「民意って何ですか!?」
沖縄に移住して13年になるが、選挙のたびにこう思わずにはいられない。
今回の沖縄県知事選挙は、岸田総理が「関係を絶つ」と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との癒着を根絶する発言してから初めての大型選挙。さらに地方選挙も同日に行われ、来春の統一地方選挙に弾みをつける意味でも、自民は是が非でもと躍起になっていたはずだ。
Photo by GettyImages
4年前と同じ構図の“オール沖縄”の玉城デニー(現職)対自民推薦の佐喜真淳との一騎打ち。焦点となったのは、辺野古新基地の是非。前回の知事選では辺野古新基地への焦点をぼやかした戦い方をしていた自民が容認を示したことで、対立構造の明瞭化が注目された選挙でもある。
しかし、若い世代にとってはどっちらけの選挙だった。
保守の佐喜真は宜野湾市長時代、普天間飛行場の一部を返還させて事業化させた市道11号線の開通や、返還が実現した西普天間住宅跡地に琉球大学医学部・大学病院の移転を中心とする「沖縄健康医療拠点」を整備するなど、保守のエースとして希望の星だった。
「4年前の知事選からずっと今まで市町村を回って地道に活動してきたのをみんな見ている。そんな頑張っている姿を無にできないと思い、本人は出たくなかったんだろうけど、頼み込んで出馬してもらったんだ」(自民県連関係者)それが、旧統一教会や関連団体UPF(天宙平和連合)のイベント参加や、台湾で行われた“合同結婚式”出席の過去が露見し、完全にミソをつけた。若年層は強いリーダーを求めるが…現職の玉城デニーは、有識者会議前の「ゼレンスキー発言」やコロナ禍で自粛を要請していた2021年GW中に家族でバーベキューをツイッターで投稿するなど、抜けてるというか、やらかす知事の印象が強い。おまけに、4年前の知事選で掲げた公約291件のうち8件しか完了していないのに、287件を推進中として「実現率98.6%」とチラシに堂々と謳う。琉球新報の討論会においてこのことを追求されると「公約を達成率で表すのは難しい。公約を実現し、取り組んでいると説明したほうが県民にわかりやすく、率として98.6%と説明している」と、余計にわかりにくい弁明をしている。Photo by GettyImages現職だからこそ「実績」がシビアに評価されるべきなのに、これでは単なる誤魔化しだと思われても仕方がない。さすがの琉球新報もファクトチェックとして記事で言及した。保守革新関係なく強いリーダーを求めている20代、30代の若年層は、辟易どころか呆れてものも言えない。県内のメディアに対し強い憤りを感じているのが、7月の参議院選挙でわずか2888票届かず辛酸を舐めた保守系の古謝玄太(38歳)。ちなみに、新基地建設事業が始まった2014年以降、全県1区で争う参議院選挙や知事選にて自民候補者で辺野古移設「容認」を明確に掲げたのは、古謝が初めてだった。 「選挙日の3週間前に地元紙による座談会をやったときに、翌日の一面に新基地容認って書かれました。私の主張の普天間飛行場の早期撤去は触れず、相手は普天間飛行場の撤去と辺野古新基地反対と書いてある。これでは、知らない人が見たら普天間関係なく基地作りに賛成する人になってしまいます」実際に見てみると、沖縄の現状を知らない人からしたら対立構造が容易に推測できるような記事作りだ。いくら中面でしっかり書かれているからといって一面での記事の影響力は半端ない。「どういう状況が彼らの望む形かが見えない」古謝はさらに続ける。「選挙が終わって、記者の座談会記事で“落下傘候補”と書かれたんです。落下傘候補とは、一般的には、その土地に地縁・血縁の無い立候補者を示します。沖縄生まれで高校卒業まで地元にいて、地縁も血縁もあります。今後本土で働いて帰ってきた人はすべからく“落下傘候補”と言われてもおかしくありません。また、これまで保守系候補の戦略は新基地に対し賛否を明示せずに焦点をぼやかす姿勢が目立っていたと言われてましたが、そもそも相手側のほうが曖昧な戦略だなとずっと思ってました。古謝玄太氏(筆者撮影)今年は復帰50年ということで、屋良建議書に込められた“基地のない平和な沖縄”についてどうあるべきなのかが取り上げられてます。