大阪市此花(このはな)区の上空400m。秋空の下、ヘリコプターの羽音をバックに見下ろした万博会場予定地には、大きな輪だけがうっすらと浮かび上がっていた――。
『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』の目と鼻の先、大阪湾に浮かぶ「万博島」こと夢洲(ゆめしま)。’25年4月から開催される『大阪・関西万博』の会場だが、眼下に広がる膨大な空き地に、先行きが不安になる。
夢洲は、もとはコンテナターミナルがあるだけの更地だった。元衆議院議員の岡下昌平氏は夢洲での万博開催には多くの問題点があると指摘してきた。
「夢洲は’70年代にできた廃棄物の最終処分場でした。当時は環境問題への意識も低く、発がん性物質のダイオキシンや、爪の変形などを引き起こすPCB(ポリ塩化ビフェニル)など有害化学物質を含む焼却灰が埋め立てられた。
’80年代には新都心を開発する『テクノポート大阪』計画、’90年代にも夢洲を選手村とした『大阪オリンピック構想』がありましたが、その度に土壌汚染や地盤の脆弱(ぜいじゃく)さが問題視されてきました。けれど、これらを声を大にして訴える現職の国会議員がおらず、この件に関しては国会まで声が届かない。我々が訴えてもどこまで届いていたのか……」
また廃棄物処分場でもあった夢洲は、交通の便が悪い。島には橋が1本、トンネルが1本通るのみ。災害時には被害拡大が危惧されている。
大阪万博では誘致当初より最大1100億円も建設費用が増額される見通しだ。
「西村康稔経産大臣(60)は、万博に対して建設費と運営費とは別に国が約200億円の警備費を出すよう調整中だと発表しました。でも、本来、警備費は国家公安委員長が決めることで、経産大臣が言い出すことではない。西村氏は万博会場跡地に造られるIR事業に興味があるようで、IR事業のために『大阪維新の会』に恩を売っておきたいのでは」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
’23年春には万博会場の建設に着工する計画だったが、実際は約半年遅れた。
「独創的なデザインの施工は難しいんです。そのわりに業者に求める施工費が安いんですよ。ある国内パビリオンの建設でも、9.8億円の施工費に対して入札はゼロ。3回目に12.6億円で決まりました。施工費を上げて、提示額で引き受けてくれる工事事業者が現れるまで入札を繰り返すつもりでしょう。60ヵ国中、39ヵ国のパビリオンで工事事業者が決まっておらず、基本設計を提出したのも19ヵ国だけ。着工した国はなく、1ヵ国が建設を断念しました」(建設業者関係者)
上写真でわかるように、現在の夢洲はようやく整地が終わろうとしている段階だ。日本館も含め、59棟建つはずのパビリオンは、まだ影も形もない。完成すれば、東京ドーム約33個分の土地が、企業や各国のパビリオンなど100を超える建物群で埋め尽くされるとのことだが……。
「規模縮小や延期の話はまったく出ていません。開幕しても建設中のパビリオンがあるかもしれない、という話まで聞きます」(前出・岡下氏)
問題は山積みだが、ここにきてジャニーズ事務所の性加害問題が万博にも影響を及ぼしているという。
「吉村洋文大阪府知事(48)は『関ジャニ∞』を万博のPRに起用すると示唆しました。外交音痴でパフォーマンス先行なので、こういうことをしてしまう。ヨーロッパなどはもちろん、IR事業に関わっているアメリカまで参加辞退する可能性は考えないのでしょうか」(前出・角谷氏)
大阪万博のコンセプトは「未来社会の実験場」だが、この状況では皮肉にしか聞こえない。
『FRIDAY』2023年10月27日号より