自民党は党総裁選挙の投開票を10月4日に行い、高市早苗氏が第29代総裁に選出された。高市氏は1961年3月生まれの64歳。自民党の歴史で女性総裁は初めてであり、同じように憲政史上初となる女性首相が誕生する可能性も高い。「ついに日本でも初めて女性が国のトップに選ばれる。バンザイ!」との世論が圧倒的かと思いきや……。
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【写真】高市早苗氏が20年前、「再婚夫」と最初に結婚した時の「ウェディングドレス姿」
担当記者は「XなどのSNSを見ると女性の政治家や大学教授、著名人が『高市さんを同じ女性として支持することはできない』などと投稿し、それが拡散して賛成、反対の議論が起きているのです」と言う。
「高市さんを支持できない理由としては、『高市さんの政治姿勢や生き方は女性ではなく男性。同じ女性の代表として見なすことは無理』という説明が目立ちます。今のところ炎上した投稿はないようですが、これは『女性らしさ』を決めつけている点で問題なのではないでしょうか。もし男性の大学教授がSNSで男性の国会議員について投稿し、『彼の政治姿勢には男らしさが足りない。まるで女のようだ。だから応援することはできない』と批判したとしたら、たちまち大炎上するでしょう」
実際に注目を集めているXの投稿を一部ご紹介しよう。ここでは女性政治家や識者、著名人のポストは除外した。そのため投稿者の性別が不明のポストも含まれている。
《高市早苗は生物学的には女性だけど、並大抵の男よりおじさんらしく、粗野に振る舞うことで支持を得てきた》
《一番女性らしくない人が、女性として活躍しているような気がします》
《女性にこれだけ歓迎されなかった女性がいるだろうか》
《実態は、過剰適応した「名誉男性」でないと要職に就けないということ》
《高市氏が女性向けの政策を主張したことがありましたか?》
評論家の池内ひろ美氏は長年、恋愛や結婚、離婚に関するコンサルティング活動に従事。男女や家族の関係に関する30冊以上の著作を上梓している。
その豊富な実体験や知見を期待され、内閣府が後援する女性活躍推進委員会の理事を務めた経験も持つ。なぜ一部の女性たちは高市氏を批判するのか、解説を依頼した。
「やはり“女の敵は女”という古くからの格言を思い出さざるを得ません。実はこの格言、女性だけでなく人間全体に当てはまります。例えば趣味の世界です。野球ファン、サッカーファン、映画ファンの間では今、この瞬間にも、ケンカに近い議論がネット上で繰り広げられているでしょう。似たところが多いほうが、かえって違いが許せなくなり、敵対してしまうものなのです。プロ野球が大好きなのは同じでも、巨人ファンと阪神ファンでは衝突する可能性があります。性別が同じ女性同士も、政治思想や信条が異なると、男女の時よりも強く敵視してしまうのです」
池内氏は「率直に申し上げて、女性初の自民党総裁に就任した高市さんを批判している女性は、左派的な傾向の強い人が多いと考えられます」と指摘する。
「左派的な女性が保守的な高市さんを批判するのは当然のことかもしれません。ただし本来であれば堂々と高市さんの政治姿勢を問題にすべきでしょう。『なぜ夫婦別姓に反対するのか』、『なぜ靖国神社に参拝するのか』という投稿なら、思想信条の自由という観点からも問題がないはずです。ここで注目したいのは、『高市さんは女性らしくない。女性の代表ではない』と批判している女性は比較的、知的レベルが高い人だという点です。ストレートに政治姿勢や思想性を批判すると、『相変わらず左翼が騒いでいる』と黙殺されてしまう可能性を計算に入れていると考えられます」(同・池内氏)
先ほども触れたように、高市氏を「女性らしくない」と批判する投稿は、「女性らしさの決めつけ」という問題を抱えている。だが池内さんは「それを分かった上での投稿なのでしょう」と言う。
「『高市さんは保守的すぎる』と性別に触れずに批判してもインパクトに欠け、誰からも注目されない可能性があります。一方、『高市さんの政治姿勢は女性らしくない』と性別の要素を踏まえて指摘するとインパクトは段違いです。SNSで注目されて拡散するでしょうし、それだけ賛同してくれる女性も増えるわけです」
改めて池内さんは今の日本社会を「女性が活躍できない社会であるのは間違いありませんし、極めて男性中心の社会であるのも厳然たる事実です」と指摘する。
「そのため男性社会で活躍できた女性の中には、『夫が有力者』、『父親が有力者』という人も目立ちました。こうしたことを踏まえて私は日本社会を“おとうさん中心の社会”と呼んでいるのですが、正直なところ、日本で女性が一人で頭角を現そうと思えば、どうしてもある程度は男性的にならざるを得ません。実際、女性経営者や女優さんの中には高市さんによく似たタイプを見つけることができるのです。当たり前のことですが、世の中の女性全員が高市さんを批判しているわけではありません。高市さんを応援している女性、高市さんの女性総理誕生を素直に喜ばしく受け止める人も多いと思います」
デイリー新潮編集部