独立行政法人国立病院機構(NHO)に所属する全国の病院で働く看護師に対して、残業代の未払いが常態化していることが「週刊文春」の取材でわかった。こうした看護師への処遇は労働基準法に違反する疑いがある。小誌には2月20日の時点でNHOの看護師101人から告発が寄せられており、多数の看護師が証言した。
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NHO傘下の多くの病院では、看護師が残業する場合、上司に「〇時間残業したい」と事前に申請する仕組みで、通らなければ残業代は支払われないという。
国立病院機構 本部 時事通信社
東京医療センターの元看護師が語る。
「若い人ほど、申請は通りません。新人の頃、朝の7時から深夜0時すぎまで働くこともありましたが、『自分の仕事が遅いからでしょ?』と、言われ、残業代は全く貰えませんでした」
大阪南医療センターの看護師は、「職場での厳しい上下関係がサービス残業の横行につながっている」という。
「最近、勤怠がハンコ管理からICカードに変わりましたが、残業は変わらず申告制。退勤の打刻と定時に30分以上の乖離があると上司から『何の時間? 本当に必要だったの?』と問い詰められます。もちろん残って仕事をやっていたのですが、結局、責められるのが嫌で打刻をしてから仕事に戻ってサービス残業をする看護師が多い」(同前)
子育て世代の看護師も例外ではない。「子どもが未就学児のため、夕方までの時短勤務をしています。夜勤の同僚への引継ぎや、退勤直前で具合が悪くなる患者さんもいるので、定時には上がれませんが、『時短なんだからその時間に終わるのは当たり前。終わらないならフルタイムにすればいい』という認識で、残業代を申請できる雰囲気がない」(東京医療センター看護師)「支払いなし」が“当然のルール”の「前残業」とは とりわけ、看護師の中で“当然のルール”となっているのが、「前残業はタダ働き」だ。「担当していた看護師からの引継ぎや、患者さんのデータを読み込む必要があり、大体30~45分ほどを要します。しかし、勤務時間には組み込まれておらず、ほとんどの看護師が自主的に早めに来て行っている。前残業分の給与は10年以上の間、一度も支払われたことがありません」(東京医療センター看護師) 今回取材に応じた看護師で、前残業代が支払われているという看護師は一人もいなかった。 労働問題に詳しい旬報法律事務所の佐々木亮弁護士は、こう指摘する。「仕事に必要な資料の読み込みは労働時間に含まれ、賃金を払わないのであれば労働基準法違反になる。実際の残業時間を申請しても認めない場合も違反に当たります」 看護師への残業代の未払いについて、NHO本部に聞くとこう回答した。「労働実態があるものに関しては手当を支給しております。超過勤務を申請しづらいとか、出せない環境があるなど、ハラスメント感覚でいうところがあるとすれば、勤務時間管理の考え方、上司としての管理の仕方などを伝わるように教育する、そういう研修を進めております」 2月21日(火)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月22日(水)発売の「週刊文春」では、小誌に届いた多数の看護師の告発内容を紹介し、国会で取り上げられた看護師の労働問題に対する加藤勝信厚労相の回答や、NHOで人手不足が止まらない「3つの要因」、NHOのトップである楠岡英雄理事長への直撃内容などについて詳報する。●「週刊文春」では今後も看護師の労働問題を報じていきます。情報提供は「文春リークス」にお寄せください。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月2日号)
子育て世代の看護師も例外ではない。
「子どもが未就学児のため、夕方までの時短勤務をしています。夜勤の同僚への引継ぎや、退勤直前で具合が悪くなる患者さんもいるので、定時には上がれませんが、『時短なんだからその時間に終わるのは当たり前。終わらないならフルタイムにすればいい』という認識で、残業代を申請できる雰囲気がない」(東京医療センター看護師)
とりわけ、看護師の中で“当然のルール”となっているのが、「前残業はタダ働き」だ。
「担当していた看護師からの引継ぎや、患者さんのデータを読み込む必要があり、大体30~45分ほどを要します。しかし、勤務時間には組み込まれておらず、ほとんどの看護師が自主的に早めに来て行っている。前残業分の給与は10年以上の間、一度も支払われたことがありません」(東京医療センター看護師)
今回取材に応じた看護師で、前残業代が支払われているという看護師は一人もいなかった。
労働問題に詳しい旬報法律事務所の佐々木亮弁護士は、こう指摘する。「仕事に必要な資料の読み込みは労働時間に含まれ、賃金を払わないのであれば労働基準法違反になる。実際の残業時間を申請しても認めない場合も違反に当たります」 看護師への残業代の未払いについて、NHO本部に聞くとこう回答した。「労働実態があるものに関しては手当を支給しております。超過勤務を申請しづらいとか、出せない環境があるなど、ハラスメント感覚でいうところがあるとすれば、勤務時間管理の考え方、上司としての管理の仕方などを伝わるように教育する、そういう研修を進めております」 2月21日(火)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月22日(水)発売の「週刊文春」では、小誌に届いた多数の看護師の告発内容を紹介し、国会で取り上げられた看護師の労働問題に対する加藤勝信厚労相の回答や、NHOで人手不足が止まらない「3つの要因」、NHOのトップである楠岡英雄理事長への直撃内容などについて詳報する。●「週刊文春」では今後も看護師の労働問題を報じていきます。情報提供は「文春リークス」にお寄せください。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月2日号)
労働問題に詳しい旬報法律事務所の佐々木亮弁護士は、こう指摘する。
「仕事に必要な資料の読み込みは労働時間に含まれ、賃金を払わないのであれば労働基準法違反になる。実際の残業時間を申請しても認めない場合も違反に当たります」
看護師への残業代の未払いについて、NHO本部に聞くとこう回答した。
「労働実態があるものに関しては手当を支給しております。超過勤務を申請しづらいとか、出せない環境があるなど、ハラスメント感覚でいうところがあるとすれば、勤務時間管理の考え方、上司としての管理の仕方などを伝わるように教育する、そういう研修を進めております」
2月21日(火)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月22日(水)発売の「週刊文春」では、小誌に届いた多数の看護師の告発内容を紹介し、国会で取り上げられた看護師の労働問題に対する加藤勝信厚労相の回答や、NHOで人手不足が止まらない「3つの要因」、NHOのトップである楠岡英雄理事長への直撃内容などについて詳報する。
●「週刊文春」では今後も看護師の労働問題を報じていきます。情報提供は「文春リークス」にお寄せください。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月2日号)