筑波大学陸上競技場(茨城県つくば市天王台)が、トラック舗装の傷みなどで日本陸上競技連盟(東京)から公認陸上競技場の認定を更新できない可能性が出ている。
市内の中高生らの競技会場にもなっているが、認定外になれば競技記録は非公認となるため、今後の開催も危ぶまれている。市内唯一の公認陸上競技場を維持しようと、筑波大は3000万円以上を目標に改修費用を募っている。(松岡妙佳)
同競技場は、県内に八つある公認陸上競技場の一つで、1973年に造られた。普段は筑波大陸上競技部の練習や体育の授業で使用しているが、「筑波大学陸上競技会」が年間約7回開かれ、市内の中高生や社会人ら毎年延べ約3000~5000人が出場している。競技会は過去に日本記録が誕生したこともあり、昨年7月の陸上世界選手権女子やり投げで日本女子初の銅メダルに輝いた北口榛花(はるか)選手(24)も同年5月に出場した。
◇ 大学によると、5年に1度行われる認定更新に向け、2021年に日本陸連が実施した調査で、トラックの傷みやレーン幅のラインの引き直しといった舗装、芝・砂の整備などに関する30項目の不適格を指摘された。
同大は、指摘の都度、改修を行っており、トラックは昨年3月末に完了させたが、走り幅跳びや棒高跳びなどのフィールド種目で使用するレーン幅の引き直しなど15項目は、予算の関係で未着手のままだ。認定を得るためには、3月末までに改修工事を完了させる必要があるが、整備費用など全てを含めると3333万円かかる見通しで、「大学の予算だけでは改修費を確保できない」(筑波大)とする。
◇ 公認陸上競技場の認定を更新できなかった場合、同競技場での競技記録は公式記録として認められない。近隣で一番近い公認競技場は石岡市となり、同大陸上競技部で学年代表を務める池田涼香さん(22)は「つくばで競技会を開催できなくなり、市内の中高生は地元で記録を出す場がなくなってしまう」と懸念する。
市は公認競技場の建設を計画しているが、完成は2027年度になる予定だ。
◇ そこで、大学側は昨年11月、改修に向けて寄付を募ることを決めた。自主財源確保のために創設した「筑波大学基金」を受け皿とし、1口1000円から受け付けている。11日現在で約1400万円の寄付が集まった。目標の3000万円以上に達するまで続ける予定で、大学関係者は「OB、OGだけでなく、多くの人に協力してもらいたい」と呼びかけている。
◆公認陸上競技場=開催可能な競技会の規模によって、第1種から第4種までに区分され、それぞれレーン数や収容人数、サブトラックの有無などの要件が定められている。筑波大陸上競技場は、地方大会などを開催できる設備を備えた第3種に区分される。