千葉県八千代市で、小学校の敷地にゴミを投げ入れたのち、5回にわたり“爆破予告”の電話をかけて、授業を中断させるなどした疑いで、59歳の男が逮捕された。男は、この小学校のすぐ近くに住み、近隣でも超有名な“トラブルメーカー”とされる存在だった。
自称・自営業の阿部一貴容疑者(59)は、今年9月30日、八千代市の勝田台小学校の体育館に、爆弾をしかけたなどとウソの110番通報を繰り返し、小学校の授業を中断させるなどした「威力業務妨害」と「偽計業務妨害」の疑いで今月6日逮捕された。
阿部容疑者は、この小学校のすぐ近くに住んでいて、過去には、町内の自治会の幹部も務めていた男だった。そんな男がなぜ、子ども達や地域を不安にさせるような犯行に及んだのだろうか。
事件の経緯を振り返ろう。阿部容疑者は、事件当日の午後1時半過ぎ、小学校の敷地内に、ゴミの入ったビニール袋を投げ入れた。当時、学校では掃除の時間だった。子ども達や職員がこれを目撃。学校から、千葉県警八千代署に対して、「近所に住む人がゴミ袋を振り回して敷地内に投げ入れた」と届け出がなされた。
そして、このおよそ30分後、男の声で、「勝田台小学校の体育館に爆弾をしかけた」という内容の110番通報が千葉県警に入る。直ちに八千代署から30人ほどの警察官が学校に急行。子ども達の授業は中断された。
警察官が、学校中を捜索したが、不審物は見つからず。この間も、市内の公衆電話から、時間や場所を変えて、合計5回の“爆破予告”通報が入ったという。
八千代署は、事件の翌日、目撃情報などから、小学校の敷地にゴミを投げ入れた「不法投棄」の疑いで阿部容疑者を逮捕。取り調べには容疑を否認したという。もちろん、八千代署では、この段階で、その後の“爆破予告”についても、阿部容疑者による犯行とみていた。
八千代署では、別件の窃盗容疑などで、阿部容疑者の逮捕を重ねながら、“爆破予告”容疑の裏付けを進めた。犯行に使われた公衆電話付近の防犯カメラ映像を精査したところ、小学校に電話がかかってきた時間帯に、阿部容疑者の姿が映っていたことも判明。八千代署は、今月6日、”爆破予告”事件での逮捕に踏み切ったのだった。
阿部容疑者の自宅を訪れると、庭には自転車や植木などをはじめ、空の酒瓶などのゴミが、至る所に、無造作に散らばっている様子が、目に飛び込んできた。周囲の人も、顔をしかめる「ゴミ屋敷」。整理がなされた住宅街の中で、そこだけ異様な空間が広がっていた。
また、近隣住人によると、その奇抜な格好や言動により、地元では「超有名人」だったという。自称ミュージシャンとして、ギターケースを背に市内中を闊歩。公園などでよく酒を飲みながらギターを奏でていたという。
一方で、阿部容疑者は、“トラブルメーカー”としても、付近に知れ渡っていた。近隣住民などと、ささいななことで、もめ事やトラブルを起こすのは日常茶飯事。それは近くの小学校や子ども達にも向けられていた。
小学校の周りを自主的に掃除したり、”奇抜な旗”で、子ども達の通学の交通整理をするなどの一方で、急に子ども達に「くそガキ」などと叫んだり、酒を飲んで公園で遊んでいる子ども達に絡むこともあったそうだ。
そんな中、事件の少し前から、小学校が管理するプランターの花が、何者かに勝手に引っこ抜かれ、別の花に植え替えられるという事案が相次いでいた。もちろん、これも、阿部容疑者の仕業だった。
”花のコーディネーター”を自称する阿部容疑者が、「自分が花をコーディネートする」と主張して、勝手に、花を植え替えていたそうだ。さすがに学校側は「やめて欲しい」などと要請。ところが、事件当日の朝にも、花が植え替えられていて、阿部容疑者を注意したばかりだったという。
調べに対して、「覚えていない」などと、”爆破予告”容疑を否認している阿部容疑者。肝心の動機も説明せず、多くを語らずの状態だという。八千代署は、学校とのトラブルの末に、腹を立てて、犯行に及んだとみて調べている。
ところで、“爆破予告”容疑での逮捕の翌々日、実は、既に起訴されていた”ゴミ投げ入れ”事件の裁判が始まった。長い髪をなびかせて法廷に現れた阿部容疑者は、「今はその事件については言えません」と、堂々と、認否を留保したのだった。
(フジテレビ社会部・千葉県警担当 風巻隼郎)