「保護者会に出席したら、大学入試に備えて、部活や生徒会で頑張った内容を記録しておくことが重要と言われました。どうして?」と首をかしげるのは高校生の保護者。
【画像】「推薦・総合型選抜」が過半数超え!大学入試の昔と今 昭和生まれにとって、大学入試とは、ペーパーテストでいかに高得点を取るかの一発勝負だった。ところがその状況が大きく変わっている。大学入試で増える推薦・選抜入試 いま、大学入試では、学校成績や課外活動の実績をもとに推薦を受ける学校推薦型選抜(推薦入試)、本人の学ぶ意欲や適性を小論文や面接でじっくり探る総合型選抜(旧AO入試)が増えているのだ。それは東京大学をはじめとする国公立大学も例外ではない。

「こうした試験は一般入試よりも早く、夏から秋にかけて実施されます。少しでも早く学生を確保したい大学側の思惑もあり、年々増加していました。 そして、昨年ついに推薦入試+総合型選抜の割合が50%を超えたのです。今後も増えていくことが予想され、受験生親子にとって無視できない状況になっています」 そう話すのは、大学ジャーナリストの石渡嶺司さん。 冒頭で紹介したように、高校側としては推薦入試や総合型選抜になる可能性を考えて、勉強以外のアピールポイントを考えておきなさいということなのだろう。 推薦入試などを受ける場合、どんな準備が必要なのだろうか。巷では、「推薦で入った学生は学力が低い」イメージもあるようだが……。「確かに2010年ごろまでは、早めに学生を確保しようと焦り、ゆるい内容の推薦入試を実施する大学が少なからずありました。その結果、大学の授業についていけなくなり問題に。“推薦入学は就職に不利”説も流れるほどになりました。ただ、それを問題視した国の指導や、ここ数年で都市部の入試がランクを問わず激化したことなどにより、推薦入試は難化しています」(石渡さん、以下同)大学入試が難化している2つの理由 都市部の大学入試が難化しているのには主に2つの理由がある。 1つ目は国が「地方創生」のために地方に若者を定着させようと、2016年に都市部の私立大学に定員以上の合格者を出す「水増し合格」の制限をしたこと。 2つ目は2019年に学部の新設を規制したことが挙げられる。結果的に都市部のあらゆる私立大学で合格者数が軒並み絞り込まれ、「どの大学も難しくなった!」と受験生が焦ったわけ。そして、少しでも早く合格を確保しようと推薦入試や総合型選抜を目指す受験生が増えたのだ。 では、推薦入試や総合型選抜が具体的にどう難しくなっているのか、石渡さんに説明してもらった。「まず、問題文や作文の字数が多くなっています。中堅大学でさえ“1800字の文章を2つ読んで小論文を書く”といった課題を出しています」 書く内容も、知識があるのは当たり前という前提で、考えさせる問題が増えている。「例えば、従来なら“ザビエルが来日した目的を50字で書きなさい”というレベルだったのが、“あなたがザビエルなら日本での布教のために何をするのか、根拠付きで400字で書きなさい”というふうに、文章力に加えて創造的思考力も求められるように」 そして、冒頭で紹介したように、推薦入試や総合型選抜では、課外活動の内容も加点の対象となる。課外活動とは、授業以外の部活、生徒会活動、、研究、留学やボランティア活動などのこと。特に難関大の推薦入試では、「科学オリンピックに出場した」など、全国レベル、国際レベルの成果や実績をあげていることが求められる。 そもそも、こうした大学の試験に出願するには、高校の学校成績も一定レベルをクリアしていなくてはならない。「条件となる評定平均(高校3年間の成績の平均。マックスが5)は、中堅大学でも、評定平均が3・4以上。早稲田大学クラスになると3・9以上が出願の条件です」大学入試でも「親ガチャ」勝負に 推薦入試や総合型選抜を突破するには、「高校入学直後からの準備が必要」と石渡さん。「通常。大学側は高1から高3の1学期までの成績を見ますから、高校に合格したからといって浮かれてはいられません。日々の授業でめいっぱい勉強を頑張りつつ、さらに課外活動でも成果を出さないといけないわけです」 課外活動なんて本人に任せておけばいいし、親の出る幕はない……と昭和世代は思ってしまうが、それは間違い。実は、“課外活動を重視する選抜方式が増えると、裕福な家の子が有利になり、格差が広がる”という指摘があるそう。どういうこと?「見栄えのいい経験は、お金で買えるからです。推薦や総合型選抜が主流のアメリカではすでにそういった動きがあり、社会貢献活動をさせてくれるプログラムを業者が販売していたりします。