埼玉県戸田市の中学校に侵入して刃物のようなもので男性教員(60)を切りつけたとして、埼玉県警は1日、高校生の少年(17)を殺人未遂の容疑で現行犯逮捕した。先月、近くでは切断された猫の死骸が複数見つかっており、近隣住民も心配していた中で起きた事件だった。一歩間違えると大惨事になっていただけに、体を張って防いだ教員に生徒や保護者たちも感謝している。
警察によると、少年は1日正午過ぎ、戸田市内の中学校に刃物を持って侵入。期末テストの最中だった3階の教室に犯人が侵入しようとしたところ、テストの立ち会いをしていた60歳の男性教員が気づき、抱きつくようにして犯人を廊下に押し出し、駆けつけたほかの3人の教員と取り押さえたという。その際、60歳教員が上半身を複数切りつけられて負傷し、病院に搬送された。
突然の事件に、この教室の生徒たちはパニックに…。同じ3階の別の教室にいた生徒は「女の子の『助けて』って悲鳴が聞こえて、切りつけられた先生がおなかを押さえていた。犯人は全身黒い服を着た小太りの男だった」と、当時の緊迫した様子を明かした。
逮捕された少年は「誰でもいいから人を殺したいと思った」と供述しており、先月、隣接するさいたま市で切断された猫の死骸が連続して見つかった事件についても「猫を殺したのは自分だ」と関与をほのめかしているという。
今回の事件で1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件を思い起こす人は少なくない。近くに住む40代男性も「最近、近所の公園で切断された猫の死体が見つかって、『酒鬼薔薇事件』みたいなことにならなければいいねって話していた矢先だった」とショックを隠せない様子だ。
同事件は当時14歳だった少年が複数の猫を殺して解体するうちに、犯行がエスカレート。ついには酒鬼薔薇聖斗を名乗って小学生5人を殺傷し、うち1人の被害者の首を学校の門の前に置くという猟奇的犯行に及んだ。
また、白昼堂々と学校に侵入し、刃物で生徒を狙った事件といえば、2001年に宅間守元死刑囚(執行)によって23人が殺傷された大阪教育大附属池田小殺傷事件にも類似する。
防犯に詳しい専門家は「犯人が教室に侵入しようとしたとき、60代の教員が体を張って侵入させなかったことが幸いした。もし、侵入を許していたら死者が出る大惨事になっていた可能性がある。犯人は教室の後ろから侵入しようとしたようだが、通常だったら教員がいない場所。期末テスト中でいつもはいない場所に教員が配置されていたことも幸いした」と、さらに大きな被害が出ていた可能性を指摘する。
この日、事件を受けて生徒たちは午後3時過ぎに教員に付き添われて集団下校。夜には緊急の保護者会が開かれた。出席した保護者は「生徒たちを守ってくれた先生には本当に感謝です」と涙した。
捜査関係者によると、男性教員は腕や腹に複数の刺し傷があり、腹部の傷は深いという。
さいたま市で切断された猫の死骸が連続して見つかった事件を受けて、最悪の事態が懸念されていたが、勇敢な教員によって多くの生徒たちが守られた。