東京・世田谷区長として当選3回を誇る保坂展人(のぶと)氏(67)が、公用車の使用を巡り疑念を持たれているという。また、自身の机や椅子を含め、備品の交換に1200万円という法外な額を支出しようとしていた問題も指摘されており……。
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【写真を見る】応接家具に1200万円!? 法外な額を支出しようとして問題に 東京・世田谷区長として当選3回を誇る保坂氏は、教育ジャーナリストから社民党所属の衆院議員に転身、死刑廃止や教育・福祉の問題に斬り込む“国会の質問王”として頭角を現した。物腰の柔らかさも相まって、前回選挙では次点に大差をつけ当選。4月に予定される区長選に出馬予定である。

問題は「公用車を使っていること」 とはいえ、いくらリベラルな区長でも好事魔多し。「公用車」の使い方に疑念を持たれているというのだ。世田谷区役所「そもそも、保坂区長は世田谷区に住んでいません」 そう明かすのは、地元事情に詳しい区政関係者だ。「区役所から2キロ離れた代沢にある賃貸マンションを自宅として届け出ているのですが、家族と住むのは狛江市の一軒家なんです。区長に立候補する際、世田谷に住所が無いのは公選法違反ではないですが、体裁が悪いので借りたのでしょう」 実際、保坂区長が自宅として届け出たマンションの隣近所に聞いても、「全く知らなかった」と話す声がチラホラと……。大家も、「本人に聞いてほしい」と明言を避ける始末なのだ。 先の関係者は続けてこう指摘する。「区長が居住実態と異なる家を役所に虚偽報告している可能性が高く、そこで問題となってくるのは、狛江からの通勤に公用車を使っていることだと思います」目的外使用 区の規定によれば、公用車は自宅と役所など公務を行う場所や、公務と公務が続く場合に使用できるそう。「代沢から区役所まで公用車なら10分弱ですが、狛江からは片道30~40分かかります。公用車の記録では、22年3月までの1年間で狛江と区役所の間を移動したのは178日にも及び、タクシー代に換算すれば往復数千円前後の余計な交通費がかかっている。また保坂区長は社民の福島瑞穂党首や立憲の辻元清美氏の応援演説に行く際も公用車を使った可能性が高く、自身の政治活動となれば目的外使用に該当するはずです」(同) 過去の区議会でも、保坂区長の「狛江の一軒家」が災害など危機管理の観点から問題とされ、区側は答弁で代沢にしか「防災無線」がないことを認めている。約1200万円という法外な額が 別の区政関係者によると、「区役所は建て替え工事中で備品交換が行われています。問題なのは、区長の机と椅子だけで約85万円、執務用の棚や応接チェアなど合わせて約1200万円という法外な額がかかっていること。2年前、千葉県市川市で市長室の家具購入費用に約1千万円が計上され騒動になりましたが、それよりも大きな額が動いています」 公表されている保坂区長の年収は約2千万円だから、決して安い買い物ではない。これらについて保坂区長はどう答えるか。不可解な動きが 狛江の一軒家を休日に訪ねると、夫人と思しき女性が「テレビ会議中」だと取り次ぎを断るが、保坂区長の在宅を認めたも同然だった。そこで翌朝平日に再訪したところ、午前9時ごろお迎えに現れた公用車が不可解な動きを始めたのである。 まず待機する記者とカメラマンを警戒してか、一軒家の周囲を何度もウロウロした挙句に姿を消した。それから2時間ほど経って現れた公用車は強行突破を試みる。玄関から出た保坂区長に質すと、3、4人の区職員と思しき男性が人の壁を作り、車への動線を確保する有様。保坂区長は、「(質問は)文書でお願いします」 と消え入りそうな声で去って行った。印象的なのは“警護要員”として参じた人々は公用車に乗せてもらえず、その場から徒歩で帰っていったことだろうか。区の回答は… 改めて区に尋ねてみると、〈区長就任当時の自宅は狛江市のみでした。就任後、激務であることから区内東部の代沢に私費で住居を借りています。この二ヶ所で、区内の東部と西部をカバーすることができて、効率的に利用しています〉〈通勤届については、主たる生活の本拠地として住所を世田谷区代沢とし、通勤方法は自宅から勤務庁まで公用車としております〉〈ご指摘の物品等については(中略)区長指示で購入金額の低減に向けた調査をしており(中略)大幅な見直しを進めています〉 次の区長選が控える中、有権者はどんな首長を選ぶのか。「週刊新潮」2023年2月16日号 掲載