日本でもそういう入試対策を指導する専門の予備校があります」 つまり、裕福な家庭は親に高いお金を出してもらって社会貢献活動をし、難関大学に入学することができてしまい、よりお金のない家庭との格差が拡大する可能性があるのだ。 貧しくても、家で問題集をこつこつ解いて難関大学へ……という逆転ストーリーを狙うしかないのか?「さらにいえば、中高一貫の進学校のほうが、一般入試でも推薦入試などでも有利な傾向があります。高校入試がないことで無駄のないカリキュラムを組めて、多くの一貫校が高2で高3までの教科書を習い終えます。高3で、大学の選抜方式に合わせた対策をする時間がたっぷりとれるわけです」 勉強だけでなく、中には中学時代からひとつのテーマについて研究させ、論文を書かせたりする「海外で社会貢献活動」といったプログラムを用意している学校も……! 当然、こうした中高一貫校に通わせるには、小学校からの塾通い、大学の選抜方式対策が整っている私立の場合は中学からの高い学費、さらには課外活動のための費用がかかってしまう。結局のところ、これも経済力のある親かどうかで人生が決まる「親ガチャ」問題ということ?「ただ、日本ではアメリカほどは格差問題が出にくい環境にあります」と石渡さん。「日本の場合、各学校の部活動が充実していて、しかもその活動内容を入試でも評価してもらえるという救いがあります。一部の難関大やスポーツ推薦などは別として、“強豪校でレギュラー”“全国大会に出場”といった結果よりは、“自分が部活動で何を学んだか”説明できることが求められる傾向にあります」 面接や作文対策で、大学で学びたいことの入門書や、関連する記事を読んでおくことも重要だそう。「意外とこれができていない学生が多い。これらをクリアしておくと、学ぶ意欲が高いと加点評価される可能性が高いですよ」 中でも、石渡さんがおすすめしているのが、オープンキャンパスへの参加だ。「私立大学を中心に、模擬面接や小論文講座を無料で実施していて、参加しておけば本番で役立ちます。面接に自信がない受験生は、教員や在学生による無料相談コーナーを利用するのもおすすめですよ。悩みの解決や大人と話す訓練になります」 このように方法はいくらでもある。受験生のみなさん、諦めないで!教えてくれたのは石渡嶺司さん大学ジャーナリスト。’03年より大学や教育問題、就職活動などの評論を発表。著書に『大学の学科図鑑』(SBクリエイティブ)など多数。<取材・文/鷺島鈴香>
昭和生まれにとって、大学入試とは、ペーパーテストでいかに高得点を取るかの一発勝負だった。ところがその状況が大きく変わっている。
いま、大学入試では、学校成績や課外活動の実績をもとに推薦を受ける学校推薦型選抜(推薦入試)、本人の学ぶ意欲や適性を小論文や面接でじっくり探る総合型選抜(旧AO入試)が増えているのだ。それは東京大学をはじめとする国公立大学も例外ではない。
「こうした試験は一般入試よりも早く、夏から秋にかけて実施されます。少しでも早く学生を確保したい大学側の思惑もあり、年々増加していました。
そして、昨年ついに推薦入試+総合型選抜の割合が50%を超えたのです。今後も増えていくことが予想され、受験生親子にとって無視できない状況になっています」
そう話すのは、大学ジャーナリストの石渡嶺司さん。
冒頭で紹介したように、高校側としては推薦入試や総合型選抜になる可能性を考えて、勉強以外のアピールポイントを考えておきなさいということなのだろう。
推薦入試などを受ける場合、どんな準備が必要なのだろうか。巷では、「推薦で入った学生は学力が低い」イメージもあるようだが……。
「確かに2010年ごろまでは、早めに学生を確保しようと焦り、ゆるい内容の推薦入試を実施する大学が少なからずありました。その結果、大学の授業についていけなくなり問題に。“推薦入学は就職に不利”説も流れるほどになりました。ただ、それを問題視した国の指導や、ここ数年で都市部の入試がランクを問わず激化したことなどにより、推薦入試は難化しています」(石渡さん、以下同)
都市部の大学入試が難化しているのには主に2つの理由がある。
1つ目は国が「地方創生」のために地方に若者を定着させようと、2016年に都市部の私立大学に定員以上の合格者を出す「水増し合格」の制限をしたこと。
2つ目は2019年に学部の新設を規制したことが挙げられる。結果的に都市部のあらゆる私立大学で合格者数が軒並み絞り込まれ、「どの大学も難しくなった!」と受験生が焦ったわけ。そして、少しでも早く合格を確保しようと推薦入試や総合型選抜を目指す受験生が増えたのだ。
