11月30日、参院予算委員会で答弁する杉田水脈総務政務官 写真・時事通信
11月30日の参院予算委員会で、立憲民主党の塩村文夏氏が、杉田水脈総務政務官(衆院議員)の過去の言動について質す場面があった。参院予算委員会はNHKで生中継され、岸田文雄首相が出席するなか、約40分にわたって、杉田氏のこれまでの「ヘイトスピーチ」まがいの言動に焦点が当たることとなった。
以下、塩村氏が上げた杉田氏の過去の言動と、杉田氏の答弁を列挙してみよう。
・2022年10月20日、性暴力被害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんに対して、社会通念上、許される限度を超えた侮辱をおこなったとして、東京高裁が杉田氏に55万円の損害賠償の支払いを命じた。伊藤さんに対して浴びせられていた「枕営業の失敗」「コネを作ろうとホテルに行ったのに、うまくいかなかったとわかると虚言を吐き始めた」などの誹謗中傷に、杉田氏が自身のTwitterで「いいね」を大量に押していた。
杉田氏「11月2日に最高裁判所に対して上告等の申し立てをおこなったところでございます」
・伊藤詩織さんを取り上げた英国BBCの番組(2018年6月)のインタビューで、「彼女の場合は明らかに女としての落ち度があった」と発言。2020年の自民党内の会議で、内閣府が性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを全国で増設する方針を説明したのに対して、「女性はいくらでも嘘をつけますから」と、性暴力被害の虚偽申告があるような発言をした。
杉田氏「性暴力被害者に対して申し上げたことではまったくございません。『女性はいくらでも嘘をつけますから』という発言に、女性を蔑視する意図もまったくございませんでした」「BBCのインタビューを受けたのはいまから4年前でありまして、当時は刑事裁判におきまして不起訴、検察(審査会の議決)のほうも不起訴相当となっておりまして、当時は性暴力というのはございませんので、性暴力被害者というのも存在しないと思っております」「一般論として申し上げますと、それぞれのケースによってどちらに落ち度があるということは申し上げられないというふうに思っております」
・2014年10月15日、内閣委員会で「女性差別というものは存在しない」と発言。
杉田氏「私も国連などの女性差別撤廃委員会など、いろいろな経験をしております。私が申しあげたかったのは『命に関わるひどい女性差別は存在しない』という趣旨でございます」
・2014年10月31日の本会議で「女性が輝けなくなったのは冷戦後、男女共同参画の名のもと、伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等を目指してきたことに起因している。男女平等は絶対に実現しない、反道徳の妄想なのだ。男女共同参画基本法という悪法を禁止し、それに関わる役職・部署を全廃することが、女性が輝く日本を取り戻す第一歩だ」と発言。
杉田氏「当時、現在とは異なる政党(杉田氏はもともと旧日本維新の会所属で、当時は次世代の党)に所属しておりまして、私がその党を代表して、内閣提出の法案について質問した際に発言したものでございます。現在は政府の一員として内閣の方針に従って、性別を問わず暮らしやすい社会の実現のために尽力してまいりたいと思っております」
・2016年、保育所の待機児童問題などに関して、産経新聞社のニュースサイトの自身のコラムで、「子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしているわけです」「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです」と投稿。
杉田氏「一般論として保育園の数には限りがあり、受け入れられる子供の数にも限りがあるので、各地方公共団体に入所選考基準がある、と述べた一環でございます。この寄稿において、日本の保育事業とコミンテルンを結びつけて言及したことにつきましては、事実として確認できることではないと思いますので、撤回させていただきたいと思います。今後の対応については検討させていただきたいと思います」
・かつて猛批判を浴び、雑誌の廃刊につながった『新潮45』2018年8月号の「『LGBT』支援の度が過ぎる」という寄稿とは別に、『新潮45』2016年11月号に、「『LGBT』支援なんかいらない」というタイトルで寄稿。「国や自治体が少子化対策や子育て支援に予算をつけるのは、『生産性』を重視しているからです。生産性のあるものとないものを同列に扱うのは無理があります」「このままいくと日本は『被害者(弱者)ビジネス』に骨の髄までしゃぶられてしまいます」と主張。
