親が亡き後、住んでいた家が空き家となり、その処分に困る人は少なくありません。総務省が行った土地統計調査によると、2018(平成30)年の時点で、全国の空き家数は848万戸以上に上ります。
【漫画】実家は一目見ることもかなわず、取り壊されてしまいました(全編を読む)空き家のまま放置すると、固定資産税の問題や、ご近所トラブルにも発展しかねません。それらを防ぐため、Aさん(70代)は遠く離れた田舎の実家を処分することにしました。しかし田舎の人たちと、都会に住む自分との間に、考えの相違があり、思いがけないトラブルに遭遇したといいます。

田舎までの距離600km!直接手続きするのは難しい都内に住むAさんの実家は東北にあり、帰省するのには交通機関を使って8時間ほどかかります。すでに親は20年ほど前に亡くなり、残された家はAさんが娘夫婦と一緒に別荘として使っていました。しかしコロナの影響もあり、ここ数年は帰っていません。老朽化も進んでいたため、年内に取り壊すことを決めたそうです。しかし、片道8時間以上かかる実家に帰るのは難しく、帰省しての手続きは無理でした。そこで頼りになったのが、田舎の実家の近所に住むBさんでした。Aさんの実家付近は過疎化が進み、ここ数年で取り壊す家が増えていました。そのため、田舎のBさんは「どの業者に頼めばよいか」「どう手続きをすればよいか」熟知していたそうです。昔からの知り合いということもあり、AさんはBさんの知り合いに業者を紹介してもらい、手続きを進めました。業者が立ち会う際も、Bさんに鍵を送って見積もりを出したそうです。残された実家には目ぼしいものはなく、持ち帰るものも何もない。そう判断したAさんはBさんに「何も要らない、すべて処分で構わない」そう伝えました。「何も要らない」そう伝えたのは自分だけど…しかし、ある日Aさんは「自分が生まれ育った家、取り壊す前に一度だけ帰省して写真を撮ろう」と思い立ち、鍵を渡したBさんに連絡を取り、帰省することを伝えました。すると「こっちに来ても構わないが、家の中の様子は変わっているよ」との返事が。よく聞くと「家の中のものすべて要らないと言われたから、集落の人たちや親戚中に話して、家の中のものをひっくり返して必要なものをもらってきた。土足で上がっている人もいて、部屋の中は泥だらけ。正直足の踏み場もない」と言われたそうです。Aさんが大事にしてきた仏壇や、桐のタンスもすべてひっくり返され、部屋の中は泥棒が入ったような状態な上、「取り壊す家」と聞きつけた知らない人たちが勝手に家に上がり込み、自分の家のように過ごしている人もいたようなのです。実家を一目見ることもかなわず、取り壊しに自分の大切な実家に土足で入られ、思い出が詰まった実家をいいように使われてしまったAさん。確かに不用品だらけの家だけど、土足で入って知らない人に何もかも持っていかれるのはいい気分ではありません。ショックからBさんに怒りをぶつけようとしましたが、「すべて要らない」「鍵を渡すからお願い」という行動を取ったのは自分です。結局Aさんはその後コロナウイルスに感染してしまい、田舎へ帰省することはできませんでした。家はそのまま業者により解体され、更地となりました。Aさんいわく「実家を一目見ることができなかったのは悔やまれるが、土足で踏み荒らされた実家を見るのはもっとショックだったかもしれない」と話します。 ◇ ◇後に知ったことですが、Aさんの実家がある地域では、「解体する家」があれば、近所中の人が勝手に入って必要なものを持っていくのは当たり前の光景だそうです。普段から鍵もかけず、野菜や魚を知り合いの家の中に置いていくのも日常茶飯事。人との付き合いが深い田舎だからこそ、「他人の家でも不要なものがあれば上がって持ち帰ってもいい」という考えがあるのかもしれません。今回のことでAさんは「すべて人に任せるのはよくないし、田舎によっては田舎ならではの『独自の考え』があることがわかった」と話していました。“田舎の付き合い”はいい面もあれば悪い面もある…そう考えさせられたエピソードです。(まいどなニュース特約・長岡 杏果)