米軍基地はいらないけど、自衛隊もいらないのか、どうやって平和を守るのかという彼らのあるべき姿が示されないんです。基地も武器も持たない、外交だけで話し合いをやるべきだ、と言ったとしても、ひとつの立場としてなので、いいと思うんです。立場を明確にして議論したいんですけど、それを問うと『今の日米安全保障はこうこうなんでおかしいんだ』とか言ってぼやかしてくる。凄く曖昧だなあと感じました。今がダメだってことは言いますが、現実路線としてどういう状況が彼らの望む形かが見えない」メディアといい、革新系といい、反対反対と大きく謳うが、荒唐無稽ではない論理で話す土壌がここまで来て、まだできていないというのか。7月の参院選を見ると、革新が27万4235票に対し保守が27万1347票。もはや基地反対が民意とはいえない結果だ。それでもメディアは“民意が示された”と堂々と報じる。ミレニアム世代が絶望した「選挙の裏側」選挙の結果で、ワンイシューに対し賛成反対を計れるものではないのが信条の古謝は語った。「逆に、よく民意が示されるって言えるなぁと思います。なんで誰も突っ込まないんだと。『辺野古容認はどう影響したと思いますか?』という質問もしょっちゅう聞かれました」Photo by GettyImages沖縄に移住して気付いたのは、年々若者たちの意識が確実に変わってきていること。特に1980年から90年前半に生まれたミレニアム世代(20代前半から30代後半)が世の中を席巻したくて、うずうずしているのがわかる。彼らはデジタルネイティブであり、ITリテラシーが高い。また金融危機や格差社会など厳しい社会情勢にも直面しているため、従来の世代と比較しても個を重視し、多様性を受け入れる素養も持っている。 4年前の選挙でデニー選対として活動していた喜屋武聖二氏(27歳)が言う。「あのときの選挙は、20代前後の若者たちが団結してデニー選対の青年部みたいのを作って活動したんですけど、今から考えると散々でした。ローラー作戦で地域ごとに一軒一軒訪れて挨拶するんですけど、集合場所に来るって言ってたデニー選対本部の人がいないんですよ。結局、若手だけでやったんですけど、事務所に帰ると大人たちは酒盛りしてました。終始そんな感じで、絶対にこんな大人になるのだけはやめようと良い反面教師になりました」4年前は自分たちの手で政治を変えようと、大学生が中心となってSNSを駆使するなどしてデニー旋風を巻き起こした。それなのに、まるで前回がなかったかのように、若い子たちの積極的選挙活動が完全に消えた。 内地の人間を喜ばさないことが目的に音楽活動をやっている比嘉美穂(34歳)さんは基地問題についてこう持論を述べる。「生まれる前から当たり前のように基地がある私たちの世代は、辺野古新基地と言っても、もともとはキャンプ・シュワブがあるし、普天間返還除去するのなら致し方ないという人も多いと思う。ただ声を大にして賛成の声を上げにくいのは確かです。基地がない那覇住民と宜野湾や名護に住んでいる人との温度差はものすごくあります。正直メディアの言うことも信じられないし、保守に票を入れるとか革新に票を入れるとかでなく、しっかりと仕事をする人を選びたいだけ」Photo by GettyImagesマスメディアは権力に対するチェック機関であるはずなのに、沖縄地元メディアはどうしても偏向報道になりがちな側面がある。基地反対が正義であるという論調をメディアが扇動している節はあり、賛成派が声を出しにくい雰囲気になっているのは事実。とある地元新聞社記者から「賛成派の意見を拾うことは、内地(本土)の人間を喜ばすことだから書かない」ときっぱり言われたことがある。ここまでくると、理論や理屈じゃなく、感情論の武装だ。誰かを喜ばすことではなく、真の声を届けることがメディアの姿勢ではないのか。敵は一体誰なのか。沖縄に住んでいるとわからなくなる……。自らが自由に発信する能力を持つ若い世代にとって、メディアの権威はとうに失墜しているといえよう。彼らは、もう誰にも頼らず独自の力で邁進して行っている。その沖縄の若い世代の旗手が、古謝玄太なのだ。 古謝が真剣な眼差しで言った。「軍隊も基地も武器もない平和な世の中を誰もが望んでいます。私もそうです。でも現実的には自衛をしっかりやっていかなくてはいけない一方で、普天間をなんとかするために辺野古容認しますという説明をさせてもらっています。相手側のある主張では、辺野古の新基地を諦めれば、普天間を返還させてもらえると。普通に考えてありえないんですけど、それができるのなら早くやれってことですので」ちなみに、古謝は地元新聞社に3回抗議文を出したが、まだ何も回答はないという。
