転職が当たり前になった現代。業務内容や職場環境など、人により理由はさまざまだが、せっかく大手企業に新卒で就職したにもかかわらず、退職してしまう人も後を絶たない。傍から見れば「うらやましい」のだが、大手だからこその苦労や苦悩があるのだろうか。本記事では、新卒で大手企業に入社し、短期間で退職したことで後悔しているというエピソードを紹介する。 ◆“しぶしぶ”入社した結果… 繰り上げ内定で就職が決まった田中さとるさん(仮名・20代)。大学4年生の1月、卒業間近で初めて内定をもらえた企業だった。 しかし、希望ではない勤務体系ということもあり、心のどこかに前向きになれない自分がいたという。 「曖昧な気持ちのまま、しぶしぶ就職することにしました。緊張と不安な気持ちを抱えて会社に行くと、そこには新幹線の座席を2席分必要とするような大柄な上司Aがいました」 Aは、日々他人の悪口を吐き、職場のなかでは敬遠されるような存在だったそうだ。田中さんは直属の部下であったため、Aとはほぼ共に行動しなければならなかった。 ◆心がボロボロ、入社3か月で退職 「5月中旬には少しずつ業務には慣れていました。でも、Aに対するストレスは日々増大し、このままでは心が壊れてしまうと感じたんです」 Aは、重要な会議に出席せず、入社間もない田中さんに「お前行け」と命令し、田中さんがひとりで会議に出席させられたこともあったという。 「後で聞いたのですが、Aは上司Bのことが嫌いだから『一緒の空間にいたくない』という理由で私に押しつけたみたいです」 会議に出席しなかったことに対してAは「俺は悪くない」と言い始め、田中さんは「あきれ果てた」のだとか。 「もう退職するしかない!」 そう決意した田中さんは、退職することを会社に伝えた。 「震える手で退職届を握りしめ、6月末で退職することにしました。そして、7月からはのんびりとした生活をスタートさせました」
◆学歴は関係ないことに絶望 「現実に絶望しました。唯一面接できた企業からも、『すぐに退職した人の発言には信憑性がない』と言われ不採用でした」 大学のネームバリューが通用しないことに落胆し、2か月ほどひきこもり期間が続いた。そんなとき、鈴木さんはとある記事に興味を惹かれる。 「『派遣社員から正社員へ』という記事を読んで、派遣社員という選択肢を知りました。すぐに派遣社員のサイトに登録し、大手企業の子会社で働くことになったんです」 ただし、世間体を気にする鈴木さんは「派遣社員」であることを、親友や両親にすら伝えることができないそうだ。 「派遣社員として生きることになって約1年が経った現在でも、身内には言えません。合コンで職場を聞かれたときも正社員であるかのように振る舞っています」 ◆定時退社がバレないように途中下車して歩いて帰宅 「派遣社員だから毎日定時で退社するのですが、正社員でないことがバレたくないあまり、3駅分の距離を電車に乗らず、歩いて時間をつぶしています。そして、残業してきたかのように帰宅をしています」 また、派遣社員はボーナスが出ない。鈴木さんはボーナスの話になると「うちの会社は正社員でもボーナスもらえないんだよね」と、本当は派遣社員だからもらえていないことを隠し続けているという。 「とにかく生きている心地がしない。新卒で入った銀行で我慢しておけばよかった」と後悔している。
<取材・文/chimi86>
―[すぐに辞めた新入社員]―