空き家のまま放置すると、固定資産税の問題や、ご近所トラブルにも発展しかねません。それらを防ぐため、Aさん(70代)は遠く離れた田舎の実家を処分することにしました。しかし田舎の人たちと、都会に住む自分との間に、考えの相違があり、思いがけないトラブルに遭遇したといいます。
都内に住むAさんの実家は東北にあり、帰省するのには交通機関を使って8時間ほどかかります。すでに親は20年ほど前に亡くなり、残された家はAさんが娘夫婦と一緒に別荘として使っていました。
しかしコロナの影響もあり、ここ数年は帰っていません。老朽化も進んでいたため、年内に取り壊すことを決めたそうです。
しかし、片道8時間以上かかる実家に帰るのは難しく、帰省しての手続きは無理でした。そこで頼りになったのが、田舎の実家の近所に住むBさんでした。
Aさんの実家付近は過疎化が進み、ここ数年で取り壊す家が増えていました。そのため、田舎のBさんは「どの業者に頼めばよいか」「どう手続きをすればよいか」熟知していたそうです。
昔からの知り合いということもあり、AさんはBさんの知り合いに業者を紹介してもらい、手続きを進めました。業者が立ち会う際も、Bさんに鍵を送って見積もりを出したそうです。残された実家には目ぼしいものはなく、持ち帰るものも何もない。そう判断したAさんはBさんに「何も要らない、すべて処分で構わない」そう伝えました。
しかし、ある日Aさんは「自分が生まれ育った家、取り壊す前に一度だけ帰省して写真を撮ろう」と思い立ち、鍵を渡したBさんに連絡を取り、帰省することを伝えました。
すると「こっちに来ても構わないが、家の中の様子は変わっているよ」との返事が。よく聞くと「家の中のものすべて要らないと言われたから、集落の人たちや親戚中に話して、家の中のものをひっくり返して必要なものをもらってきた。土足で上がっている人もいて、部屋の中は泥だらけ。正直足の踏み場もない」と言われたそうです。
Aさんが大事にしてきた仏壇や、桐のタンスもすべてひっくり返され、部屋の中は泥棒が入ったような状態な上、「取り壊す家」と聞きつけた知らない人たちが勝手に家に上がり込み、自分の家のように過ごしている人もいたようなのです。
自分の大切な実家に土足で入られ、思い出が詰まった実家をいいように使われてしまったAさん。確かに不用品だらけの家だけど、土足で入って知らない人に何もかも持っていかれるのはいい気分ではありません。ショックからBさんに怒りをぶつけようとしましたが、「すべて要らない」「鍵を渡すからお願い」という行動を取ったのは自分です。
結局Aさんはその後コロナウイルスに感染してしまい、田舎へ帰省することはできませんでした。家はそのまま業者により解体され、更地となりました。Aさんいわく「実家を一目見ることができなかったのは悔やまれるが、土足で踏み荒らされた実家を見るのはもっとショックだったかもしれない」と話します。
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後に知ったことですが、Aさんの実家がある地域では、「解体する家」があれば、近所中の人が勝手に入って必要なものを持っていくのは当たり前の光景だそうです。普段から鍵もかけず、野菜や魚を知り合いの家の中に置いていくのも日常茶飯事。
人との付き合いが深い田舎だからこそ、「他人の家でも不要なものがあれば上がって持ち帰ってもいい」という考えがあるのかもしれません。
今回のことでAさんは「すべて人に任せるのはよくないし、田舎によっては田舎ならではの『独自の考え』があることがわかった」と話していました。“田舎の付き合い”はいい面もあれば悪い面もある…そう考えさせられたエピソードです。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)