「4年前の知事選からずっと今まで市町村を回って地道に活動してきたのをみんな見ている。そんな頑張っている姿を無にできないと思い、本人は出たくなかったんだろうけど、頼み込んで出馬してもらったんだ」(自民県連関係者)
それが、旧統一教会や関連団体UPF(天宙平和連合)のイベント参加や、台湾で行われた“合同結婚式”出席の過去が露見し、完全にミソをつけた。
現職の玉城デニーは、有識者会議前の「ゼレンスキー発言」やコロナ禍で自粛を要請していた2021年GW中に家族でバーベキューをツイッターで投稿するなど、抜けてるというか、やらかす知事の印象が強い。
おまけに、4年前の知事選で掲げた公約291件のうち8件しか完了していないのに、287件を推進中として「実現率98.6%」とチラシに堂々と謳う。琉球新報の討論会においてこのことを追求されると「公約を達成率で表すのは難しい。公約を実現し、取り組んでいると説明したほうが県民にわかりやすく、率として98.6%と説明している」と、余計にわかりにくい弁明をしている。
Photo by GettyImages
現職だからこそ「実績」がシビアに評価されるべきなのに、これでは単なる誤魔化しだと思われても仕方がない。さすがの琉球新報もファクトチェックとして記事で言及した。
保守革新関係なく強いリーダーを求めている20代、30代の若年層は、辟易どころか呆れてものも言えない。
県内のメディアに対し強い憤りを感じているのが、7月の参議院選挙でわずか2888票届かず辛酸を舐めた保守系の古謝玄太(38歳)。ちなみに、新基地建設事業が始まった2014年以降、全県1区で争う参議院選挙や知事選にて自民候補者で辺野古移設「容認」を明確に掲げたのは、古謝が初めてだった。
「選挙日の3週間前に地元紙による座談会をやったときに、翌日の一面に新基地容認って書かれました。私の主張の普天間飛行場の早期撤去は触れず、相手は普天間飛行場の撤去と辺野古新基地反対と書いてある。これでは、知らない人が見たら普天間関係なく基地作りに賛成する人になってしまいます」実際に見てみると、沖縄の現状を知らない人からしたら対立構造が容易に推測できるような記事作りだ。いくら中面でしっかり書かれているからといって一面での記事の影響力は半端ない。「どういう状況が彼らの望む形かが見えない」古謝はさらに続ける。「選挙が終わって、記者の座談会記事で“落下傘候補”と書かれたんです。落下傘候補とは、一般的には、その土地に地縁・血縁の無い立候補者を示します。沖縄生まれで高校卒業まで地元にいて、地縁も血縁もあります。今後本土で働いて帰ってきた人はすべからく“落下傘候補”と言われてもおかしくありません。また、これまで保守系候補の戦略は新基地に対し賛否を明示せずに焦点をぼやかす姿勢が目立っていたと言われてましたが、そもそも相手側のほうが曖昧な戦略だなとずっと思ってました。古謝玄太氏(筆者撮影)今年は復帰50年ということで、屋良建議書に込められた“基地のない平和な沖縄”についてどうあるべきなのかが取り上げられてます。米軍基地はいらないけど、自衛隊もいらないのか、どうやって平和を守るのかという彼らのあるべき姿が示されないんです。基地も武器も持たない、外交だけで話し合いをやるべきだ、と言ったとしても、ひとつの立場としてなので、いいと思うんです。立場を明確にして議論したいんですけど、それを問うと『今の日米安全保障はこうこうなんでおかしいんだ』とか言ってぼやかしてくる。凄く曖昧だなあと感じました。今がダメだってことは言いますが、現実路線としてどういう状況が彼らの望む形かが見えない」メディアといい、革新系といい、反対反対と大きく謳うが、荒唐無稽ではない論理で話す土壌がここまで来て、まだできていないというのか。7月の参院選を見ると、革新が27万4235票に対し保守が27万1347票。もはや基地反対が民意とはいえない結果だ。それでもメディアは“民意が示された”と堂々と報じる。ミレニアム世代が絶望した「選挙の裏側」選挙の結果で、ワンイシューに対し賛成反対を計れるものではないのが信条の古謝は語った。