海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)を母港とする護衛艦内で2021年に自殺した男性海士長(当時20歳)の遺族が、上官によるパワーハラスメントや長時間労働が自殺の原因として、国に約7800万円の損害賠償を求めて長崎地裁大村支部に提訴することがわかった。
昨年6月には長時間労働を理由に公務災害が認定されていた。遺族は「真相を明らかにしたい」としている。
男性は長崎県川棚町出身の西山大弥(ひろや)さん。19年4月に入隊後、同年秋に護衛艦「あけぼの」の乗組員となり、21年2月10日に艦内で自殺した。
訴状では、20年秋頃、未成年だった西山さんを含む同期数人で飲酒したことなどへの指導として、西山さんは上官から日々の反省点を記すノートを毎日書くよう指示された。同じ頃、陸上に上がるのを制限する「上陸止め」の措置も無期限で受けたとしている。
遺族側は複数の同僚の証言から、これらの指導が西山さんだけに長期間行われており、パワハラに当たると主張。死亡前日の夜には同僚の依頼で米軍基地内でファストフードを買って帰艦し、禁止行為ではないのに上官から激しく叱責(しっせき)されたとも訴えている。
海自側は昨年6月、長時間の時間外労働でうつ病を発症したとして自殺を公務災害と認定。艦長ら幹部は遺族と面会して謝罪したが、具体的な勤務時間は明らかにせず、パワハラも確認できなかったと説明した。遺族側は海自の安全配慮義務違反を主張する方針だ。
父・賢二さん(48)は読売新聞の取材に、公務災害認定の際に海自の担当者から遺族側弁護士同席の場で、上官の指導について「(西山さんに)目を付けて指導していた」と説明を受けたとし、「悲しい思いをするのは自分たちで終わりにするためにも、何が問題だったのかを明らかにしたい」と話している。
海自佐世保地方総監部はパワハラや長時間労働について、「プライバシーの観点から答えられない」としている。