杉田氏「つたない表現によって結果として不快と感じたり、傷つかれたかたがいることは重く受け止めています。すでに多様性を尊重するのは当然と認識していること、当事者の方々の人権を否定するつもりも偏見をもって差別する意図もないこと、LGBTの方々への理解増進はもとより、差別やいじめのない社会に向けて努力してまいることなどの見解を当時から表明しておりまして、現在もいま申し上げた通りの認識であります。
(骨の髄までしゃぶられると主張したことについては)物事の順序に、自助・公助・共助という形でしっかりやっていきたい、という思いも書いたときにはあったと思います。補助金などを執行するときには、有効に活用していただきたいという思いで書かせていただきました。
(謝罪・撤回については)4年前の寄稿でございます。つたない表現を使ったことは反省しております。ただ、差別する意図はまったく無かったことも当時から申し上げているとおりでございます」(※編集部注・塩村氏は2016年の寄稿について質しているが、杉田氏は2018年の寄稿について答弁した模様)
・2016年、スイスのジュネーブで開催され、杉田氏自身も出席した国連女性差別撤廃委員会で、参加したアイヌ民族や在日コリアンの女性について、自身のブログで「国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」「とにかく、同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなるくらい気持ち悪く、国連を出る頃には身体に変調をきたすほどでした。とにかく、左翼の気持ち悪さ、恐ろしさを再確認した今回のジュネーブでした。ハッキリ言います。彼らは、存在だけで日本国の恥晒しです」と主張。自身のTwitterで拡散。
杉田氏「はい。事実ではございます。ただ、このとき私はまだ国会議員ではなく一般人でございました。そして先ほど(塩村)委員が読み上げなかった部分にですね。100人ぐらいの方々がズラッと私を取り囲んで、至近距離で罵声を浴びせたわけです。当時、一般人だった私がこのような感想を持つのはしかたがなかったと思っています」
以上が、参院予算委員会で取り上げられた杉田氏の言動だ。「コミンテルン」発言だけは撤回したものの、そのほかの発言に関して、撤回・謝罪はなかった。
塩村氏の質問の冒頭、杉田氏を総務政務官に任命した責任について問われた岸田首相は、こう答弁した。
「任命責任については、この人事は適材適所ということであります。総務大臣政務官であるならば、行政管理・行政評価・統計・恩給、こうした仕事に関わってもらう。そうした職務を果たす能力をもっているかどうか、こうした観点から人事をおこなったということであります」
塩村氏は杉田氏への質問の最後で、杉田氏の人権感覚に疑問を呈したうえで、岸田首相に更迭を求めたが。岸田首相はこう答弁し、更迭を拒否した。
「岸田内閣の方針については多様性を認め、包摂性のある社会を目指さなければいけない。この方針はこれからも変わりません。内閣の一員である以上、この方針に従ってもらわなければならない。内閣の一員になる以前の言動については、政治家自身が責任をもって、政治の信頼のために説明責任を果たし、適切に対応をしてもらわなければならないと思っております」
NHKで生中継されるなか、杉田氏の過去の言動に焦点が当たった反響は大きく、SNSではこんな声が上がっている。
《SNSでは有名だがNHKでこれ程取り上げたのは初めて。多くの人は知らないことが明らかになる》
《NHK中継がない最近の総務委員会等では人権問題に関して質疑者に対して半笑いで馬鹿にするかのような態度で答弁してた 今日、テレビが入ると流石に神妙な顔をしてたけど、答弁内容は相変わらずだし、態度を変えるのもいかがなものかと》
岸田首相が杉田氏の総務政務官での起用を「適材適所」として、更迭を否定したことにも批判の声が上がった。
《人権を蹂躙する人間を「適材適所」とするのが岸田首相です》
《杉田水脈政務官は「適材適所」だと答弁した岸田首相。国会で頻繁に悪用される逃げ口上だが、こんな使い方は紛れもない“日本語の破壊”である》
《これほどまでの人物を、適材適所として政務官にするとは、岸田首相の認識がいかにおかしいかも同時に理解しました》
《適材適所だという岸田首相にはほとほと呆れ果てた》
杉田氏の過去のどの言動を見て、岸田首相は「適材適所」だと思ったのか。