「逆に、よく民意が示されるって言えるなぁと思います。なんで誰も突っ込まないんだと。『辺野古容認はどう影響したと思いますか?』という質問もしょっちゅう聞かれました」Photo by GettyImages沖縄に移住して気付いたのは、年々若者たちの意識が確実に変わってきていること。特に1980年から90年前半に生まれたミレニアム世代(20代前半から30代後半)が世の中を席巻したくて、うずうずしているのがわかる。彼らはデジタルネイティブであり、ITリテラシーが高い。また金融危機や格差社会など厳しい社会情勢にも直面しているため、従来の世代と比較しても個を重視し、多様性を受け入れる素養も持っている。 4年前の選挙でデニー選対として活動していた喜屋武聖二氏(27歳)が言う。「あのときの選挙は、20代前後の若者たちが団結してデニー選対の青年部みたいのを作って活動したんですけど、今から考えると散々でした。ローラー作戦で地域ごとに一軒一軒訪れて挨拶するんですけど、集合場所に来るって言ってたデニー選対本部の人がいないんですよ。結局、若手だけでやったんですけど、事務所に帰ると大人たちは酒盛りしてました。終始そんな感じで、絶対にこんな大人になるのだけはやめようと良い反面教師になりました」4年前は自分たちの手で政治を変えようと、大学生が中心となってSNSを駆使するなどしてデニー旋風を巻き起こした。それなのに、まるで前回がなかったかのように、若い子たちの積極的選挙活動が完全に消えた。 内地の人間を喜ばさないことが目的に音楽活動をやっている比嘉美穂(34歳)さんは基地問題についてこう持論を述べる。「生まれる前から当たり前のように基地がある私たちの世代は、辺野古新基地と言っても、もともとはキャンプ・シュワブがあるし、普天間返還除去するのなら致し方ないという人も多いと思う。ただ声を大にして賛成の声を上げにくいのは確かです。基地がない那覇住民と宜野湾や名護に住んでいる人との温度差はものすごくあります。正直メディアの言うことも信じられないし、保守に票を入れるとか革新に票を入れるとかでなく、しっかりと仕事をする人を選びたいだけ」Photo by GettyImagesマスメディアは権力に対するチェック機関であるはずなのに、沖縄地元メディアはどうしても偏向報道になりがちな側面がある。基地反対が正義であるという論調をメディアが扇動している節はあり、賛成派が声を出しにくい雰囲気になっているのは事実。とある地元新聞社記者から「賛成派の意見を拾うことは、内地(本土)の人間を喜ばすことだから書かない」ときっぱり言われたことがある。ここまでくると、理論や理屈じゃなく、感情論の武装だ。誰かを喜ばすことではなく、真の声を届けることがメディアの姿勢ではないのか。敵は一体誰なのか。沖縄に住んでいるとわからなくなる……。自らが自由に発信する能力を持つ若い世代にとって、メディアの権威はとうに失墜しているといえよう。彼らは、もう誰にも頼らず独自の力で邁進して行っている。その沖縄の若い世代の旗手が、古謝玄太なのだ。 古謝が真剣な眼差しで言った。「軍隊も基地も武器もない平和な世の中を誰もが望んでいます。私もそうです。でも現実的には自衛をしっかりやっていかなくてはいけない一方で、普天間をなんとかするために辺野古容認しますという説明をさせてもらっています。相手側のある主張では、辺野古の新基地を諦めれば、普天間を返還させてもらえると。普通に考えてありえないんですけど、それができるのなら早くやれってことですので」ちなみに、古謝は地元新聞社に3回抗議文を出したが、まだ何も回答はないという。
「選挙日の3週間前に地元紙による座談会をやったときに、翌日の一面に新基地容認って書かれました。私の主張の普天間飛行場の早期撤去は触れず、相手は普天間飛行場の撤去と辺野古新基地反対と書いてある。これでは、知らない人が見たら普天間関係なく基地作りに賛成する人になってしまいます」
実際に見てみると、沖縄の現状を知らない人からしたら対立構造が容易に推測できるような記事作りだ。いくら中面でしっかり書かれているからといって一面での記事の影響力は半端ない。
古謝はさらに続ける。
