があったと、田中さんは言う。 そして、1週間後の最終日。再び担当社員に目標を“本気”で伝えることが課された……。 「新入社員全員が、1週間本気で活動し、本気度が上がったということで全員が課題クリアとなりました。結果論ですが、大声で気合を入れて目標を叫び続けただけのことです。意味があるのかなって……」 ◆給与額が求人内容と違う 研修終了後、雇用契約書にサインをすることになった。このとき、田中さんは違和感を覚えたという。 「契約書に記載されている給与額と求人応募の内容が異なっていました。私は、研修担当の先輩に確認することにしたんです。すると、『お金を生みだせない新入社員が、早々に給料のことに文句を言うとは何事だ! “本気”で仕事をやっていくのなら、目標を達成するまで最初の給料額なんてどうでもいいだろ!』と圧力をかけられました」
◆「君のために研修を行ったのに辞めるとは非常識!」 研修のときから、「この会社に勤めても大丈夫なのか」と不安に思っていた田中さん。給与額も違ったことで不信感がいっきに募った。 「意を決して退職する旨を伝えると、『こんなにも会社が君のために教育を行ったにもかかわらず、今になって辞めるとは非常識だ!』と罵倒され、やっぱり無理だと思いました」 人生一度きりの新卒パイを、なぜこのような会社に使ってしまったのか……。田中さんは今でも後悔している。ちなみに、同じ事業所に配属された同期は、全員が退職したそうだ。
<取材・文/chimi86>
―[すぐに辞めた新入社員]―