東京・世田谷区長として当選3回を誇る保坂氏は、教育ジャーナリストから社民党所属の衆院議員に転身、死刑廃止や教育・福祉の問題に斬り込む“国会の質問王”として頭角を現した。物腰の柔らかさも相まって、前回選挙では次点に大差をつけ当選。4月に予定される区長選に出馬予定である。
とはいえ、いくらリベラルな区長でも好事魔多し。「公用車」の使い方に疑念を持たれているというのだ。
「そもそも、保坂区長は世田谷区に住んでいません」
そう明かすのは、地元事情に詳しい区政関係者だ。
「区役所から2キロ離れた代沢にある賃貸マンションを自宅として届け出ているのですが、家族と住むのは狛江市の一軒家なんです。区長に立候補する際、世田谷に住所が無いのは公選法違反ではないですが、体裁が悪いので借りたのでしょう」
実際、保坂区長が自宅として届け出たマンションの隣近所に聞いても、「全く知らなかった」と話す声がチラホラと……。大家も、「本人に聞いてほしい」と明言を避ける始末なのだ。
先の関係者は続けてこう指摘する。
「区長が居住実態と異なる家を役所に虚偽報告している可能性が高く、そこで問題となってくるのは、狛江からの通勤に公用車を使っていることだと思います」
区の規定によれば、公用車は自宅と役所など公務を行う場所や、公務と公務が続く場合に使用できるそう。
「代沢から区役所まで公用車なら10分弱ですが、狛江からは片道30~40分かかります。公用車の記録では、22年3月までの1年間で狛江と区役所の間を移動したのは178日にも及び、タクシー代に換算すれば往復数千円前後の余計な交通費がかかっている。また保坂区長は社民の福島瑞穂党首や立憲の辻元清美氏の応援演説に行く際も公用車を使った可能性が高く、自身の政治活動となれば目的外使用に該当するはずです」(同)
過去の区議会でも、保坂区長の「狛江の一軒家」が災害など危機管理の観点から問題とされ、区側は答弁で代沢にしか「防災無線」がないことを認めている。
別の区政関係者によると、
「区役所は建て替え工事中で備品交換が行われています。問題なのは、区長の机と椅子だけで約85万円、執務用の棚や応接チェアなど合わせて約1200万円という法外な額がかかっていること。2年前、千葉県市川市で市長室の家具購入費用に約1千万円が計上され騒動になりましたが、それよりも大きな額が動いています」
公表されている保坂区長の年収は約2千万円だから、決して安い買い物ではない。これらについて保坂区長はどう答えるか。
狛江の一軒家を休日に訪ねると、夫人と思しき女性が「テレビ会議中」だと取り次ぎを断るが、保坂区長の在宅を認めたも同然だった。そこで翌朝平日に再訪したところ、午前9時ごろお迎えに現れた公用車が不可解な動きを始めたのである。
まず待機する記者とカメラマンを警戒してか、一軒家の周囲を何度もウロウロした挙句に姿を消した。それから2時間ほど経って現れた公用車は強行突破を試みる。玄関から出た保坂区長に質すと、3、4人の区職員と思しき男性が人の壁を作り、車への動線を確保する有様。保坂区長は、
「(質問は)文書でお願いします」
と消え入りそうな声で去って行った。印象的なのは“警護要員”として参じた人々は公用車に乗せてもらえず、その場から徒歩で帰っていったことだろうか。
改めて区に尋ねてみると、
〈区長就任当時の自宅は狛江市のみでした。就任後、激務であることから区内東部の代沢に私費で住居を借りています。この二ヶ所で、区内の東部と西部をカバーすることができて、効率的に利用しています〉〈通勤届については、主たる生活の本拠地として住所を世田谷区代沢とし、通勤方法は自宅から勤務庁まで公用車としております〉〈ご指摘の物品等については(中略)区長指示で購入金額の低減に向けた調査をしており(中略)大幅な見直しを進めています〉
次の区長選が控える中、有権者はどんな首長を選ぶのか。
「週刊新潮」2023年2月16日号 掲載