「選挙が終わって、記者の座談会記事で“落下傘候補”と書かれたんです。落下傘候補とは、一般的には、その土地に地縁・血縁の無い立候補者を示します。沖縄生まれで高校卒業まで地元にいて、地縁も血縁もあります。今後本土で働いて帰ってきた人はすべからく“落下傘候補”と言われてもおかしくありません。
また、これまで保守系候補の戦略は新基地に対し賛否を明示せずに焦点をぼやかす姿勢が目立っていたと言われてましたが、そもそも相手側のほうが曖昧な戦略だなとずっと思ってました。
古謝玄太氏(筆者撮影)
今年は復帰50年ということで、屋良建議書に込められた“基地のない平和な沖縄”についてどうあるべきなのかが取り上げられてます。米軍基地はいらないけど、自衛隊もいらないのか、どうやって平和を守るのかという彼らのあるべき姿が示されないんです。
基地も武器も持たない、外交だけで話し合いをやるべきだ、と言ったとしても、ひとつの立場としてなので、いいと思うんです。立場を明確にして議論したいんですけど、それを問うと『今の日米安全保障はこうこうなんでおかしいんだ』とか言ってぼやかしてくる。
凄く曖昧だなあと感じました。今がダメだってことは言いますが、現実路線としてどういう状況が彼らの望む形かが見えない」
メディアといい、革新系といい、反対反対と大きく謳うが、荒唐無稽ではない論理で話す土壌がここまで来て、まだできていないというのか。7月の参院選を見ると、革新が27万4235票に対し保守が27万1347票。もはや基地反対が民意とはいえない結果だ。それでもメディアは“民意が示された”と堂々と報じる。
選挙の結果で、ワンイシューに対し賛成反対を計れるものではないのが信条の古謝は語った。
「逆に、よく民意が示されるって言えるなぁと思います。なんで誰も突っ込まないんだと。『辺野古容認はどう影響したと思いますか?』という質問もしょっちゅう聞かれました」
Photo by GettyImages
沖縄に移住して気付いたのは、年々若者たちの意識が確実に変わってきていること。特に1980年から90年前半に生まれたミレニアム世代(20代前半から30代後半)が世の中を席巻したくて、うずうずしているのがわかる。
彼らはデジタルネイティブであり、ITリテラシーが高い。また金融危機や格差社会など厳しい社会情勢にも直面しているため、従来の世代と比較しても個を重視し、多様性を受け入れる素養も持っている。
4年前の選挙でデニー選対として活動していた喜屋武聖二氏(27歳)が言う。「あのときの選挙は、20代前後の若者たちが団結してデニー選対の青年部みたいのを作って活動したんですけど、今から考えると散々でした。ローラー作戦で地域ごとに一軒一軒訪れて挨拶するんですけど、集合場所に来るって言ってたデニー選対本部の人がいないんですよ。結局、若手だけでやったんですけど、事務所に帰ると大人たちは酒盛りしてました。終始そんな感じで、絶対にこんな大人になるのだけはやめようと良い反面教師になりました」4年前は自分たちの手で政治を変えようと、大学生が中心となってSNSを駆使するなどしてデニー旋風を巻き起こした。それなのに、まるで前回がなかったかのように、若い子たちの積極的選挙活動が完全に消えた。 内地の人間を喜ばさないことが目的に音楽活動をやっている比嘉美穂(34歳)さんは基地問題についてこう持論を述べる。「生まれる前から当たり前のように基地がある私たちの世代は、辺野古新基地と言っても、もともとはキャンプ・シュワブがあるし、普天間返還除去するのなら致し方ないという人も多いと思う。ただ声を大にして賛成の声を上げにくいのは確かです。基地がない那覇住民と宜野湾や名護に住んでいる人との温度差はものすごくあります。正直メディアの言うことも信じられないし、保守に票を入れるとか革新に票を入れるとかでなく、しっかりと仕事をする人を選びたいだけ」Photo by GettyImagesマスメディアは権力に対するチェック機関であるはずなのに、沖縄地元メディアはどうしても偏向報道になりがちな側面がある。基地反対が正義であるという論調をメディアが扇動している節はあり、賛成派が声を出しにくい雰囲気になっているのは事実。とある地元新聞社記者から「賛成派の意見を拾うことは、内地(本土)の人間を喜ばすことだから書かない」ときっぱり言われたことがある。ここまでくると、理論や理屈じゃなく、感情論の武装だ。誰かを喜ばすことではなく、真の声を届けることがメディアの姿勢ではないのか。