青森県野辺地町からむつ市にかけての陸奥湾の東岸で、マイワシが約50キロにわたって打ち上げられている。
湾内では2018年と22年にもマイワシの大量漂着があり、いずれも海水温の低下が原因とみられる。専門家は「今後も大量漂着が起きる可能性があり、メカニズムの分析や打ち上げ後の対策を取る必要がある」と指摘する。
22日、野辺地町北部の有戸漁港近くの海岸では、死んだマイワシが折り重なるようにして砂浜を埋め尽くしていた。辺りには悪臭が漂う。漂着は16日に見つかり、翌17日には横浜町で、20日はさらに北のむつ市でも確認された。沖合では現在も死骸が漂い、少しずつ打ち上げられている。
野辺地町は、人家に近い2か所の海岸線計350メートルを中心に22日から回収作業を始めた。28日頃までかかるとみている。町の担当者は「今回ほどの大量漂着はこれまで見たことがない」と驚く。
また、むつ市も23日に回収を始めており、横浜町は27日に開始する予定だ。
県産業技術センター水産総合研究所(平内町)によると、マイワシが活動できる海水温の下限は6~7度だが、漂着が始まった16日の湾東側の水温は約4度。マイワシは餌の動物プランクトンを求めて湾内を回遊しているが、1月下旬の寒波以降、急激な水温低下で逃げ切れず仮死状態になり、西風によって打ち上げられた可能性があるという。
大量漂着は、18年1~2月に野辺地町からむつ市にかけて、22年2~3月には横浜町であり、この6年で3回目となる。野辺地町は18年の漂着では、今回ほどの量ではなかったため回収は行わなかったという。
湾内のマイワシの漁獲量は、08年は31トンだったが、20年は3019トンを記録。近年、増加傾向にあるが、海水温の変動などが一因とみられる。漁獲増が大量漂着につながっていると考えられるが、同様に漁獲量が多かった1970~80年代は大量漂着の記録がほとんどないという。水産総合研究所の野呂恭成・総括主幹研究専門員は「マイワシが増えた点だけでは説明がつかず、ほかに何らかの異変があるのでは」とみている。
マイワシの死骸は海岸漂着や海上漂流だけでなく、海底にも大量に沈んでいるとみられる。野呂専門員は「海の底にたまったマイワシが海洋環境や水産業にどのような影響を与えるか注視する必要がある」と話す。