「はらメディカルクリニック」で液体窒素タンクに凍結保存されている提供精子=8日、東京都渋谷区
提供精子を用いた人工授精(AID)や体外受精を実施する東京都の「はらメディカルクリニック」が昨年2月からドナーを一般募集し、1年でAIDの国内の総実施件数に相当する約2千回分の精子を確保したことが25日、同クリニックへの取材で分かった。一般募集は異例。7割の人が出自を知る権利を踏まえ、生まれてくる子どもが将来希望すれば面談や手紙などのやりとりに応じる「非匿名」提供を選択した。
AIDは70年以上の歴史があるが、ドナー情報を子どもに知らせない匿名提供が続けられてきた。超党派の議員連盟が進める生殖補助医療の法整備論議に関し「非匿名化すればドナー確保が難しくなる」と指摘されるが、今回の結果は懸念払拭の一助となりそうだ。
宮崎薫院長は「『困っている人を助けたい』などを提供の理由に挙げるドナーが多い。非匿名での提供は、遺伝的ルーツをたどりたいという子どもの気持ちに応える姿勢の表れだ」と話した。
非匿名ドナーの精子は、AIDを複数回受けても妊娠せず、より技術的に高度な顕微授精を実施する際に用いる。