敵は一体誰なのか。沖縄に住んでいるとわからなくなる……。自らが自由に発信する能力を持つ若い世代にとって、メディアの権威はとうに失墜しているといえよう。彼らは、もう誰にも頼らず独自の力で邁進して行っている。その沖縄の若い世代の旗手が、古謝玄太なのだ。 古謝が真剣な眼差しで言った。「軍隊も基地も武器もない平和な世の中を誰もが望んでいます。私もそうです。でも現実的には自衛をしっかりやっていかなくてはいけない一方で、普天間をなんとかするために辺野古容認しますという説明をさせてもらっています。相手側のある主張では、辺野古の新基地を諦めれば、普天間を返還させてもらえると。普通に考えてありえないんですけど、それができるのなら早くやれってことですので」ちなみに、古謝は地元新聞社に3回抗議文を出したが、まだ何も回答はないという。
4年前の選挙でデニー選対として活動していた喜屋武聖二氏(27歳)が言う。
「あのときの選挙は、20代前後の若者たちが団結してデニー選対の青年部みたいのを作って活動したんですけど、今から考えると散々でした。
ローラー作戦で地域ごとに一軒一軒訪れて挨拶するんですけど、集合場所に来るって言ってたデニー選対本部の人がいないんですよ。結局、若手だけでやったんですけど、事務所に帰ると大人たちは酒盛りしてました。終始そんな感じで、絶対にこんな大人になるのだけはやめようと良い反面教師になりました」
4年前は自分たちの手で政治を変えようと、大学生が中心となってSNSを駆使するなどしてデニー旋風を巻き起こした。それなのに、まるで前回がなかったかのように、若い子たちの積極的選挙活動が完全に消えた。
音楽活動をやっている比嘉美穂(34歳)さんは基地問題についてこう持論を述べる。
「生まれる前から当たり前のように基地がある私たちの世代は、辺野古新基地と言っても、もともとはキャンプ・シュワブがあるし、普天間返還除去するのなら致し方ないという人も多いと思う。
ただ声を大にして賛成の声を上げにくいのは確かです。基地がない那覇住民と宜野湾や名護に住んでいる人との温度差はものすごくあります。正直メディアの言うことも信じられないし、保守に票を入れるとか革新に票を入れるとかでなく、しっかりと仕事をする人を選びたいだけ」
Photo by GettyImages
マスメディアは権力に対するチェック機関であるはずなのに、沖縄地元メディアはどうしても偏向報道になりがちな側面がある。基地反対が正義であるという論調をメディアが扇動している節はあり、賛成派が声を出しにくい雰囲気になっているのは事実。
とある地元新聞社記者から「賛成派の意見を拾うことは、内地(本土)の人間を喜ばすことだから書かない」ときっぱり言われたことがある。ここまでくると、理論や理屈じゃなく、感情論の武装だ。
誰かを喜ばすことではなく、真の声を届けることがメディアの姿勢ではないのか。敵は一体誰なのか。沖縄に住んでいるとわからなくなる……。
自らが自由に発信する能力を持つ若い世代にとって、メディアの権威はとうに失墜しているといえよう。彼らは、もう誰にも頼らず独自の力で邁進して行っている。その沖縄の若い世代の旗手が、古謝玄太なのだ。
古謝が真剣な眼差しで言った。「軍隊も基地も武器もない平和な世の中を誰もが望んでいます。私もそうです。でも現実的には自衛をしっかりやっていかなくてはいけない一方で、普天間をなんとかするために辺野古容認しますという説明をさせてもらっています。相手側のある主張では、辺野古の新基地を諦めれば、普天間を返還させてもらえると。普通に考えてありえないんですけど、それができるのなら早くやれってことですので」ちなみに、古謝は地元新聞社に3回抗議文を出したが、まだ何も回答はないという。
古謝が真剣な眼差しで言った。
「軍隊も基地も武器もない平和な世の中を誰もが望んでいます。私もそうです。
でも現実的には自衛をしっかりやっていかなくてはいけない一方で、普天間をなんとかするために辺野古容認しますという説明をさせてもらっています。相手側のある主張では、辺野古の新基地を諦めれば、普天間を返還させてもらえると。普通に考えてありえないんですけど、それができるのなら早くやれってことですので」
ちなみに、古謝は地元新聞社に3回抗議文を出したが、まだ何も回答はないという。