では、推薦入試や総合型選抜が具体的にどう難しくなっているのか、石渡さんに説明してもらった。
「まず、問題文や作文の字数が多くなっています。中堅大学でさえ“1800字の文章を2つ読んで小論文を書く”といった課題を出しています」
書く内容も、知識があるのは当たり前という前提で、考えさせる問題が増えている。
「例えば、従来なら“ザビエルが来日した目的を50字で書きなさい”というレベルだったのが、“あなたがザビエルなら日本での布教のために何をするのか、根拠付きで400字で書きなさい”というふうに、文章力に加えて創造的思考力も求められるように」
そして、冒頭で紹介したように、推薦入試や総合型選抜では、課外活動の内容も加点の対象となる。課外活動とは、授業以外の部活、生徒会活動、、研究、留学やボランティア活動などのこと。特に難関大の推薦入試では、「科学オリンピックに出場した」など、全国レベル、国際レベルの成果や実績をあげていることが求められる。
そもそも、こうした大学の試験に出願するには、高校の学校成績も一定レベルをクリアしていなくてはならない。
「条件となる評定平均(高校3年間の成績の平均。マックスが5)は、中堅大学でも、評定平均が3・4以上。早稲田大学クラスになると3・9以上が出願の条件です」
推薦入試や総合型選抜を突破するには、「高校入学直後からの準備が必要」と石渡さん。
「通常。大学側は高1から高3の1学期までの成績を見ますから、高校に合格したからといって浮かれてはいられません。日々の授業でめいっぱい勉強を頑張りつつ、さらに課外活動でも成果を出さないといけないわけです」
課外活動なんて本人に任せておけばいいし、親の出る幕はない……と昭和世代は思ってしまうが、それは間違い。実は、“課外活動を重視する選抜方式が増えると、裕福な家の子が有利になり、格差が広がる”という指摘があるそう。どういうこと?
「見栄えのいい経験は、お金で買えるからです。推薦や総合型選抜が主流のアメリカではすでにそういった動きがあり、社会貢献活動をさせてくれるプログラムを業者が販売していたりします。日本でもそういう入試対策を指導する専門の予備校があります」
つまり、裕福な家庭は親に高いお金を出してもらって社会貢献活動をし、難関大学に入学することができてしまい、よりお金のない家庭との格差が拡大する可能性があるのだ。
貧しくても、家で問題集をこつこつ解いて難関大学へ……という逆転ストーリーを狙うしかないのか?
「さらにいえば、中高一貫の進学校のほうが、一般入試でも推薦入試などでも有利な傾向があります。高校入試がないことで無駄のないカリキュラムを組めて、多くの一貫校が高2で高3までの教科書を習い終えます。高3で、大学の選抜方式に合わせた対策をする時間がたっぷりとれるわけです」
勉強だけでなく、中には中学時代からひとつのテーマについて研究させ、論文を書かせたりする「海外で社会貢献活動」といったプログラムを用意している学校も……!
当然、こうした中高一貫校に通わせるには、小学校からの塾通い、大学の選抜方式対策が整っている私立の場合は中学からの高い学費、さらには課外活動のための費用がかかってしまう。結局のところ、これも経済力のある親かどうかで人生が決まる「親ガチャ」問題ということ?
「ただ、日本ではアメリカほどは格差問題が出にくい環境にあります」と石渡さん。
「日本の場合、各学校の部活動が充実していて、しかもその活動内容を入試でも評価してもらえるという救いがあります。一部の難関大やスポーツ推薦などは別として、“強豪校でレギュラー”“全国大会に出場”といった結果よりは、“自分が部活動で何を学んだか”説明できることが求められる傾向にあります」
面接や作文対策で、大学で学びたいことの入門書や、関連する記事を読んでおくことも重要だそう。
「意外とこれができていない学生が多い。これらをクリアしておくと、学ぶ意欲が高いと加点評価される可能性が高いですよ」
中でも、石渡さんがおすすめしているのが、オープンキャンパスへの参加だ。
「私立大学を中心に、模擬面接や小論文講座を無料で実施していて、参加しておけば本番で役立ちます。面接に自信がない受験生は、教員や在学生による無料相談コーナーを利用するのもおすすめですよ。悩みの解決や大人と話す訓練になります」
このように方法はいくらでもある。受験生のみなさん、諦めないで!
<取材・文/鷺島鈴香>