経費で買ったクルーザーでパーティーを楽しむ鴇田氏
豪華なクルーザーの上でシャンパングラスを片手にご満悦な元社長と、その隣にぴったりと寄り添う有名女優ーー。これだけならお金持ちの優雅な休日パーティーだが、これらすべてが会社の経費で賄われていたとしたら…。
元社長の“悪行”が次々と明るみになった会社とは、プロパンガスやケーブルテレビなどを手がける静岡県静岡市にある名門企業・TOKAIホールディングスだ。
主役は、鴇田勝彦氏。元通産省の官僚で、天下り先であるザ・トーカイの社長に、2005年に就任。2009年に持ち株会社化してからは、TOKAIホールディングスの社長に就任した。以来10年以上にわたって社長の座に君臨し続けたが、9月に開かれた取締役会で突如解任されたのだ。
「社長が経費を不正に利用しているという内部告発があったのです。そして12月15日、社外の弁護士らで構成された第三者委員会が、衝撃の調査結果を発表しました。182ページにわたる報告書には、微に入り細を穿つ社長の“蛮行”が記されていたのです」(経済部記者)
ゴルフの練習、マッサージ、電子コミックの購入など、ありとあらゆる個人的“趣味”に会社の経費が使われ、果ては会社のゲストハウスで出張コンパニオンとの混浴が繰り返されていた。
「会社が長野県・蓼科に所有するゲストハウスで、滞在時に鴇田氏は出張コンパニオンを依頼したことが40回あり、経費は約700万円かかっていました。コンパニオンは混浴する際、湯浴みを着ていましたが、あまりに下品すぎる接待に、社内でも疑問視する声が出たそうです」(社会部記者)
そして冒頭の“豪遊”だ。これは、女優の田中律子が2018年8月26日、自身のインスタグラムに、
《御前崎が強風で撮影出来ず、三保の松原の湾の中でクルーザーで遊びました撮影はなし 飲む前にSUPで遊び、ランチしながらお酒もいただき、幸せな時間》
という文章とともに投稿したものだ。同乗者には、静岡県副知事だった難波喬司氏(当時)も確認できた。
「田中さんは、TOKAIホールディングス傘下のケーブルテレビで『田中律子のもっと旅するSUP』という番組に出演しているんです。番組の撮影が中止になったから、遊んだということでしょう。しかし、出演者と遊ぶのに、会社のお金で買ったばかりのクルーザーを使うなんて信じられないですよね。中型の豪華なクルーザーで、1億円以上する可能性もあります」(経済部記者)
このクルーザーは、2018年7月にTOKKAIホールディングスが取得した「CEILIDH号」だ。ちなみに、この購入費用も経費扱いで、前出の報告書で“調査対象”となっている。
「鴇田氏を解任したほかの役員たちは、『クルーザーが鴇田氏なしで利用されることはほとんどない』『会社にとって必要性が明らかでないところにお金を使っている』と疑問に感じ、今回の解任劇が起きる要因のひとつになりました」(同前)
クルーザーは、社内稟議を経て取得されており、乗船者の中には業務関連性を確認できない者も含まれていたものの、「私的に利用していたとまではいえない」と前述の調査では結論されている。
「しかし、TOKAIホールディングスの主要事業はLPガスです。接待用とはいえ、わざわざ豪華なクルーザーを購入し、維持する必要があるとは到底思えませんよね」(同前)
田中律子に、当時の状況を確認するため質問状を送ったが、期日までに返答はなかった。一方、当日同乗していた難波氏に電話で確認したところ、
「鴇田さんは、海洋レジャーを盛り上げることに熱心な方でした。私も、静岡県の海洋レジャーの振興を進めていたので、以前から交流がありました。当日は、鴇田さんにご招待いただいて、参加したのだと思います」
と語った。
時代錯誤の“混浴好き社長”が勧める海洋レジャーなんて、流行りそうもない。