横浜市が70歳以上の高齢者を対象に発行する「敬老パス」が10月で紙製からICカードに変更され、その利用方法を巡って混乱が生じている。「ICカード」ではあるものの、JRが発行する「Suica(スイカ)」などの交通機関用のICカードとは異なり、列車の自動改札機で使用できないことが一因だという。一体どういうことなのか。
【写真】「この路線がなぜ?」 混雑率全国2位の私鉄 ICカードの運用が始まってから4日後の5日夕。市営地下鉄関内駅(中区)の改札から数メートル離れた場所に「敬老パス」と大きく書かれたパネルを持った男性が立っていた。市がシルバー人材センターに依頼した「案内役」だ。そばにはパス専用の読み取り機が置いてある。改札の周囲では、この読み取り機を探すようなそぶりを見せたり、駅員にパスの利用方法をたずねたりする高齢者が複数いた。

「駅員がいる改札の窓口になぜ読み取り機を設置しないのか。効率の悪いやり方だ」。読み取り機を見つけられずにいた横浜市南区の男性(71)は憤った。 敬老パスは所得に応じて3200円~2万500円の負担をする(障害者は無料)ことで1年間、市営の地下鉄とバス、市内を走る民営バスを利用できる定額利用サービス(サブスク)だ。JRや私鉄各線は対象外。9月末で紙製カードが廃止され、10月からICカードに切り替えられた。 切り替え後は、まず専用機器にカードを読み取らせたうえで、駅員に実際にかざして改札を通過する必要がある。市によると、新パスを自動改札機にタッチして通過しようとする利用者が後を絶たないほか、新パスと交通ICカードが一緒に入った財布などで自動改札機にタッチし、交通ICカードから誤って料金が引き落とされるトラブルも起きた。市には利用方法に関する問い合わせが相次いでいるという。 そもそも市がICカード化を進めた目的は、敬老パスの利用実績を正確に把握し、市から交通事業者に支払う負担額の「適正化」を図ることだった。利用者の利便性の向上を狙ったものではなかったのだ。 市交通局の担当者は悩ましげな表情を浮かべる。「新たなパスを『ICカード』と呼んでいるため、利用者が交通ICカードと混同してしまった。自動改札機で使えるようにするのは技術的に難しく、車椅子の利用者がいることも考慮すると、改札のすぐそばに読み取り機を設置することは混雑や安全面の観点から難しい」と語る。 市は今後もホームページなどで、新パスが自動改札機で使用できないことなどの注意喚起を続け、3カ月程度は利用者が多い市営地下鉄の20駅に案内役を配置する方針だ。担当者は「なるべく早く慣れていただけるように周知を徹底していきたい」と話した。【池田直】
ICカードの運用が始まってから4日後の5日夕。市営地下鉄関内駅(中区)の改札から数メートル離れた場所に「敬老パス」と大きく書かれたパネルを持った男性が立っていた。市がシルバー人材センターに依頼した「案内役」だ。そばにはパス専用の読み取り機が置いてある。改札の周囲では、この読み取り機を探すようなそぶりを見せたり、駅員にパスの利用方法をたずねたりする高齢者が複数いた。
「駅員がいる改札の窓口になぜ読み取り機を設置しないのか。効率の悪いやり方だ」。読み取り機を見つけられずにいた横浜市南区の男性(71)は憤った。
敬老パスは所得に応じて3200円~2万500円の負担をする(障害者は無料)ことで1年間、市営の地下鉄とバス、市内を走る民営バスを利用できる定額利用サービス(サブスク)だ。JRや私鉄各線は対象外。9月末で紙製カードが廃止され、10月からICカードに切り替えられた。
切り替え後は、まず専用機器にカードを読み取らせたうえで、駅員に実際にかざして改札を通過する必要がある。市によると、新パスを自動改札機にタッチして通過しようとする利用者が後を絶たないほか、新パスと交通ICカードが一緒に入った財布などで自動改札機にタッチし、交通ICカードから誤って料金が引き落とされるトラブルも起きた。市には利用方法に関する問い合わせが相次いでいるという。
そもそも市がICカード化を進めた目的は、敬老パスの利用実績を正確に把握し、市から交通事業者に支払う負担額の「適正化」を図ることだった。利用者の利便性の向上を狙ったものではなかったのだ。
市交通局の担当者は悩ましげな表情を浮かべる。「新たなパスを『ICカード』と呼んでいるため、利用者が交通ICカードと混同してしまった。自動改札機で使えるようにするのは技術的に難しく、車椅子の利用者がいることも考慮すると、改札のすぐそばに読み取り機を設置することは混雑や安全面の観点から難しい」と語る。
市は今後もホームページなどで、新パスが自動改札機で使用できないことなどの注意喚起を続け、3カ月程度は利用者が多い市営地下鉄の20駅に案内役を配置する方針だ。担当者は「なるべく早く慣れていただけるように周知を徹底していきたい」と話した。【池田直】