ひつまぶしでも有名なうなぎの本場、愛知県。名古屋市内を中心にたくさんのうなぎの店があるが、実は意外な場所にも多数存在するという。それが、「愛知県豊川市」だ。豊川といえば「いなり寿司」のイメージがあるが、なぜうなぎ店が多いのか、現地を調査した。
愛知県豊川市といえば、商売繁盛のご利益で知られる豊川稲荷。
そのそばには、豊川グルメとして有名な「いなり寿司」のお店が軒を連ねている。
しかしいなり寿司だけでなく、うなぎも有名なのだという。実際に門前町を少し歩いてみただけで、すぐに5軒ものうなぎ店が見つかった。
なぜ豊川市にはうなぎ店が多いのか…。
まず取材班が訪れたのは、豊川稲荷の参道の入口近くにある「お食事処 なかよし」。1945年(昭和20)創業の老舗だ。
店の看板メニュー「うなぎ丼」(2600円)を注文。
ふっくらふわふわした柔らかい焼き上がり。少し「蒸して」から焼くスタイルで、うなぎの開き方も「背開き」で「関東風」だ。店の初代が関東で修業したことから、この調理法で提供しているという。豊川は関東風が多いのだろうか。
お食事処 なかよしの店員:いや、ちょうど関東と関西の真ん中辺になるので、関西風のお店もありますし、関東風のお店もあります
豊川市にうなぎ店が多い理由を、この店の人に聞いてみた。
お食事処 なかよしの店員:豊川稲荷に商売繁盛の神様っていって皆さんお参りされて、その帰りに運気とか商売が「うなぎのぼりに良くなるように」ってゲンを担いで食べられる人が多いんじゃないかと、先代からは聞いているんですけども
1つめの説は、商売繁盛を願い豊川稲荷に参拝したあと、「うなぎのぼり」にかけ「ゲン担ぎ」で食べた人が多かったため、うなぎ店が繁盛したのではないかということだった。
次は1879年(明治12年)創業の「カドヤ」へ。
ここでもまずは「上うなぎ丼」(2500円)を試食。
この店では三河一色産のうなぎを使っていて、表面がパリッと香ばしい。この店は、蒸しでなく「焼き」で関西風…かと思いきや、開き方は「背開き」と関東風。
まさに、東西のうなぎ文化が混在していた。
カドヤの店主にも、豊川にうなぎの店が多い理由を聞いてみた。
カドヤの店主:このあたりは養鰻(ようまん)業が盛んで、うなぎ屋さんが多いんじゃないかなと思うんです。三河一色の方とか、浜名湖も近いしね
2つめの説は、豊川が日本有数のうなぎの生産地である愛知の三河一色と、全国的に有名な静岡の浜名湖に挟まれていて、良質なうなぎが手に入れやすい地域だからではないかという説だ。
カドヤの店主によると、豊川市内には参道周辺以外にもうなぎ店が多いという。調査範囲を広げてみると、豊川稲荷から車で10分ほどのところに「かなやばし 正楽」といううなぎ店を発見。
この日3回目の試食は、「うな重」(3630円)。
この店は背開き&蒸しの「関東風」だ。
この店の主人にも、豊川にうなぎ店が多い理由を聞いてみると…。
かなやばし 正楽の店主:実は、豊川の隣に豊橋市ってあるんですが、そちらで養鰻がすごく盛んで
3つ目の説は、浜名湖と三河一色の間で良いうなぎが集まりやすいうえ、さらに隣りの豊橋市もうなぎの一大産地で、そこからも良いうなぎが入ってくるからだという。
「豊橋のうなぎ」は地元愛知でもあまりなじみがない。そこで今度は、豊橋市に向かうことに。
豊橋市で養鰻場を探したところ、取材を受けてくれた「丸和養魚場」は、約10万匹のうなぎを育てているという。
豊橋養鰻漁業協同組合の組合長:実は、(養鰻業で)豊橋っていうのは愛知県で一番古い歴史を持っていまして、明治29年からって聞いてます
三河一色に比べると認知度は高くないが、歴史の長さもあり、「豊橋うなぎ」と呼ばれるブランドになっているのだ。
「一色うなぎ」が川の水で育てられるのに対し、「豊橋うなぎ」は豊富な地下水を利用していて、サイズが大きく脂の乗りもいいのが特徴だ。
現在豊橋市の16か所で養殖されていて、“隠れたうなぎの一大産地”だった。
まとめると、豊橋市にうなぎ店が多いのには、大きく3つの理由が考えられることがわかった。
豊川稲荷の参拝客が「うなぎのぼり」と掛け、ゲン担ぎに食べた説。さらに、三河一色と浜名湖という全国でも有名な産地に加え、隠れた一大産地の豊橋にも近く、質のいいうなぎが入ってきやすいからではないかということがわかってきた。
うなぎ店が多いことがわかった豊川市には、このエリアならではの店もあった。店名はズバリ「うなぎ屋」。
この店では関東風の「背開き」と関西風の「焼き」で、東西が融合したうなぎを提供していた。
そして、見慣れないメニューがあった。香ばしく焼いた肉厚の白焼きにかけるのは、同じ三河の名物・岡崎の八丁味噌だ。
「うなぎの田楽」(1本4串2600円)だ。
うなぎ店が多い豊川の街では、独特のグルメも育っていたこともわかった。
(東海テレビ)