新型コロナウイルスの流行「第7波」で死者が連日200人を超え、23日に343人と過去最多を更新した。
ワクチン接種の進展で肺炎の悪化が防がれ、重症者は600人台と第6波の半数程度にとどまる一方、全身状態の悪化で「衰弱死」する高齢者が多いことが要因とみられる。国内流入初期に肺炎症状を基準に設定された重症度分類がコロナ死の実態と乖離(かいり)しているとして、分類を見直し、死者の抑制につなげるべきとの声が高まっている。
重症者、第6波より少なく
第7波の死者は7月下旬に1日100人台になり右肩上がりに増加。8月15日以降は200人超が続き、23日の343人はこれまで最多だった2月22日の327人を上回った。8月の月間死者数も初めて5千人を超えた。厚生労働省のデータでは、7月上旬以降で年代が判明した死者の95%が60代以上となっている。
一方で、重症者数は30人台だった6月下旬から徐々に増加。8月10日に600人を超えて高止まりの状態が続くが、第7波と同じオミクロン株が主流だった第6波は2月下旬に1500人に及んだ。
発熱や喉の痛みで食事取れず
今回の流行で重症者が抑えられている背景について、厚労省にコロナ対策を助言する専門家組織の脇田隆字座長は今月24日の会合後、「高齢者のワクチン接種の進み具合が影響している」と指摘した。65歳以上の3回目接種は第7波前の6月中に9割が済ませ、5月下旬に始まった4回目接種も60歳以上で5割まで進んでいる。死者に関しては、持病の種類など十分な分析ができていないとしつつも「体力が落ちている高齢者にとっては感染によるダメージをきっかけに死亡に至るという現象が起きている」と述べた。
埼玉医科大総合医療センターの岡秀昭教授によると、第7波では爆発的な感染増加の割にウイルス性肺炎の悪化症例が少ない。高齢者で深刻なのは感染による発熱や喉の痛みで、食事が取れず水分補給ができなくなることだ。結果、持病の悪化や心臓・腎臓の機能低下が顕著になり、体力が奪われて衰弱し、死に直結するケースが多いという。
肺炎なければ定義上「軽症」
厚労省は令和2年に作成した「診療の手引き」で、コロナ重症の定義を「集中治療室(ICU)に入室、もしくは人工呼吸器が必要」と提示。その後の改訂版でもこの定義は変更されていない。手引きでは「死因に呼吸不全が多い」ことを理由にしている。
重症の定義が実態に即していないとの指摘に対し、脇田氏は「臨床医に検討してもらい、議論したい」とし、死者を減らす方策として感染機会の削減やワクチン接種の他に治療薬を挙げる。岡氏は「手引きに従うと、衰弱して動けなくても肺炎症状がなければ定義上は『軽症』だ。『重症』を経ずに亡くなる高齢者が多く、状況を的確に把握し、死者の抑制につなげられる重症度分類に改める必要がある」と要望。治療薬についても「どれを選べばよいか分かりにくい。最も有効な米ファイザー社のパキロビッドを処方しやすくする必要がある」と述べた。(川畑仁志)